ネコハラ
我が家にはネコがいる。名前は「チャー」と言う。チャーの本当の母さんはシロといった。チャーはシロが最後に生んだ4匹の子ネコの中の1匹だった。
本当の母さんなどと鬱陶しい言い方をしたのは訳がある。本当ではない母さんに甘えて、母さんっ子だからである。それは実を言うと私の母である。
チャーは私の母がことのほか好きである。耳がとんがっていなくても、体中毛がはえていなくても、尻尾がなくても、ひげがなくても、そして四本足で歩かなくても(といっても、母の背中は曲がっているので、姿勢としては四本足に近いかも?)、ひたすら自分の母親だと思って甘えている。実の息子の私が嫉妬するくらいである。
本当の母さんのシロは、チャーたちを生むまで、たくさんの子ネコを我が家で生んだ。シロの親はチビという。チビはいつの頃からか我が家にいついていた。我が家には庭があり、人間の食べ残しを捨てるのはもったいないので、スズメにやっていたら、スズメを狙って(?)ネコがやって来た。もちろんスズメを捕まえるような感心な(?)ネコはほとんどいなかった。飛んで逃げるようなものなんか最初から狙わないで、スズメの餌になるはずだった人間の食べ残しを食べていたのである(食性が違うと思うんだが・・・・・・)。
チビはネコとしては不器用だったのではないかと思っている。だからチビの母親が「ここの家に住み着いたら、一生餌には不自由しないよ」と言って、我が家に連れてきたに違いない。この子は小柄だった(チビというぐらいだから)が、とにかく生んだ生んだ、もの凄く生みまくった。
シロもまあまあよく生んだ方だ。結構ネコ社会ではもてていたようだ。 ネコの雄は年頃になると家を出る。それでも一頃は我が家のネコの食事時は凄かった。30匹を越えるネコが、まるで養豚場か養鶏場みたいに頭を揃えてひたすら喰いまくっていた。その当時の様子はビデオに撮っているが、今でも呆れるくらいである。
もちろんネコたちは「ただ飯」を食っていたわけではない。私の身体運用の研究には多大な貢献をしてくれた。なにしろ数が多いと、みな個性があるから、いろんな動きを見ることができたのだ。私の身体運用の研究を何年分も短縮してくれたのは、ネコたちなのである。
彼女らは(ネコは女性名詞)地面を走るときでも、垂直の壁を駆け上がる時でも、動きが本質的に同じである。身体の伸張収縮で動いている。我が家の門は鉄製の扉だが、爪が立たないはずの扉を平気で駆け上がる。ついた足跡も平地を走ったときとほとんど変わらない。彼女らは水平に走る、垂直に走るという具合に、基本は走る動作でしかない。ちょうど陸上競技の走り幅跳びが、踏み切りで走る方向を斜め上方に変えるのと同じようなものだ(こんな飛び方だと知らなければ、走り幅跳びは、やれ「踏み切り板を叩け!」だの「踏み切り板を踏み折れ!」だのと野蛮な指示を飛ばすとこになり、踏み切り板は丈夫な合板製だから、スピードのある素晴らしい選手ほど、足裏の打撲とか疲労骨折なんかやってしまうのだ)。
現実に身体の収縮ー伸展でジャンプすると、地面を強く蹴ったときよりも高くとぶことができるのは、拙著『動き革命』で述べた通りだが、これはネコたちの協力があったからこそ最初の取っ掛かりができたのだ。
ちなみに『動き革命』で跳んでいるのがチビ。ジャンプが得意なネコは何匹かいたが(猫の全てがジャンプが得意というわけではない。これは一度に何十匹も飼ってみるとわかる。ジャンプが苦手な子は、ジャンプが得意な子の前ではあまり跳ぼうとさえしない。きっとあまり跳べないのが恥ずかしいのだろう)、一番得意だったのはチビだった。
彼女はたくさん子ネコを生んだあと、流行り病に倒れて死んだ。そういえば今のチャーの前の、初代チャーも、同じ流行り病で死んだ。素晴らしく賢い、我が家で最も愛されたネコだったが、病気が流行した時に、「用心のため」に早めに入院させたのに間にあわなかった。今でも母の枕元には、初代チャーの写真が飾ってある。私が百均で買ってきたネッカチーフが似合う可愛い子だった。この子もどこかに写真を使ってあるはずだ。
初代チャーは、ジャンプした時、空中でぐるぐる尻尾を回してバランスをとるネコだった。尻尾がキツネみたいに立派で、毛もキツネみたいな色をしていた。プラス思考しかしないネコで、叱られてもすぐに忘れてじゃれつく可愛い子だった。もっとも賢いので、そんなに叱られるようなことをしなかったが。
今いる子は二代目チャーである。体型が似ていたので、チャーという名前を引き継いだ。この子は初代にくらべるとおつむがちょっと・・・・・・ と私は思っているが、母は「そんなことない。チャーちゃんは賢いな~」と励ましている。いくら励ましても、餌の魚の頭すら食べないので賢くなるはずがないと私は主張している。昔から言うでしょ。体の調子が悪いと、悪いところを食べればいいって。例えば肝臓が悪ければ、肝を食べるとか。頭が悪ければ、頭を食べれば少し賢くなると思わない? 思わないか。
チャーちゃんは最初、犬小屋の上で生まれた。そのころ彼(雄です)よりも少し早く生まれた「パン太」という子がいて、これは骨格が大きくてパワフルなネコだったのだが(好き嫌いなし。人間が食べているものは何でも食べれると信じていた子だった)、こいつが時々我が家に帰ってくると、数日間居候をしていく(その間食べるヨーグルトの量が半端じゃなかったけど)。それと一緒に家の中で飼われた。(パン太はチャーをほとんど相手にしなかった)
もうひとつ、「ロン」ちゃんという子ネコもいた。彼は母にお酒を飲まされていた。それが目に一杯涙を溜めて飲むんだな。母の口移しだったから拒めなかったのだろう。泣いているロン君を見て、こちらも涙がでるくらい大笑いしていたが、ここまでくると可愛さあまって虐待? でもないよね。懐いていたもの。でも年頃になると、どこかへ出て行ってしまった。元気にしてるかなあ。時々何年もして帰ってくる子がいるからなあ。
チャーちゃんも年頃になると、そこいらへんじゅうにマーキングを始めた。家の外に憧れてカーテンというカーテンはみな彼の縄梯子に使われ、簾に変身してしまう。そして知らない人が来るとダッシュして隠れる。足の裏に毛が生えていて、それを切らさないものだから、板の間を走っていてステーンと転ぶ。
転ぶと何故かしら私のせいになっている。私がいると間違いなく、悪いことはすべて私のせいである。たとえばマーキングすれば母に叩かれる。でも暫くすると、叩いたのは私になっていて、母には甘えている。なぜ????
先日、チャーちゃんが母と寝ているところをそーっと近づいて撫で回してやった。突然のことと、爆睡していたのとでチャーちゃんは逃げられなかった。そこで身を固くしながらも撫でられるしかなかった。私は久々にネコの手触りを堪能するまで撫でてやった。最後には、身を固くしながらも喉をゴロゴロ鳴らしていたので、明日から「ネコー人」関係が改善できているかな? と思っていたが、あまり変化はなかった。
それどころか、母によると、いつもは早起きのチャーが、なかなか起きなかったのだそうである。しかも随分疲れているらしく、あまり動かない。すぐ寝ようとする。私が撫でたのが、そんなに疲れるほどしんどかったのか! う~ん・・・・・・
これって立派なネコハラ?
↓ 二代目チャー。今はこんな
にスマートではない。立派に巨大化して、肥満体型に近づいてい
る。
http://esearch.rakuten.co.jp/rms/sd/esearch/vc?v=3&p=0&sv=2&sitem=%be%ae%bf%b9%b7%af%c8%fe


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