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2009年2月28日 (土)

利令智昏

 2009年度の予算も通り、日本も動き始めるみたいである。総選挙だなんだと言いながらも、一向にその気配も見えなかったりで、なかなか先の見えない動き方をしている。できれば私のような政治の素人には解らない、レベルの高い政治をしていただきたいものだと期待している。でも、もっと暮らしやすくしてくれなければ困るけどね。

 昔々、春秋戦国時代も終わりに近づいた頃、中国には「戦国の四公子」と呼ばれる人たちがいた。斉の孟嘗君・田文(もうしょうくん・でんぶん)、趙の平原君・趙勝(へいげんくん・ちょうしょう)、魏の信陵君・無忌(しんりょうくん・むき)、楚の春申君・黄歇(しゅんしんくん・こうあつ)であり、どれも食客3000名と言われて、多くの食客を抱えていた人々である。

 だいたい大勢の食客を抱えていられるということ自体、その人の勢力が強いということの証拠で、大勢の人間に慕われるということが、その人の「徳」の現れの一つのように思われていたのではないだろうか。「桃李不言、下自成蹊(桃李ものいわざれども、下おのずから蹊をなす)」という奴である。

 世の中の風潮というものは怖いもので、裕福で人徳がある証拠として大勢の食客を集めて自慢するのが流行する時代だったのであろう。食客の中には本当に一芸に秀でていた人もたくさんいたのだろうが、おそらく「数」を集めるために、若干質的に怪しい人物もいたのではあるまいか。

 たとえば孟嘗君・田文などは、大勢のならず者を抱えていたと言われ、自分が悪口を言われたところでは、大勢人を殺させたと言われているから、言ってしまえば私兵という意味合いがあったのかも知れない。3000人という人数が多少の誇張であったとしても、腕に覚えのある者を大勢集めていたのなら、そこそこの軍事力にはなっただろう。

 楚の春申君も仕方のない死に方をしているが、今回は平原君・趙勝のお話である。この人も評判は高いわりに、大きな失敗もやらかしている。それが現在に成語として残っている「利令智昏」という言葉のもとになった。

 紀元前262年、秦は白起(はくき)を大将軍として韓を攻めさせた。秦と韓の兵力は比較にならず、あっという間に韓の野王は占領された。野王は韓の上党に至る重要な場所である。秦軍は野王を落としたあと、続けて上党を攻めようとした。

 野王を占領されて上党は孤立した。上党の太守Feng(憑の心なし)亭(ふうてい)は、このままではとても守りきれないと、趙に帰順するむね手紙を出し、趙の保護を受けようとした。

 趙の朝廷ではこれを受け入れるか否かを巡って、大論争が繰り返され、平原君は「上党は広く、このような土地を一兵一卒も派遣することなく手にいれられるのだったら、大ラッキーな話ではございませぬか。こんな話を蹴ったら罰が当たりますぞ」と主張した。

 これに対し、平陽君・趙豹(へいようくん・ちょうひょう)は「美味い話には裏がありますぞ。現在の情勢を見てみると、秦は上党を狙っております。もしも我らが上党を手にいれますと、秦はこれを、自国に対する対抗心ありと判断するに違いございません」と反対したが、欲に目が眩んだ趙王は上党を我が物にできる千載一遇のチャンスとばかりに、「すでに口の中に入ったものを、どうして捨てることがある?」と、平原君の主張を採用した。そして上党を自分のものとし、Feng亭を「華陽君」に封じた。

 秦はこれを知ると、趙は秦に敵対する意志ありと判断し、白起に命じて趙を攻めさせた。趙も弱腰だと思われたくないので廉po(れんぱ)将軍に命じて、これを迎撃させた。趙兵は弱かったが、れんぱ将軍は実戦経験が豊富で、勝てないまでも守ろうと、これをよく凌いだ。

 しかしながら秦は離間の策で趙王にれんぱを大将軍の地位から下ろさせ、「紙上談兵」で有名な趙括(ちょうかつ)を大将軍に任命させ、これを散々に打ち破って、長平の戦で40万の趙兵は生き埋めにされ、趙の国都・邯鄲まで包囲されることになった。

 これは平原君がともに楚に行ってくれた食客の毛遂(もうすい)のお陰で、楚と同盟を結んでなんとか守りきることができたのだが、趙王と平原君は目先の利につられて、すんでのところで自分の国を滅亡させるところだったのである。後世の人々はこれをさして「利令智昏(目先の利に釣られて、判断を誤る)」と言ったのである。

 俗に「ただより高いものはない」と言うが、平原君は目先の小利につられて、国を亡ぼしてしまいそうになった。司馬遷は『史記』の中でこれを評して、「平原君は当時の最も有名な人物の一人であったが、先の読めない、あまり頭脳明晰とは言えないような小人物だったのではないか」と言っている。実生活でもこのように、小利をちらつかせて人をたぶらかす者がいるが、「ただより高いものはない」という言葉は、忘れてはならないことばである。

 平原君・趙勝は、姓が趙であることからもわかるように、趙の王族である(恵文王の弟)。生まれがよければ生まれながらにして大富豪のはずだから、目先の小利につられたりしないはずなのだが、あっさりひっかかるところが人間の心理の面白いところかも知れない。だから今の二世議員、三世議員さんだからと言って、欲がないなんて思ってはいけませんぞ、というありがたい(???)教えなのかな。

 人間、誰にでも欲はあるもんだからなあ。自分の一番好きなもので釣られたら、「おっとっとっと……」とよろめいてしまうのかもね。でも昨日に続き、私は(世間一般で言われている)甘い餌では釣られないからね。理由は簡単、私は辛党だからである。

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2009年2月27日 (金)

甘い餌? 私は食べない

 もうだいぶ前のことになるが、私の携帯電話に、「100万円あげる」というメールが入ったことがある。何度あったかなあ。でもごめんな、私はそういった話を信用しない人なんで、相手にもしないで削除してしまった。

 お金が嫌いな人はそんなにたくさんはいないだろう。かく言う私も、お金ですべてが解決できるなんてことは思っていないが、好きだよ。でもお金は、入ってくる正当な理由があって、はじめて入ってくるものだと思っている。出て行くときには、必ずしも正当な理由がない場合も少なくはないけどね。

 本当に出て行く時には、お金は「さよなら」も言わずに出て行くからなあ。でも入ってくるときは、それ相応の汗や、疲労といった、労働の結果でるものに相応しい(相応しくなく苦労や労働が多い場合も決して少なくはない)ものをこちらが支払っているじゃない。

 だから携帯電話のメールなんかを簡単に信じたりはしないよ。似たようなのが女性からと思しき、色っぽいメール。でもアルバイトで男が打っている場合が多いんだってね。こんなのは彼女がいなかった頃からひっかかったことがない。大体電話は顔が見えない場合がほとんどじゃない(まったくの赤の他人の写真を送ってくる場合もあるんだそうだが)。

 顔を見て話をしていてすら、相手に一杯食わされることがあるのに、顔も見ないでどうやって信用しろというわけ? だからややこしいタイトルで、見たこともないアドレスから来たメールは、中身も見ないで削除している。ごめんね、忙しいんで、そんなものに構っているくらいなら、睡眠時間を稼いだ方がよっぽど自分のためになるんで。

 よくあるよね、「あなたは選ばれました!」なんて、でかでかと書いた郵送物が届いていることが。残念ながら、人がそんなに簡単に「幸運にも選ばれる」なんてことがないのは、もうよく知っているからね。「運」だって、それなりの努力を積み重ねていなかったら、なかなか向いてこないってことは、もうよく知っているんでね。

 だからそんな言葉に心を惑わされて、自分が努力する時間を取られるほうが、よほど腹が立つ。自分がやりたいことを、こつこつと続けることができれば、今の私には最高に嬉しい生き方だよ。「運」をつかむことも、随分研究したけど、結局その運すらも、努力なくしては無意味だということは知っているからね。

 ラッキーを活かせるのは、活かせるところまで実力をつけている者だけだ。実力もなく運だけで結果を出せたら、二度目、三度目は続かないから。だから、一に努力、二に努力、三、四がなくて五に努力だと思っている。

 昔々、彼女もいなかった頃、車を運転していたら、とんでもないミニスカートを履いた若い(きっと)女性が、道端でヒッチハイクをしていた。1分間に100台は車が通りそうな道でである。私はかなり大きめのワンボックスに乗っていたから、当然彼女も手を挙げた。でもごめんね、まず警戒心が働くのが私の本性なんで、停まらずに過ぎちゃった。

 それよりも以前に、旧国道2号で、ヒッチハイクしていた外人を見かけていたからかも知れない。ブロンドのストレートヘアがかわいい女の子が、道端で手親指を立てて腕を突き出している。でもその後ろの看板の陰に、巨大な荷物を山のように持った、プロレスラーのような毛むくじゃら巨漢が3人もいたんだよね。

 この時は私はまだカローラに乗っていたし、後ろに隠れている巨漢が見えたから、あっさりと無視したけど。だってきれい(美味しそう?)な餌をちらつかせて、背後に毛むくじゃらの巨漢が隠れているって、誰が考えても「腹に一物、背に荷物」ってやつだよ。もしかしたら良からぬことを考えているかもしれない。

 チョウチンアンコウのひらひらに寄っていった小魚は、アンコウの巨大な口で、一瞬のうちにぱっくりこと食べられてしまうものなんだよ。理由もなく美味しい餌なんか、手に入るはずがないんだから。美味しい餌には美味しい餌のための必然が存在する。その必然を無視して、やたらと「棚ボタ」を期待したら、ヤバイことがあっても仕方がない。

「人事を尽くさず奇跡を待つ」…これは私の迷言録に入っている言葉だが、「人事を尽くした」からこそ、奇跡に気づく目ができるんだよね。人事を尽くさなかったら、「奇跡」が起こるチャンスが目の前にあっても、案外気がつかないものなんだよ。

 最近、少しは「甘いもの」も食べ始めたが、本来私は「甘党」ではない。だから余計に、甘い餌や甘い言葉には、警戒心が働いてしまうことがあるのかも知れない。ついでながら今つきあっている人たちは、けっして「甘い言葉」ばかりはかけてくれない。むしろ厳しい言葉の方が多いくらいである。(もちろん善意からである。悪意からきつい言葉を投げかける人間もかつてはいたが、聞けば言葉のもとにあるのが善意か悪意かはわかるから、悪意党とは極力付き合わないようにしている。悪意から出された言葉を浴び続けると、こちらまでが汚れてしまうからである)

 今の世知辛さを通り越して、ともすれば自分さえよければ…なんて下心が見え見えの人間が増えた時代に、見ず知らずのものから突然「甘い餌」をちらつかされても、残念ながら私の心はよろめいたりしないよ。

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2009年2月26日 (木)

焼肉、こんな美味いもの!! ~こだわり~

 久しぶりに焼肉を食べに行った。若い頃と違って、食べることができる量は少なくなったが、それでも焼肉は私(と母)の元気の源である。次の日のスタミナのもちかたが違う(似たような効果を持つものとして、鰻がお勧めだが)。

 でもどこの店でもいいというわけにはいかない。私がただいま行く焼肉屋さんは、ただ一軒である。他の店は、他人がセっティングしてくれたら行くけど、自分から進んでいくことはない。というのは昔、あちこち行って食べ比べたことがあるからだ。なんとソウルにまで飛んで食べた。

 そして私が選んだベスト1が今日載せる『焼肉 錦水』である。人によっては別の店がいいというかも知れないが、私にとってのベストはここだ。ちなみに日本記録保持者のT選手も連れていったし、K先生も連れて行った。中国からこられたH老師ご夫妻もお連れした。その誰に聞いても「美味しかった!!」ということであった。

 中でもH老師ご夫妻はここを気に入ってくださり、私がお連れするときはここと決まっている。何しろ「日本でいろいろレストランに連れていってもらったが、あそこが一番美味しかった」と言っていただける店だし、奥様にいたっては、「あそこで食事したときが一番体重が増えた」と仰ってくださるくらいだ。

 さて錦水ではあまり写真などを撮影してはいけないのかなあ? 他の人のコメントにはそんなことが書いてあったけど、すみません、知らぬこととはいえ、バシバシ撮っちゃいました。本当は美味しいものを、そのまま真っ直ぐに味わえばいいというのが、料理の味わい方の基本中の基本なんだろうけど。

 けれども親父の代からの知り合いなもんで(小学校の同級生だったそうだ。23_2ついでに私はここの店主のお兄さんと同級)、調子に乗って、「ブログに載せてもいいですか?」と聞くと、「いいですよ」と、店主(中高生時代、バレーボールで鳴らした)ご自身がOKしてくださったので、遠慮なく掲載させていただきます。

 今はPhoto結構忙しくしているので(ついでに仕事場に忘れ物をしてしまったこともあって)、着いたのはもうとっぷりと日が暮れた夜だった。『錦水』の唯一の欠点というと、岡山市の東の方にあって、若干遠いということだろうか。初めてH老師をお連れしたときなど、「どこへ連れていかれるかと不安になった」と仰っていたくらいだ。勿論、「食べてみてわかった。遠くまで出かける値打ちが十分にある店だった」と仰っていたけど。

 まず焼Photo_2肉であるが、もう人間をかなりの時間やっているので、食べ方にも「スタイル」ができてPhoto_3しまっている。母はまずここに来ればマッコリ(韓国風白酒)を注文する。私はビール(生大である。帰りは代行で帰る)である。ビールを飲まないで焼肉を食べる(しかも飛びっきり美味しい焼肉だ!)なんて、健康に悪い。

 昔、「○リープのないコーヒーなんて」というCMがあったが、私にとっては、「ビールのない焼肉なんて」である。ちなみにここの焼肉は、陸上指導の恩師K先生が、指導の第一線を引くときも、わざわざ買っていって、渋川の海岸で一緒に食べたものだ。なにしろ美味しいのは間違いない。焼肉を食べられない人以外には、一度はお勧めしているか、一緒に食べに行ったりする店なのである。

 最初かPhoto_4らこの店の必殺技である。「わさびで食べる上ロース」である。これははっきり言って絶品である。焼肉の新境地といってもいいのではないかと思うくらいの味であって、もしも『美味しんぼ』の海原雄山先生が実在していたら、一度食べてみられたほうがよい、とお勧めしたい。私のイチオシである。Photo_5

 まず熱した網に脂を塗る。網に肉がひっつくと、なんとなく気分が悪いし、美しくないからだ。そして中火くらいで焼き始めるのである。せっかくの上ロースだから、焦がしてしまっては味が台無しだ。Photo_6

 両面を焦げないように手早く炙る。ここで肉汁を出してしまっては、せっかくの味がパーになる。最初に軽く両面を炙るのは、肉汁を逃がさないためであって、それからゆっくりと中まで焼けないけれど、熱は通っている状態にまでしなければならない。ちょうどステーキのレアといった感じでございますな。Photo_7

 こいつにわさびをやや多めにのせる。写真は撮影しなければならないので、網の上のお肉にわさびを乗せているが、これはできたらやらない方がいい。わさびの風味が少し飛ぶからである。できたら別のお皿にとって、お箸でわさ10びを乗せて、一気にぱっくりこと食べた方がいい。

 こうしてまず、最初の乾杯からハイな気分で食べ始める。そして「わさびで食べる上ロース」が終わると、次は「塩タン」である。この順番は、少なくとも私が「焼12肉奉行」 をしているときには変わらない。

 我が家の塩タンの食べ方の鉄則 は、片面しか焼いてはならないことである。 両面焼いて食べている人を見ると、思わず「あっ、あっ、あっ……!!」と言い出してしまいそうになる。なぜかというと、塩タンはスライスしてあって薄い。両面を焼くと、どうしても肉汁が落ちてしまうからである。それに肉が「タンパク質の加熱変性」の典型のような反応を起こしてしまい、旨みだけでなく、嬉しい歯ごたえがなくなってしまうからである。14

 これぐらい焼けたら私はきっと口元がだらしなく「ほっほっほ…」と笑っているであろう。塩タンのあの口に入れたときの味を想像して、すでにパブロフの犬と化しており、胃袋の中では胃液がたらたら流れ、涎はくちからこぼれそうになっているからである(あ~思い出したら、また食べたくなった。でも今日はこれから練習だし、ちょうど13木曜日は錦水さんのお休みの日だ)。

 この片面しか焼かない塩タンの表に肉汁が浮き出してきたら、レモンを絞って肉汁に混ぜる。このまま肉汁を落とさないように、上手に食べるのであるが、このときにはお店特性のタレがある(きっと梅酢なんかを使って作っているのではないかと思うが、まだ聞いていない。聞いたかもしれないけど、記憶に残っていない)。14_2

 これにつけて食べるが写真のは撮影のためにお皿の中に置いてしまった。これは実はよくない。せっかくの肉汁が、お皿の中に逃げてしまうからである。普通はお箸で挟んだまま、ちょいとつけてそのままぱくりっと食べてしまう。この瞬間に肉汁が口の中でジュワ~っと広がり、美味いのなんの!! まさに極楽である。

 ここまで16食べたら、再び火力を強めにして、もう一度脂を塗る。脂はできたら丁寧になんども塗りなおしたい。焦げてしまうと、味はどうしても落ちる。私は焼肉を食べにきているのであって、炭を食べに来ているのではないから、そのあたりは気をつけたい(そのうち、わけがわからなくなってしまうのだが)。ここからが、さあて焼肉の本番だあっ !!

 もちろPhoto_8んその前にタレを作っておく。この店のタレは美味しいが、私は人並みはずれた辛党なので、コチジャンとかおろしにんにくとかをたっぷりいれて、自分に適した味にしておく。だいたいこの、タレを作っている時間だって楽しい。それは「これから焼肉を食うぞ!」という期待感と、口の中で広がる、あの美味しさを想像しているからである。食事の美味しさの大切な要素として、この「想像」はかなり大きな部分を占めるかも知れない。 

 今回はこんなものを食べた。若い頃なら20人前くらい一人で食ったこともある11けど、今はそんなことをしたら翌日の生活が苦しくなる。だいたい美味しくなくなってしまう。そこで右からカルビ、上ミノ、心臓、上ホルモン、センマイである。だいたいこれが私がよく食べるものだ。もちろん、基本的に焼肉なら大抵のものを食べてしまうんだけどね。

 こんな具合に、どんどん乗せてしまう。若い頃はむちゃくちゃ乗せて、食べて17みたらまだ焼けてなかった、なんてこともたまにはあったが、今はそんなことはやらない。それぞれの美味しさをかみ締めながらいただく。中でもセンマイは、私がいつも食べるものであって、これは牛の何番目だったかの胃袋らしいが、あまり焼けるとカリカリするだけで美味しくなくなるから、速攻でいただく。ほんのちょっと熱が通ったかな?くらいが一番美味しい。

 上ホルモ22ンはヒトで言えば内臓内脂肪なんだろうけど、まず脂肪の部分(腸の内側)を少し焼く。それから皮の方からゆっくりと熱を通していく。時々脂肪のほうを加熱しすぎて、口に入れた瞬間、「あっち~っ!!」ということもあるけど、口の火傷と焼肉は背中合わせである。これも美味の一部と覚悟しているから、全然辛くない。

 上ミノは大腸の一番分厚い部分らしい。これも加熱しすぎは不可。弾力があって、適当に熱いのが一番である。噛めば噛むほど美味しさが染み出してきて、こんな美味い肉が地上にあって幸せっ!!という気分にさせてくれる。

 カルビは一番一般的な肉だ。これも適度な焼け具合がいい。焼きすぎるとせっかくの美味が半減する。脂がたっぷりなので、高カロリーなんだろうな。今のダイエット中心でしかものを言わない料理家はどう言うのだろうか。本来、優良食品は、少しの量で、様々な栄養素を含んでいたものを言うはずなのだが。

 心臓を食べ始めたのは、我が家ではそんなに古い話ではない。昔ディスカス(熱帯魚の)にディスカスハンバーグをやっていたころ、その主原料が牛の心臓だと聞いたからである。牛の心臓には様々なミネラルが含まれているのだそうだ。もちろん加熱したらどうなるかは調べたことがないけどね。

 アマゾン川を牛の心臓が泳いでいるとは考えられないが、昔、ディスカスを人工的に増やしたジャッ23ク・ワットレイが思いついた餌なんだそうだが、どんなもんかなあと思って焼肉屋さんで食べたら、しこしこと美味しかった。それで定番になってしまったのだ。これも焼きすぎは禁物。

 こうして美味しい焼肉に舌鼓を打ったあとは、あっさりとお茶漬けにかぎる。なんとも24日本的な味がこの上もなく美味しい。付け合せの梅の漬物までもの凄く美味しく感じられるから不思議である。

 加えてこれは母の影響であるが(母はソフトクリームが大好きである)、すべての〆としてソフトクリームをいただく。この冷たさと甘さが、これまた不思議なくらい焼肉の後口をさっぱりしてくれるんだなあ。 いったい誰が気づいたんだろう、このコンビネーション。世の中には素晴らしい感覚をお持ちの方が多いんだろうね。

 その後、代行さんに家まで連れて帰ってもらって、家で一応脂ものを食べた後Photo_9なので、きっちりプーアール茶を飲んで、やっと焼肉が終わった。あ~、美味しかった。

 『焼肉・錦水(きんすい)』:岡山市沼821-8 電話:086-297-8301  ちょっと駅から距離があるけど、代行は頼んでもらえるし、遠くまで行く値打ちがある味の店でございますよ!!

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2009年2月25日 (水)

過去の鍵

 とうとうコーヒーを飲み始めた。これがどういうことか、私とごく親しい人ならわかるだろうと思う。でもコーヒーがそんなに好きなわけではない。大学生の頃は嵌っていたけどね。毎日、グリガリゴリと手動ミルで豆を挽き、ポコポコと淹れていたのである。いろんな豆を試してみたけど、当時はサイフォンが流行していたので、当然サイフォンで淹れていた。このサイフォンは岡山へ帰るときにも持って帰ったが、今はサイドボードの中で眠っている。

 大学時代の愛用のものはたくさん持ち帰った。とくに私は大学時代には乱読期だったので、本が多かった。今はいったいどこへ行ったものやら。漫画は開かずの押入れに大部分収まっているだろう。今となったら懐かしいものばかりで、片付けることなどとても出来ないだろうけど。

 あの頃のものを読めば、きっとあの頃の記憶が大挙して押し寄せてくるんだろうなあ。でもあの頃の自分には戻れないのはわかっているしねえ。きっとそのうち開かずの押入れを掃除する覚悟をして、過去に触れてみたい。昔の私が読むのと、今の私が読むのとでは、かなり大きな差が出るんじゃないだろうか。

 刺激はそれを受けるときによって反応が変わって来ることがある。練習なんかでも、初心者の頃と同じ練習を行っても、効果が異なってくることは多い。練習ってそんなものであるべきだと思っている。

 学生時代には読みたくない本を読まされたことがけっこうある。参考書の類である。今では書いてあった内容はきれいさっぱり忘れてしまったが、あのころも一度読んだだけで何かが出来るようになったことなんかない。

 やはり読んだことは、何度も繰り返し練習しなければ使えるようにはならなかった。一番早かったのは、書いた人に会いに行って、じかに教えてもらうことだったが、お陰で遅まきながらもできるようになったことはある。やっぱり生はいいねえと感じたよ。

 繰り返し練習することは、時に嫌になったりもするけれど、どんどんと深まりを与えてくれる。もちろんやっている過程で、教えてくれた人が「嘘」をついていることに気づいたことも、何度もある。でも恨んではいないよ。その練習は、その人がいなかったら考え付かなかったかも知れないからね。

 ものごとの「いい」「悪い」は、すべて自分の体験を通して、急がないで決めることにしているけど、若かった頃は先を急いでいたから、せっかちだったよね。もちろんせっかちで良かったことだってちゃんとある。せっかちにはせっかちである理由があるんだよ、きっと。誰もかれもがゆっくりだと、世の中、眠くなってしまうからね。

 でもゆっくりと何度も繰り返すようになって、せっかちだと気がつかないことに、いくつも気がついた。それがそれまでには気づかなかったことをいくつも気づかせてくれ、若いと見落としてしまうかもしれないことを発見することができるようになった。これも感謝・感謝である。

 何もかもが、長い時間をかけてわかるようになったことで、生き方までは誰も教えてくれなかった。自分で見つけるしかなかったんだよね。でもせっかちだった私も次第にゆっくりと生きることが好きになってきた。人は変わるもんだなあと、我ながら感心してしまう。もう一つは時間の流れや、さまざまな経験は、人を変えるもんだなあということだ。

 いろんなことがあった。嬉しいことも、悲しいことも、悔しいことも、幸せなことも、腹がたったことも、言葉で形容できないことも、たくさんあった。でもそんなすべてのことが私を変えてくれ、いろんなものをいろんな角度やスピードで認識できるようになってきたのではないかと思う。

 そうなると、今まで出会ったすべての事柄や人に感謝しなければならないのだろうけど、残念なことにどうしても許しがたい奴もいる。本当はそんな存在にも、出会えたことくらいは感謝しなければならないのだろうけど。まあときに敵愾心とか怒りは、心に強烈な意志を発生させてくれるからね。

 自分のなりたい自分になれればいい。過去を引きずっていてもまったく差し支えはない。東京から持って帰ったサイフォンのように、今は使われなくなったとしても、サイフォンを見るだけで、当時のことを思い出すことができるから。あの明日がまったく見えなかったころ、何かをしたくて困っていたころ、でも将来に不安しか感じなかったころ。でも元気だけはあった。

 サイフォンをふと目にしたとき、一気に学生時代を思い出し、(当時は花粉症ではなかった)花粉に咳き込みながらも、「またいっちょう頑張ってみるか」という気が起こってくるのを感じPhotoる。過去の記憶の鍵は、過去の元気を思い出させてくれる鍵なのかも知れない。

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2009年2月24日 (火)

今、その瞬間の美

 このところ花粉が怖くて外をのんびり歩いたりできないが、私は景色が毎日移ろうのを見るのが好きである。毎日、なんの変化もしていないようで、その実、着実に少しずつ変わっていく。そして同じ状態は二度とやってこない。昨年咲いた花と、今年咲く花は、同じ色、同じ形をしているが、決して昨年と同じ花ではない。

 それは葉であろうが、根であろうが同じである。生物である以上、必ず変化していく。それが「生きていること」の証なのだが、我々はただなんとなく生きているだけだと、少しずつの変化に気づかないで終わってしまうことがある。だから結構頻繁に写真を撮影する。デジタルカメラが発達してよかった。バシバシ撮影しても、気に食わなければいくらでも消去できるからだ(よく消去し忘れることがあるけど)。

 そして必ずカメラ屋さんでCDにしてもらい(自分でやると、自身がないので。基本的にプロを信用していてまかせる)、一枚はプリントしてもらう。こうすれば移ろい行くもののその瞬間が、ちゃんと残されるからだ。

 あとで整理するのは大変だけど(事実、未整理のものが山盛りあるけれど)、こうしておくと、貴重な一瞬が、そこだけ自然界から切り取られたように残っていくのである。もうちょっと早くからこういった作業を開始しておくんだった。なんでもない記録は、すべてが忘れ去られた頃、突然黄金の輝きを持つことがあるからね。

 残しておくことはいいことだ。残しておかないと、過去は本当に失われてしまうだけのものになってしまう。あまり残しすぎておくと、これまた片づけができなくて、叱られる原因になったり、整理が追いつかなくて困るんだけどね。でも片付けをしていて、十年ほど前の写真が突然出てきたりすると、片付けの手が止まってしまいません?

 同じようなことは、思い出に残る雑誌なんかでもいえるけど。片付けていて作業が滞るのは、決まってこういうものに出くわしたときだ。どれもこれもがその時代の記録なんだよね。そして記録は記憶と絡み合って我々の頭の中深くに残されている。過去の記録と出会うと、普段は大脳の表層にないものが、突然表に飛び出してくるんだよね。

 でもアイドルタレントの写真集が出てきたときは、ちょっと手が止まっただけで、右から左へと移された。廃棄処分になるか、ならなくてもお蔵入りすることは間違いない。いやドラマなんかはいいんだよ。一つの完結したストーリーは、すでにそれ自体が一つの完成したものとして存在するからね。登場人物だって、そのドラマの中の一部だから、別に違和感もないし、私なんかはつまらないテレビ番組しかないときだったら、昔の懐かしいビデオばかりを見ていたりする。そして登場人物も、鮮度を保ったままでいてくれる。

 でもアイドルの写真集はちょっとね。きっと買った当時は、とんでもなく輝いていたと思うんだ。でなかったら買わなかっただろうし。でも人間はいつまでもアイドルのままではいられない。歳を重ねれば、それなりに変化していく。昔はかわいかったんだけどなあ……

 この「けどなあ……」は強烈だ。アイドルだった人には、もっと強烈なのかもしれないけど。人の美しさは年齢によって変化していくものだとは思うけれど、アイドルって永遠にアイドルでいてほしいという希望を我々に抱かせたりするくらい、魅力的だったりするからね。

 人は誰でも歳をとる。それはアイドルであろうと同じだ。写真集を作った時には、若くてとんでもなく魅力的であったとしても、毎日毎日少しずつ変化していくんだよね。そしていつの日か、アイドルでなくなっていたりするのである。でもファンの中には、当時作られた写真を、いつまでも大切に保管し続けている人もいるんだろうなあ。でも時々、昔アイドルだった人がテレビに出て、現在の姿を見せてくれたりしているんだけどね。

 その人にとっては、そのアイドルとの時間は、その時点で止まってしまったんだよね。現実にアイドルは年齢を重ねていくし、ファンだった人も歳を重ねていくのに。そして私なんかは(写真集を買う趣味はないのだが)、「ああ、そういった時代もあったなあ……」。 若干の感傷を抱きながらも、次の瞬間には、今のアイドルの載った週刊誌を見ていたりするのである。

 これって浮気者? でも本当に美しいのは、その瞬間だけだったりするんじゃないかね。もうちょっと私が年齢を重ねたら、そうして変化していくことそのものを、美しいと感じるのかも知Photoれないけどね。

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2009年2月23日 (月)

何でも実験癖・20 ~黒キクラゲとセロリで作る、黒木耳芹菜粥~

 なかなか多忙で、お粥を作ることさえままならない。本来私の遊び心と、私の生活の、より健康化を目的に始められた壮大な(アホか?)プロジェクトであったが、忙しい=帰宅が遅い⇒母か相方がすでに夕食を作ってくれている、という大変ありがたいパターンに嵌ってしまって、私は「上げ膳・据え膳」状態になっているからである。

 これは大変にありがたい状態であり、毎日感謝感激、感涙にむせんでいるのだが、ここに紹介できるような試みができないということであり、若干寂しい。でも私は本来横着な人間なので、しっかりと甘えさせていただいている。

 以前、H老師とお話させていただいた時に、「お前は料理が作れるのか?」と尋ねられたので「もちろん。学生時代は毎日自分で作っておりました」と答えたら、「一週間に何度作るんだ?」と聞かれた。「まあ、1~2回」と言うと、大笑いされてしまった。中国では(地方にもよるが)、料理どころか家事一般をする(させられている)男性は大変多いという。

 中でも某大都市と、某華やかな都市はその傾向が強く、そこの都市出身の女性とは付き合うなと、中国の親友たちに真剣な顔で忠告された。幸いなことに、この忠告を確かめるような経験はしていないので、私のところはハッピーである。

 といPhotoうことで、久しぶりに(1週間ぶりに)作ってみた。オリジナルは『黒木耳芹菜粥』という名前である。一応、テキストに載っているのを例によって紹介しておこう。「黒キクラゲとチンサイのお粥」である。

 まず材料である。黒キクラゲ30g、チンサイ100g、お米100gで、調味料として小匙半分のお塩を使う。手順は、① 黒キクラゲを水で戻し、石つきを取ったあと、手でちぎっておく。チンサイはスライス、お米はといでおく。 ② お米を鍋にいれ水を1ℓ加え、強火で加熱し、噴いたらチンサイ、キクラゲ、お塩を加えて弱火で45分加熱して完成とある。なんでも渇くきをとめたり、血圧を下げるのに良いらしい。

 これでPhoto_2は大して美味しくはないと判断したので、いつもながら大幅に変形して作ってみた。まず準備物である。右上から生姜、その手前が鶏の胸肉、左へ鶏粉、その斜め前がお米(例によって5勺)、その斜め後ろがお塩、左へいってキクラゲ、前に横たわっているのがセロリ、鶏肉の横にあるのが葱である。

 まずお1213米をとぐ。5勺程度なので面倒だが、まあそれでも適当にはといでおく。そのまま土鍋に入れて面倒だからお水を5合加えておく。後は加熱する気になるまで、そのまま放っておく。ついでキクラゲを熱湯で戻す。時間にして12~13分かかるので、これは時間を考えておいたほうがよい。

 チンサイは手に入らないので、代用品としてセロリを用いる。母は歯が丈夫ではないので、やや薄めにスライスしておくが、量は約90gである。ついでに葱はこの時期には健康によいので、40gぐらいを根元に近い部分(半分くらい)は2㎝くらいに切っておく。葱は葱で味を楽しみたい。 残りの半分は刻んでおく。

 ここで缶ビールをプシュっとやる。ここからは飲みながらである。テキストにはキクラゲは手でちぎるように書いてあったが、キクラゲはなかなか丈夫なので、面倒だから5~10㎜くらいの幅で刻んでおく。ついでのことだから鶏胸肉もさらに小さPhoto_3く刻んでおく(本当はミンチでも良いと思っていた)。生姜は1~2gくらいを千切りにしておく。

 我が家では大体火をつけてから7~8分で噴くことになっている。噴いたら遠慮なく鶏粉、小さくきった鶏肉、お塩、生姜などを入れる。生姜は風味を利かせる気も大してないので、いつも早めに入れておPhoto_4く。

 この状態で弱火にし、さらに20分弱加熱したら、今度はチンサイ代わりのセロリ、キクラゲ、葱を切ったのを入れる。そしてほんの心持、火を大きくして約5分間煮込む。お粥である以上、固いのはいただけない。消化もよくなければならない。でもお酒を飲みながら作ると、つい忘れてしまいそうになるPhoto_5ので注意しておかなければならない。特に会話が弾んでいたりするとなお更である。魯山人が魚について言っているのと同じである。「魚というやつはやっかいだ。じっと見ているとなかなか焼けないが、目を放すとすぐに焦げたがる」 何でも同じみたいな気がする。

 熱が通ったらこんどは刻み葱を投入する。刻み葱は香Photo_6りつけなので、こんどはあまり加熱しない。今回は刻み葱を入れて土鍋の蓋をし、すぐに火を消して1分半くらい蒸らした。これででけあがりである。あとは食べるだけ。

 きっとPhoto_7若い人なんかだったら、一人で食べてしまえるかもね。こんな食生活でも、痩せないものなんだよ。ただしこういったスタイルのお粥は、お酒を飲みながらでも食べることができるんだよね。お酒を飲んだら食事はしないって人もいるみたいだけど、身体にはあまり良くないみたい。割と短命な人もいるよね、そんな暮らしをしていると。

 相方の評価は☆12個だそうである。まあだいぶ下駄を履かせてもらっているとは思うけれど、栄養まで考えて作れるから、簡単でいいかも知れない。

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2009年2月22日 (日)

スポーツと武術

 最近、「名門」と言われたアマチュアチームが、母体の企業が経営難とかで、いくつも解散したと報道された。これを見て、私はとても寂しく感じた。母体の企業さんが悪いわけではない。経営が苦しくなりさえしなければ、彼らだってチームを解散させたりはしなかっただろうし、それまで支えてきた功績は、評価しなければならないことだからである。

 日体協は「スポーツをやって健康になろう」というキャッチを出しているけれど、アマチュアでも高いレベルで競技している人たちの中には、健康なんか度外視して、それこそ競技に生命をかけている人もある。時には満身創痍みたいになっても頑張っている人もいるが、こういった人たちには経営母体が経済的に問題が出たりすると大変だろう。

 スポーツをやってきた人間が、そのスポーツだけで生活していくことができるような状況は、残念ながら一部のプロの人たち以外は、経営母体の経済的状況の影響を強く受けてしまうのはいたしかたないことかも知れないが、何か他にいい方法はないものだろうか。

 言い方を変えれば、スポーツの地位をもう少し社会の中でしっかりしたものにしなければ、経済的な波がそのままスポーツ界の命運を握ってしまうことになる。でもスポーツには、スポーツでなければ手に入らないいいモノがあるんだよ。それは時にはスポーツマンシップだなどといわれたりすることがあるが、そんな狭い範囲のものではない。

 今ではウォーキングやジョギングをやっている人を見かけるのは当たり前だったが、私が学生時代には、そんな姿を見かけることは稀だった。ストレッチなんか、言葉すらなかったし、スポーツが健康な生活に良い影響を与えるなんて、誰も声高に言ってなかった。

 国民の何パーセントがやっているかはわからないが、今はかなりの人たちが取り組んでいる。そして自分の健康に活用しようとしている。これはスポーツの振興と、スポーツ界の発展のために様々な研究をしてきた人たちの努力や、研究データが社会に反映されてきた結果ではないだろうか。

 でもそれも選手の生活を保証してくれる、チームの母体が存在してこその話だ。選手だって当たり前の人間だから、生活していかねばならない。それには収入が必要だ。でもアマチュアスポーツ界には、金品授受に関してうるさい規定があるから、そんなに多くの選手が自分の生活を保証できるだけの収入を、競技をすることによって得ることはできないだろう。

 どこかでこの部分を改善していかなければ、現代スポーツの隆盛だって、砂上の楼閣のようにしか思えない。スポーツ界自体がもっと生産的にならなければならないし、社会に還元できる部分も大きくなるような工夫をしていかなければならないと思ったりする。

 私は身体運用の研究をしているが、これはスポーツ界にも明らかに効果があると同時に、一般生活についても大変有効に使えるものだ。私はややこしい精神的なものをあまり重視しないし、実効性のないものには構わない性格だからでである。そしてスポーツとか競技の世界でいう「勝った・負けた」も否定しないし、さらにその向こうにあるはずの、人として満ち足りた人生についても、身体運用を通じて考えたいと思っている。

 何をきっかけにしても良い。要するに人間が人間の身体を、より効率的に使いこなすことができれば、それは「勝敗」のともなう競技の世界であれ、勝敗など関係ない日常生活であれ、楽に大きな仕事ができることを保証する。それにこそ意味があると考えているからである。

 よく武術はスポーツより上だとか言う人がいるけれど、自分がやっているものが何よりも大切なのは当たり前だ。だから「自分にとって○○は△△よりも上」という言い方なら、構わないと思う。でもそれを他人に主張しはじめると、「おいおい…」と思い出してしまうのである。陸上競技を必死でやっている人にとっては、誰がレスリングのチャンピオンになろうと知ったことじゃないし、誰が柔道の世界チャンピオンになろうが、知ったことではないからである。

「武術は生死を決するのを前提で取り組むものだから」という意見をかつて聞かされたことがあるけど、その人がどんなに凄いのかは知らないが、スポーツの世界でも凄い人はたくさんいる(もちろん、武術・武道の世界にもいるのは、私自信の経験からも言えるけど)。両方の世界を覗いてきた人間だからこそ、どちらの世界にも凄い人はいるし、凄くないのに凄いように振舞っている人がいることも知っている。

 だから私自身は、「ご自分が取り組んでおられることを一番大切にしている」のは当たり前だと思っている。でもどちらが上とか下とかいった問題ではないような気がするね。まあ一般的にスポーツ選手は武術・武道の人よりも若い人が多く、その分軽く見られ勝ちではないかと感じているけれど。

 そしてアマチュア・スポーツでは、現役を引退すると、指導者への道をうまく歩いていけなかったりすれば、経営母体にとどまることが難しかったりする。それでせっかくその人が競技生活の中で習得した価値あるものを、社会に発表する機会が少なくなっているような気がしないでもないんだよね。

 いずれにしても、アマチュアスポーツは経済的な生産性を持たなかったり、持っていても脆弱であったりするので、これから本格的になんとかできるようにしていかなかったら、スポーツから得られる価値あるものの大きな部分が失われていくのではないかと憂慮している。

 経営母体の側も大変だと思うけれど、スポーツの優れた部分を引き出していくことに協力していただけたら、少しはスポーツ界全体の将来も明るくなるような気がするのだが…

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2009年2月21日 (土)

花粉と黄砂

朝起きて新聞を見たら、今日の岡山県南部の花粉予想は、「大変多い」だった。今年から毎晩のように、相方に背中にお灸をしてもらっているので、胸の重さは随分軽くなっているのだが、「はっくしょ~んっ!! はっくしょ~んっっ!!」はなくなるわけでもなく、午後になればどうしても鼻が詰まったり、洟が出そうになったりするので、ここは大事をとることにした。

 それでも用事はすまさなければならないので、車で30分少々のドライブをして、そのまま仕事場へと向かったのだが、お陰で「はっくしょ~んっ!」はないものの、今度は頭が動かない。私は身体を動かさないと、頭も動かない人なのです。だから早くおんもで走り回れる季節にならないかなあと、「歩き始めたみいちゃん」みたいに待っております。

 春生まれの私は、けっして春は嫌いな季節ではないのだが、花粉症と最近では黄砂のお陰で、なかなか外に出られなくなっている。トレーニングといっても、室内でもできないわけではないけれど、どうしても狭いところだと、気分が晴れ晴れとしない。だからと言って、広々とした屋外に出ようものなら、身も心も最悪になる。夜なんか寝られないくらいだ。

 花粉症の洟って、寝てからが堪えない? 昔、自分が花粉症だと知らなかった頃、寝ると気道が詰まって、数十分おきに起きて洟を取らなければならなかった。あの時は、このまま気が狂うんじゃないかと、真剣に心配した。いいお医者さんが見つかって、最低限度の生活ができるようにはなったけど、それでもこの季節は何をするにも億劫になる。

 身体が動かないと頭も動かない。洟が詰まると、思考が停止する。ご飯を食べていても、口で呼吸しなければならないから、口の中のものをぽろぽろこぼしてしまう。情けないったらありゃしない。

 いつだったか莫ちゃんの茶店で、凍頂烏龍茶を見かけて試してみたところ、このお茶がよく効いた。莫ちゃんは私が「これを入荷しておいて」と言ったのだが、「味がピュアでない」という理由で却下されてしまった。花粉症などというものを知らないから、私がどれほどこのお茶をほしがっているのかわからなかったのだろう。私にどのみち、この時期には味がわからなくなるから、どんなにピュアなお茶を飲んでも、ありがたみがわからないのだよ。

 残り少なくなった頃、かつての同僚に頼んだら、凄い少量なのに高価な凍頂烏龍茶を手に入れてくれたことがある。喜んでこれを飲んだが、確かに洟はとまったけど、今度は喉が乾燥しすぎて血が出るようになった。もちろん熱も出る。ほんのわずかな量だったけど、そのお茶は今でも残っている。

 杉の花粉については、子供の頃よく遊んだ記憶があるだけに悔しいが、黄砂についてはどうにもこうにも、私が子供の頃より、今の方が激しくない? 今日の岡山は、まあまあ黄砂が多かったように思うよ。今年はまだ見ないけど、時々、山も見えないほど大量に黄砂が飛来することがある。

 こうなったらひたすら窓も戸も締め切ったまま、家から一歩も出たくなくなるよ。人はいろんなものと戦うけれど、目に見えない病原体とか、花粉とか、黄砂とかは嫌な相手だなあ。それでも毎日、お医者さんや研究者のみなさんは、なんとか快適な生活を与えてくれようと研究を続けてくれているんだろう。

 名前も顔も知らないけれど、こういった人には感謝しているよ。本当に、名もない人たちが一所懸命研究してくれたお陰で、我々の生活がどれだけ便利になり、どれほどの病気などの対策が生まれてきたのだろうか。テレビやマスコミで派手な活躍をしている人たちもそれなりの意味があるけれど、こういった目立たないけれど、値打ちのある研究をしてくださっている人の、社会にたいする貢献は大きいと思う。

 何を基準に、その貢献の大きさを見ればいいのかわからないけれど、でも何かで感謝の意を表したいものだ。そんな人に負けないよう、私も一所懸命、自分ができることで頑張らないといけないと思うけど、どうしてもこの黄色い砂が気になるよね。困ったもんじゃ。食べるだけで花粉症が改善されるような食べ物は、どこかにないんだろうか(などと横着なことを考えるくらい、怠惰になっている今日の私でございます)。

Photo ←おかげさまで、大好評のようでございます。よろしくお願いしますね。

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2009年2月20日 (金)

宋襄之仁

 眠い! 誰が何と言おうと、眠いものは眠い!! 花粉症の時期は、何もしなくても眠くて困るのに、疲労が重なっていたのか、やたらと眠い。まあ前の財務大臣ほどではないが。(もしあれが飲酒のせいでなかったとすると、眠い私は一億分の一くらいは同情してやってもいい。でも一応大臣だったんだから…)でも眠いと頭が回転してくれないよね。それで焦ったら、ますます頭は動かない。う~ん…

 だから今日も『中国昔話』でやっちまうことにする。なにせ歴史が長いから、いくらでもネタが転がっているんだよね。今日は、この話を聞いて以来、よくもまあこんな呑気な王様がいたもんだと思い続けていた宋の襄公の、トンデモ話を紹介しよう。結構有名な話だから、知っている人も多いかも。でも現代では、もしこの宋の襄公みたいな人がいたら、特別天然記念物に指定するか、博物館かどこかに飾っておいてあげたい気分になる御仁である。

 昔々Photo(春秋時代)、中国の宋という国に襄公(在位BC651年~BC637年)という君主がおりました。この人は斉の桓公が覇者になったというのに憧れて、自分も一発、桓公みたいに覇者になってみたいと考えておりました。

 ところがどっこい宋という国は斉に比べて国力が弱く、おまけに隣には大国楚がありました。そこで宋の襄公は楚の成王に連絡を取り、「私を覇者と認めてはくれぬか」と申し込んでみました。もちろん大国楚は、自分より格下の宋の言うことなど、最初から馬鹿にして相手にしてくれないばかりか、あべこべに襄公を侮辱する有様でございました。

 普通、覇者になるような人物なら、こういった侮辱には敏感に反応して、討伐に出かけたりするものですが、国力の違いを悟っていたのか、楚に対しては何もするこができず、仕方がないので楚を盟主と仰ぐ鄭国の文公をいじめることで、憂さを晴らそうといたしました。楚に攻め入る代わりに鄭に攻め入ろうとしたのでございます。

 鄭ではさあ大変! なんで自分のところが攻められるのかわかりません。襄公を侮辱したのが楚王であったのに、戦争を仕掛けられたのは楚ではなく鄭だったからです。あわてて楚に使者を立て、救援を要請いたしました。

 これを聞いた楚の成王は「鄭はわしの子供のようなものじゃ。すぐに救援部隊を派遣してつかわす」と言ったところ、大夫の成得臣がこう献策いたしました。「鄭を助けるよりは、宋をお攻めになったほうがいいのでは(まるで囲魏救趙ですな)」 楚の成王は「なぜじゃ?」と問います。

 すると成得臣が曰く、「宋の襄は身の程知らずにも鄭討伐に兵を出します。国内はかならずや隙だらけとなりましょう。この隙を衝けば、勝つこと間違いないでございましょう。もしも兵を返して自国を救おうとすれば、軍は疲労困憊するでしょう。これを逸を以て労を待てば(元気一杯の兵で、へろへろに疲れた兵を迎撃すれば)、勝てぬ道理はどこにもありません」 これを聞いて楚の成王はまことにもっともじゃと、成得臣を大将に、大夫闘勃を副将として宋に兵を送ったのでございます。

 宋の襄公はこの知らせを聞くと、急遽軍を返し、自国を防衛することにいたしました。泓水で南に向けて自軍の陣を展開して待ちうけたのでございます。成得臣は使者を立て戦書を送りました。それに対して宋の司馬、子魚は襄公にこう献策しました。「楚が派兵してまいりましたのは、わが国が鄭を攻めようとしたので、それを救援するためでございます。もし我等が鄭を諦め、楚と和睦すれば、楚の軍は撤退するものと存じます」

 ところが宋の襄公は譲りません。「昔、斉の桓公は楚を討って覇者となった。今わしが楚軍を討たなければ、どうして諸侯はわしを覇者と認めてくれようか?」 そこで子魚は重ねて現実を説明いたしました。「ですが楚軍はPhoto_2我が軍よりも装備で優れ、しかも軍勢が多いのでございます。戦って勝つのは難しゅうございます」 それでも宋の襄公は譲りません。「じゃがわしには戦う道理がある。きゃつらを恐れる必要はない」 言い終わるや、吉日を選んで泓水の北で楚軍と戦うと返書を認めたのでございます。しかも自分の軍の旗に、「仁義」と大書させて持たせたのです。

 さて戦いの日の朝早く、楚軍は泓水を続々と北に渡り始めました。子魚はこれを見て、この隙に攻めるよう「楚兵は多く、我が軍は少ないのです。今攻めなければ勝ちはございません」と襄公に進言したのですが、襄公は聞き入れません。襄公は旗をさして「そなたの目には見えぬのか? あの仁義の二文字が。わしはかねてより仁義を主張しておる。兵の半分もが渡河しておらぬときに攻めるわけにいくものか」と子魚を諭したのでございます。

 子魚はひそかに毒づきましたが、君主の指揮に逆らうわけにはまいりません。暫くすると楚軍は渡河を終えました。成得臣は鞭を手にして、さかんに指図して東西に布陣させております。まだ宋どころではないありさまです。それを見て子魚はまた襄公に進言いたしました。「もう待てませぬ。陣を築いている今、速やかに攻撃するしかございません。もしも陣を築き終わったら、もう何をしても手遅れでございます」

 ところがこれにも襄公はこう答えたのです。「そなたは一時の利しか考えられぬのか? 万世の仁義が解らぬか? どうしてして相手が陣を敷き終わるまで待てないのじゃ?」 子魚はもはやどうすることもできませんでした。楚軍が陣を敷き終わってから戦が始まりましたが、宋軍は散々に打ち破られ、襄公も逃げる最中に太ももに負傷するありさまでした。

 宋人たちは、襄公の失敗についていろいろと議論しましたが、それでも襄公は「君子の戦いである。すでに傷ついたものを殺すは許されぬ。年配の敵兵を捕虜にすることは許されぬ。まして地勢などの有利なところを選ぶわけにはいかぬ。相手が陣の指揮終わってないのに攻めて、たとえ勝ったとしても何の栄光があるのじゃ?」

 子魚はこれに対して言上いたしました。「我が君、あなたさまは戦というものが全然お分かりになっておられない。敵が兄弟であるときに、相手が不利な状況を衝かなければ、どうやって勝てるというのでございますか。我らは最大の好機を逃がし続けました。今すぐに衝けば100%勝てるという好機を与えられながら、取らなかったのでございます。戦は敵を殺すものでございます。殺さなければ、こちらが殺されるのでございます。たとえ敵が傷を負っていようが、年配の者であろうが、武器を手放さなければ敵は敵なのでございます。もし殺したくなければ、捕虜にしたくなければ、相手を愛護したいのであれば、最初から戦わねばよいのです。戦いを始めた以上は、仁義などと無意味なことを言っても、敵はなんとも思ってくれませぬぞ」

 宋の襄公は太ももの傷がもとで、翌年この世を去ったのでございます。(『左伝・僖公22年』)

 なかなかの御仁でしょう? でも自分の主義主張に殉ずるなんて、それなりに凄かったのかも。でもこんなバカ殿の下で死んでいった将兵は、とても気の毒でございますな。だいたい「覇者」なんて、第一条件が戦が強いことで、その次が「仁義」でしょうに。まあ、頭でっかちになってしまうと、往々にしてこんな失敗をすることがあるんだけどね。

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2009年2月19日 (木)

話し上手

 石川遼選手がアメリカで会見を行っているのを、テレビで見た。確かにとんとん拍子に進んでいる、素敵な人生を歩いているように思う。でも本当は本人にしかわからない苦労はいっぱいあると思うけどね。

 私は特にゴルフファンというわけではないので(身体運用的に興味がなくはないけど。特定の選手とか、ゴルフという競技が特別に好きだというわけではない)、石川選手がいったいどういった人なのかは知らないが、なかなかウィットに富んだ、素敵な挨拶だったと思う。やっぱり好感を持たれる人は、好感をもたれるような話し方をするもんだね。

 特に17歳という年齢で、ああいった話ができるのは、なかなか素晴らしい。私が知っている人の中で若くて素晴らしい話ができる人といえば、やはり平野早矢香ちゃんである。いつ聞いても、よくもこんなにいろんな人に気を使っているうえ、本当の気持ちを上手に伝えられるものだと感心する。

 以前2度ほど、ご本人に申し上げたことがある。「凄いわ。その若さで、素晴らしい話が出来るね。私が20歳の頃には(実は今でも)、逆立ちしてもそんな話はできなかった」 いやもう脱帽でございます。やっぱり人間性がいい(経験や普段の生活、それに対する認識を含む)から、素敵な話ができるんだろうね。

 私は「あの人は話が上手だ」と他人が評している人にでも、いくらでも話が下手な人がいることを知っている。確かに話は「立て板に水」で、さらさらといくらでも喋るのだが、後に何も残らない。この人は言葉を口から空気中に流しただけではないのかという人を、何人も見てきた。

 他の人から「話が上手」と言われているから、本人もきっと意識しているんではないかと思う。とにかく噛んだり、滑ったりしないで、滔滔と喋るのだが、聞き手の心には一言半句として残っていない。むしろ「話し上手」とは言われなくても、少々つっかえひっかえへどもどしながらでも、内容のある話をしてくれる人の方が、はるかに心に残るものがある。

 いくら表面上は話し上手でも、聞き手の心に何も残せないのなら、話をした時間も、労力も、そして聞き手の時間も労力も集中力も浪費されてしまっている。こんな人は決して話し上手ではない思っている。あまりにつっかえひっかえしてしまったのでは、何を言っているのか解らないこともあるけれど。

 大体、いろんな経験をして、それを十分消化吸収して、本当の自分の血肉にしている人の話は、聞いていて面白いし、聞き手の心の琴線を震わせてくれることが多いように感じる。それに対して、「今度話をするから」と何かの本を読んだり、ネタ本を頼みにしている人の話は、かりに上手にしたとしても「まあ当たらず触らずかな」程度で終わることが多い。

 人が書いた本を読んでも、それはそれを書いた人のものだ。それを自分のものにしようとしたら、自分も同じ体験をしなければならない。もちろんその行為は無駄ではないと思う。同じ事をやったとしても、人によって何をどう感じるかは異なるから、同じ事ができてそれについて喋っていても、話の内容が同じだとは限らないからである。

 何かを達成するにも、人によってすべてやらなければならないことは異なるかも知れない。すると経験は当然のように変わってくる。話の内容が変化するのは当たり前というものだろう。人はそれぞれ性格も異なるし。でも「何かを実際にやった人」の話は、聞いていて凄いと感じるものがどこかにある。

 昔々(そんなに大昔ではない)、かつてオリンピックに出場した人の話をよく聞いていた頃がある。だいたいトレーニングなどについてはたいして感心したことはなかったけど(よくこの程度のトレーニングでオリンピックに出場できたなと感じたことは少なくない。きっと身体能力がもともと高い人たちだったのであろう)、チームのレギュラーなどを取るための努力には、「なるほどな」と思わされたことがある。

 もちろんそれは「キレイゴト」ばかりで済まされる話ではないので、ここでは載せようとは思わない。ただ国際競技会でレギュラーになるには、当然こういった覚悟や努力も必要なのだろうなとは思わされた。

 その結果、レギュラーと控えができたわけだから、当然レギュラーを取った人は、レギュラーを取るために現実に工夫もし、努力もしたのだろう。だからその部分が生々しくて、聞き手(私)の心に届いたのであろう。反対にやった練習はありきたりのものでしかなかったとしたら(いるんですよ。人と同じ練習をしていても、人より早く伸びてくる人がね。もちろんその練習がその人に適していたのかも知れないけど。こういった人が現役を引退して、指導者になって、選手を一人も作れなかったとしたら、その人がやった練習、知っている練習は、その人にしか適していなかったことになるんだけど)、聞き手(私)の心には届かなかったんではないだろうか。

 人の心は様々な優れたものに触れることで磨かれるのではないかと思う。それにはある程度は時間(時間がすくなければ、どうしても経験をつめないこともあるから)が必要だけれど、大切なのは「いい体験」をし、それを様々な方向から考えたり理解したりして、きちんと自分の血肉にすることではないだろうか。

 あとはそれを表現する「言葉」を持てば、人が「う~ん、いい話だったなあ」と言ってくれるような話ができるのかも知れない。ちなみに「論語読みの論語知らず」で取り上げたおっさんは「話し上手」と言われていたけど、いろんな本を読んでいたんだろうね、見事に「立て板に水」だったけど、このおっさんの話を聞いた人間の誰に尋ねても、1分後には話の内容や印象は残っていなかった。

 するとこのおっさんの話に使われた時間や、このおっさんが話をするために読んだ書物は何になったんだろうね。簡単である。見事に無駄になってしまっているのである。この無駄はこのおっさんだけでなく、話に付き合わされた人間のすべてに無駄になっていた可能性がある。こまったもんだ。

 話を聞いた人のすべてを感動させることは難しいかもしれないが、せめて「無駄」だったとは感じさせないような話ができるようになりたいね。その為には、自分にとって「無駄」に過ごす一生にはならないように、頑張らなければならないかも知れない。

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2009年2月18日 (水)

前事不忘、后事之師

 朝はそこそこ寒くて、昼間は「うっそ~っ!」というくらい暖かで、夕方からまた寒くなってしまった。今年はちょっと化かし耳鼻科に行くのが遅れて、どうも花粉の洗礼がここ数年の中ではきつい。こうなると、風邪を引いているのか、花粉にやられているのか、何が何やらわからない。

 いつもこんなことがあると、同じ思いをする。なんで私は同じ失敗を繰り返すのだろう? 自分の頭をぱかぱか叩きたくなる。風邪なんていつも同じだよ。ちょっと寒い目に遭ったのに、メンテをしていなかったとか、汗をかいたのに、忙しいのにかまけて着替えていなかったとか。今から数年前なら絶対にこういったチョンボはやらなかった。

 今は少し脳みそに隙間ができてしまいましたかな。要するに私は、毎日、快適に生きていたのである。その為には心身ともに健康で、調子がいいことが必要条件だ。だから私は基本的に、快適に生きるために生きているという、面白い生き方を心がけているのである。ところが過去やっちまった失敗を繰り返したときは、とても気分がブルーになってしまう。

 体調が良くないせいもあるけど、同じミスをやらかした自分に、ブルーになってしまうんだよね。こういう時は自作のお粥でも食べて、あったかくして寝るのが一番だが、今晩の食事は(たぶん)母の鍋ではなかったかと思うので、そういうわけにもいかない(最後に「おじや」を作れば、お粥と同じようなものなんだけどね。「おじや」はお粥の類の中では、無敵の美味しさだから)。

 そこで今日は(アイデアが浮かばないことでもあるし)、『戦国策・趙策一』から「前事不忘、后事之師」を紹介して、自分のための戒めの言葉としよう(付き合ってくださるかたがた、ありがとうございまする)。

      *        *        *

 春秋末期には多くの諸侯が現れ、激しい権力闘争を繰り広げた。晋もそういった国の一つである。そのころの晋は国君の力が弱く、権力のほとんどが3つの有力な家臣の手中にあった。智氏、韓氏、趙氏である。そして当然のように、この三氏もまた様々なところで権力闘争を繰り広げていた。

 あるとき智氏の智伯は韓氏、魏氏と連合して、趙氏を叩こうと画策した。ところが趙氏の趙襄はこれを聞きつけ、配下の謀士たちと対策を練った。その時卿大夫の張孟はこの緊迫した状況を解決するために、ひそかに韓、魏両氏に使いを送り、彼らに利害を説いた。

 智伯が趙氏を叩くのは、趙氏を叩いた後、韓、魏両氏も叩き、自分だけが権力をにぎる計画の第一歩でしかない。つまり趙氏がなくなれば、次は韓氏や魏氏が危なくなる。これを解決するには、逆に韓、魏両氏の方が趙氏と連合して、智伯に対抗するのがよいと。

 趙襄は張孟の献策を受け入れ、三氏の連合は成った。その後の智伯との戦いでは、三氏連合は大勝して、智伯を生け捕りにすることに成功した。このように三家の大夫が勝ち残った後で、人々はこれを演出したのは実は張孟だということを知った。趙襄からは大変に感謝され、礼をしようと申し出られたが、なんと張襄はその申し出を断った。それどころか、晋を去って引退するという。趙襄はいぶかるを通り越して怒りまで覚えるありさまだった。そして張襄に詰問した。

 張孟は答えて言った。「およそ天下を治めようとするものは、まず御者や臣下を持つものでございますが、自分の臣下が自分より有名になることを望む者はおりません。しかしながら私は先の智伯とのことで、すでに満天下に、張孟は智謀の士よと有名になってしまいました。すでに私の名声は高くなり過ぎているのでございます」

「これは私にとっては大変危険な状況と言わねばなりません。そこで私は今すべてのものを捨て、一市民として生きようと考えたのでございます。今までの歴史を見ても解るとおり、このような君主と臣下の立場が微妙な状況になれば、国内に動乱が発生するものでございます。でなければ臣下の身が危うくなってしまいます。これは国家にとっても、個人にとっても利のあることではございません」

「そこで私は前人の経験を活かし、自分の行動を決めまする。国を不安定にするも、私個人の身に危険が及ぶも、私の望むことではございませんから、ここを離れようと考えるに至ったのでございます」 趙襄はこれを聞いて感心し、張孟の申し出を聞き入れることにしたのである。

《智慧語林》 晋の文公が初めて覇者となり、晋の黄金時代を築いた。哀公4年(BC453年)韓、趙、魏の三家は連合して智氏を亡ぼし、その地を三つに分割した。烈公19年(BC403年)周の威烈王は制式に、韓、趙、魏の三氏を諸侯と認め、静公2年(BC376年)韓、趙、魏の三氏は静公を廃し、晋は滅亡した。韓、趙、魏が国を建てることができたのは、張孟の存在があったからこそできたことである。このような大功を立てたにもかかわらず、張孟は身を退き、自らを智者と称することもなかった。「前事不忘、后事之師」とは、過去の人々が行ったことを忘れなければ、今後の事に対処する時にも、助けになるということなのである。

 なんだか元総理がまたしても現総理を批判した発言(の続き)をしているようである。そんなに喋りたきゃ、総理を辞めなければよかったんだよ。それとも自分で撒いた種を、他人に刈り取らせるわけ。そういうのを私の言葉では「たつ鳥後は泥だらけ」と言う。

 まあいいや。私には関係ないよ。永田町の人々が一般市民のことを知らないで好きなことを吹いているのと同じで、私も永田町の人についてはもう興味もなくなりつつあるから(でも次の選挙には、絶対行くけどね)。私にとっては、風邪と花粉症の方がはるかに大きな問題なPhotoんだからね。

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2009年2月17日 (火)

唇亡歯寒

 話はいまからずうっと前、中国・春秋時代のことである。晋という国がござった。また晋の南には、虞と虢という二つの小国がござった。この両国は土地が続いており、祖先が同じ姫性であったことから、大層仲良く付き合ってござった。ところが虢の国君は傲慢・横柄な男で、しばしば晋との国境周辺でごたごたを起こしており、晋を悩ませておった。

 晋の献公はこれを見て、「虢は獅子身中の虫じゃ」と思い、ある日大夫の荀息に尋ねたのじゃ、「一発、虢をぎゃふんと言わせてやらんといかんと思うのじゃが」と。けれども荀息は「今はあきまへん。虞と虢の仲が良すぎます。虢を叩こうとしたら、虞が絶対助けにきますで。この両国が力を合わせたら、なかなか強うおまっせ。わてらが勝てる保証はござりまへん」と答えた。

「じゃったら、今のまま、虢の横暴を見て見ぬふりして我慢せんといかんのか?」という献公に、荀息は答えた。「そんなこともおまへん。虢の国君は遊び好きと聞いとります。別嬪さんでも贈って、夢中にさせたりなはれ。そしたら隙もできまんがな。そこを叩いたらええんでないかい?」 晋の献公は、早速荀息の言う通りに動いた。すると虢の国君はさっそく別嬪さんに夢中になり、遊び狂うようになって、国政を省みなくなってしもうた。

 当然この間に晋は戦支度をする。ところが荀息は続いて献策した。「うちが虢を攻めとる間に、虞が援助できへんようにしとかにゃあきまへん。虞の国君は思慮浅く、小利を追う人間と聞いとりま。ほんじゃけ、きれ~な玉と千里の馬でも贈って、ご機嫌をとっときなはれ。その上で虢を攻めるときに、道を借りるんだす。ほんなら虞も虢を助けられんです」

 すると晋の献公がまたしても聞いた。「虢に別嬪さんは贈った。そろそろどつきに行きたいけど、どうやったら大義名分が立つんねん?」 すると荀息はさらりと言ってのけた。「簡単だす。人を送り込んで虢の北方で騒ぎを起こしますねん。ほしたら虢は怒ってわてらを非難する使者を送ってきよります。もちろんわてらは知らんふりをするんだす。虢討伐のネタやこ、なんぼでも探せます」

 献公はこの献策を取り上げ、その通り実行した。案の定、虢から問責の使者が来たけど、それを無視して献公は荀息に贈り物を持たせて虞に派遣した。虞の国君は欲ぼけ男で、「こりゃあ、すげえ! この玉はあんたとこの国宝じゃろう。なんでわいにくれるんかな?」。けれども荀息はしゃれっとして言った。「いやあ、うちとこの国君は前からあんたと仲ようしたがっとってん。これはほんの近づきのしるしじゃけん、受け取っといてちょうだい。その代わりちょっと言うことを聞いてほしいんじゃけど。虢の国君がしょっちゅうちょっかいをかけてしょうがないねん。それでちょっと文句をいいに行きたいんじゃけど、道を貸してくれまへんか? またお宝をあげるさかいに」

 このとき、虞にも賢人はいた。大夫の宮之奇である。彼は虞の国君に「絶対やめときなはれ。虢とうちとは昔から、唇と歯の関係にある国やさかい、虢が亡んだらうちかて裸や。俗にいう「唇亡歯寒(唇亡んで歯寒し)」だす。うちだけで生き延びることはできへんで」と進言した。ところが欲ぼけ虞公は「晋の国力は虢の十倍じゃ。今度は晋と仲良うするから、屁でもないわい」と受け付けなんだ。宮之奇は何度も虞公をいさめたが聞き入れられなんだんで、一族を連れてさっさと虞から逃げ出してしもうた。

 周の恵王の19年(BC658年)、晋の献公は里克と荀息を派遣し、三年後(BC655年)にとうとう虢を滅ぼしてしもうた。里克は虢で手に入れた美女やお宝の一部を虞公にプレゼントし、数日休息したいと虞の国都の外に駐屯した、それからほどなく、虞の宮衛が虞公のところに駆け込んできたんじゃ。「晋の大軍が攻め寄せて来ましたぞ。もうど~にもならんです」 ここでようやく虞公は夢から覚めたけど、もう国は晋の大軍に蹂躙され、消えてしまったんじゃそうな。

 中国の本にはこれに関して、「何もしないのに、天から美味い話が降ってくるはずがない。もしも美味そうな話が降ってきたら、陰謀か罠だと思え」なんてありがたいことが書いてあった。

 これは『左伝』にある有名なお話で、「唇亡歯寒」という言葉も有名な成語になっているし、このとき晋が使ったのが、後に『三十六計』にも取り入れられた「假道伐虢」の計でございます。まあ唇と歯は仲良くしなければねえ。人は一人で生きていられるものじゃあないから。

 盟友の財務長官が辞任したけど、総理は大丈夫なのかなあ? どちらが唇で、どちらが歯か知らなPhotoいし、このお二人が虞と虢みたいな関係ではないと思うけれど、なんとなく「唇亡歯寒」の故事を思い出してしまった今日であった。

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2009年2月16日 (月)

何でも実験癖・19 ~これぞ天下第一粥じゃっ!!~

 お陰さまで、拙著『あなたにもできる! 超人の動き ~動きのエネルギー革命~』、増刷が決まりました!動きを言葉で説明することの難しさから、今回はDVDをつけていただきましたが、これでいくらかの欠点は改善できました。

 さらに細かい感覚(これはあんな感じ、こんな感じの感覚ではなくて、現実に動いたときにどう感じるかの感覚です)は、一番簡単なのは「身体のアクセス」という方法が最も簡単な方法ですけれど、この方法では限界があるので、どうしても理論で喋るようになります。

 そういえば以前、飛脚の走りを研究していた時、ほんの僅かでも手がかりがほしくて、様々な文献や資料を当たりました。日本史を専攻した方の協力や、その人の関係の大学で研究している人たちにも資料提供を仰いだりしてみました。

 その時に痛感したのは、僅かでも資料が残っていることが、とんでもなくありがたいことだということです。昔の人の身体運用には「口伝」が伝えられていることが少なくないのですが、現実にその人のやった動きは高度すぎて伝えられていなくても、曲解されたり誤解されたりはあるものの、言葉だけでも残されているのはありがたいことです。

 というのは、こちらの身体がそのレベルに近づいたとき、残された「口伝」が道路標識の役割をしてくれるからです。もちろん「口伝」について解釈することばかりが先走ると、現実とはかけ離れた方向に行ってしまうことも少なくありませんけどね。

 幸い私は頭でも考えますが、まず何よりも経験を大切にしたい方ですから、何度も身体を壊しながらでも、伝えられた動きを再現する努力をします(他人様からみたら、「いい歳こいたおっさんが、何やってるんだろう?」と思うでしょうね)。その過程で様々なものが手に入ってくるのです。すると現代的な「口伝」の解釈で怪しい部分も見えてきたりするのです。

 これに対して文献だよりになってしまうと、どうしても現実が見えなくなってしまったり、夜郎自大になってしまったりするような気がするのですが、いかがなものでしょうか。私は出来るだけそういった陥りやすい罠に嵌らないように、今も花粉症で「かふん! かふん!!」とくしゃみしながらも研究を続けています。

 今後ともよろしくお願いいたします!!

 ということで今日の午後からまた急に寒くなってしまった。こういった気温の急変は健康の大敵なので、身体は内側から暖めるに限る。それには私の場合、適度のアルコール飲料と、その後のお粥である。今年になって一念発起して、夜のお粥を始めたが、こいつはとても身体に好影響を与えている。

 で今の時期は牡蠣のシーズンだから、牡蠣を使ったお粥ということで(魯山人風の牡蠣雑炊はすでに紹介しましたね)、『天下第一粥』というなんとも凄い名前のお粥に挑戦してみた。例によPhotoって中国から購入してきたテキストの紹介から始めたい。

 材料はお米カップ1杯、アミ(海で取れる小さいエビですな)適量、水カップ10杯、キャベツ適量、牡蠣50g、刻み葱少々、豚ミンチ肉25gで、調味料などとして植物油大匙1杯、お塩、化学調味料各小匙四分の一、紹興酒、醤油各小匙半分、胡椒少々といったところである。

 作り方は、①まずお米をとぐ。そのあと30分間、水に浸しておく。それを鍋に入れて水を10倍加え、強火で加熱。沸騰したら弱火にして、蓋を三分の一ほど開けて45分ほど煮込む。 ②その間に牡蠣の剥き身を洗い、よく水分を切っておく。豚ミンチ肉は塩、化学調味料、紹興酒、醤油、胡椒を加えながらフライパンで色が変わるくらいまで加熱しておく。 ③豚ミンチ肉の準備ができたら、牡蠣と一緒にお粥の中に入れ、さらにアミ、キャベツを入れて十分撹拌し、中火で10分間煮る。 ④最後に刻み葱を加えて完成、なんだそうである。

 ここでまず私は頭を抱えた。というのは弱火にしろ何にしよ、蓋を三分の一開けて45分も加熱したら、お粥ではなく糊になってしまうのではないかと言うことである。別に病気でお粥を食べているわけではないから、どろどろにしたのではあまりにも食感がよくないのではないか。で、加熱時間はいつもくらいにすることにした。ついでに隠し味としてほんの少量生姜を刻んで入れることにし、調味料も適宜、量を変えることにした(このあたりはいつも通りのいい加減さである)。ついでに紹興酒を切らしていたので、普通の料理酒で代用することにしPhoto_2た。

 まず材料である。右上から植物性油、反時計回りに胡椒、お塩、料理酒、化学調味料、葱、キャベツ、牡蠣(殻つき)、干しアミ(干したほうが旨みが多いような)、お米、豚ミンチ肉である。

 最初にまずお米(5勺=半合)を洗っておく。なにしろ30分間、水に浸しておかねばならないから、何をおいてもこれが最初だ。そして缶ビールをいつものようにプシュっとやって、あとは酒を飲みながらの調理になる。だいたい男の料理なんてこんなもんじゃないのかなあ。

 Photo_3次に面倒なのは牡蠣である。殻つきだったので、「牡蠣うち」をやっておかねばならない。今が牡蠣の旬だから、ここは意地でも新鮮なのを(産地直送で…なんと贅沢!!)使いたかった。ここでは左手に軍手をしていないが、本当は軍手をしていたほうがいい。何かの拍子に牡蠣うちナイフが滑って、左手を刺すことがよくあるからだ。私も今シーズン、すでに1度やっている。Photo_4

 すると中からプリプリの牡蠣の身が現れるんだなあ! さすがに今が旬だけのことはある。これで1年ものだと思うから、2年ものなんか、もっとプリプリだと思うよ。このまま生で食ってしまいたいくらいだが、ここはぐっと我慢。今回の目的は、天下第一粥を作って食べることである。テキストには50gなどとチンケなことを書いていたが、私は120gは使った。牡蠣がよく太っているので、50gなどというと、ほんの2個ぐらいしか入らなくなるからでもあるが。

 生きた牡蠣をうつと、入れ物に入れておいたらどんどん水分が出てくる。これは丁寧に取り除く(ちょっと惜しい気もしたが)。こんなところは妙にテキストに忠実なのが私の料理である。首Photo_5尾一貫していない。でも美味ければそれでいいのだ!!

 その次には野菜を刻んでおく。キャベツは小さめの短冊に、葱は普通に刻む。よほど白根のぶつ切りを入れてやろうかと思ったが、これは思いとどまった。葱は葱でまた別の日に楽しみたい。

 次にPhoto_6豚ミンチ肉を炒める。フライパンに目分量で大匙1杯くらいの植物油をいれ、豚ミンチを60g入れ(テキストの倍以上である。私が肉が好きなのだから仕方がない)、塩、化学調味料、醤油、料理酒、胡椒などを加えながら炒めるのだが、なかなかいい香りがする。このまま食ってしまいたい欲求に駆られるが、ここもぐっと我慢である。とにかく今回は天下第一粥という大それた名前の粥を作らなければならない。 なお化学調味料は私の好むところではないPhoto_7ので、大幅に量を減らした。その他はテキスト通りの量である。

 鍋を火にかけ、強火で加熱しているうちに噴いてきたので、テキストにある通り、蓋を三分の一開けて弱火で加熱し続ける。そのうち(最初に火をつけてから約25分後)適当に粥らしくなってきたので、牡蠣と豚ミンチ肉を入れる。このとき、ほんの僅か(1~2g)生姜を刻んでいれておく。そして少しの間(5~6分)蓋をして中火で加熱し、キャベツとアミを投入する。キャベツは80gくらいつかPhoto_8ったかな。干しアミは入れたときは鍋の表面を覆うくらいだった。それでキャベツに熱が通りやすいように混ぜておく。

 それから4~5分弱火で煮込むと、どうやらそれらしくなってきたので、刻み葱を投 入して火を止め、蓋をして1~2分蒸らしておく。

 あとはこPhoto_9れをよそおって食べるだけである。どうだ、天下第一粥!(ちなみに、どうして天下第一なのか、理由は全然知らない) テキストと比べれば、写真の腕が劣るので今一の外見だが、まあまあの味であった(母の判定では☆12個)。しかしながら私の舌は、一味足りないことを見抜いていた。それは牡蠣には焼き海苔あるいは味付け海苔の刻んだのがよく合うということである。Photo_10

 そこで急遽、味付け海苔を出し、これを刻んで振りかけたが、これでまたぐっと味が良くなった。これならば☆12個でもいいんじゃない?

 日本で一般的なお粥というと、白粥で、いかにもお腹から力が抜けていきそうな感じがあったりするけど、ここまであれこれ入れたら、なかなかにパワフルなお粥でございますぞ。食後、明らかにパワーがみなぎってくるのがわかる。それでいてお粥の「消化しやすい」という長所を取り入れているので、消化器官に負担をかけない。これはなかなの逸品である、と自画自賛しておく。

 なおこれは中華なのだが、留学生のLさんに聞くと、「中国人はこんな贅沢なお粥は食べていない」という答えだった。でも原典は中国の本ですぞ。まあなんでもいいんだけどね。美味しくてPhoto_11身体によければ。

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2009年2月15日 (日)

暇つぶしに墨翟を読んでみた

 日曜日だっぴゃ!! 花粉が舞い上がっている気配がするので、朝寝坊をしてしまって、できるだけおんもに出ないように心がけた。朝昼兼用を食べて、お魚(とと)の水換えをして、暫く格闘技のビデオを見たりして、仕事場にでかけた。

 昨日、ダウン寸前のウルトラマンのカラータイマーのように、ピコン、ピコンし始めた蛍光灯を交換して、メールを確認したけど新着がなくて、安心したのはいいけどブログのネタがない。こういう時にはアトミック・カフェで糖分を補給するに限る。補給ついでに、日ごろ読む時間が足りないものを斜め読みする。

 読んでいるうちに、ネタを思いつくことがあるし、新しいことがわかったら、紹介してもいいし(でもブログに紹介して忘れることは山盛りある。書いたら安心して、忘れてしまうのかな?)。昔、走っていた頃でも、競技会なんかで走っている最中は、他人の息遣いや足取りはもちろんのこと、細かな変化まで観察して作戦を立てながら走っていたものだけど、ゴールインした瞬間にその記憶が飛んでしまうという経験をよくした。

 後になって、人は諦めたり、安心した瞬間に血糖値が下がるという現象があると聞いて、ははあ、じゃあ私も血糖値が一気に低下して、記憶がなくなってしまったように感じていたんだと、勝手に納得してしまったが、みなさんにはこんな経験はありませんか。私にはこんな経験は山盛りありますよ。

 だから頭を使うときには(頭突きではない)糖分補給を忘れずに、なんてことを心がけて、太ってしまったことがあるくらいだ。最近では糖分を補給しすぎたなと感じたら、プーアール茶を意識的に飲むことにしているけれどね。私のような甘いものが苦手だった人間でも、プーアール茶を日常的に飲むようになってからは結構甘いものが食べれるようになった。

 あ、もちろんプーアール茶といっても日本の市販のではなくて、莫さんのところから定期的に仕入れたものだけどね。だいたい毎日500ml以上は飲んでいると思う。練習中にも飲んだりするから、その消費量はかなりのものだと思う(家族全員で愛飲しているが、私の消費量が最もおおいのではないか)。

 いいモノは躊躇わずに導入する。悪いものは躊躇わずに排除する。できるだけ先入観なしにこれを行う。だからいつも愛用しているものでも、「今日はなんとなく嫌な感じ」だと思ったら、その日はちょっとお休みしたりする。まあ一種のわがままなのかも知れないなあ。でもお陰で体調が狂っても、立ち直りが早いよ。

 さて今日のアトミック・カフェでは、朝昼兼用を食べていたので、スパゲッティ・イタリアンにホット・ココア(ホットココアは私の定番である)としゃれ込みながら、『完全図解・諸子百家』の墨家のところを読んでいた。最近なんやかやと忙しく、気がむかないと何週間も間が空いてしまうことがある。そこでアトミック・カフェで一人のときは、こんなものを読むことにしているのだ。

 墨家は実に興味深い思想である。現代には残っていないし、それでいて百家争鳴の春秋戦国時代には、儒家とならんで二大思想と言われたもので、「楊朱、墨翟之言盈天下(楊朱、墨翟の言、天下を盈う……《孟子『藤文公下』》)とか「孔、墨之弟子徒属、充満天下……孔、墨子の弟子属、天下に充満す《呂氏春秋・有度篇》」、「世之顕学、儒、墨也……世の顕学、儒、墨なり《韓非子・顕学篇》」などの記述が残されている以上、儒家思想と双璧をなすものであったろう。

 なのに今や陰も形もない。これは不思議だということで、特に私はその滅び方に興味を持っていたものだからである。滅びを知ることは、滅びの予防をすることにつながる。身体運用でも似たところがあるが、初めて取り組むわけのわからないものなど、正解を求めようと狂奔するよりも、間違った動きをすべてやり、それはやってはいけないのだということを覚えれば、あとには正解しか残っていない。私はこういうやり方をよく取り入れる。

 確かに最初は回り道のように思えるけれど、2~3年経過すると、最初正解ばかりを求めていた人が伸び悩んだりするのに、こちらはどんどん伸び続けていて、あっさり逆転してしまったりしてしまうから、望ましくないことを知っておくことは大切だと思う。特に指導をするようになると、望ましくないことをたくさん知っていることは、指導上の武器になる。引き出しがたくさんある人は、指導だってバラエティに富んでいて、いろんな人のいろんなケースに合わせることができるからだ。

「大器晩成……(大器は晩成す《老子・第四十一章》)」という言葉があり、なかなか上達しない人に対する慰めのように使われることがあるけれど、ただゆっくりとやっていれば大器になれるのではなく、ゆっくりとではないと出来ない経験をたくさん積んでいれば、大成する可能性が高いという意味だと、私は解釈している。そのやり方の一つが、ほとんどの失敗を経験して、それを繰り返さないようにすることだと、私は勝手に考えている。もちろん《老子》は超難解な哲学書なので、いろんな解釈があって、今も研究が続いているから、これが絶対的に正しいとは考えていないけどね。

 さて墨家の滅びであるが、この教団はトップが矩子と呼ばれたらしい。そして非常に強い絆で結ばれており、矩子の命令ならば「死ね」といわれたら、あっさり死ぬほどのものであったらしい(なんとなく墨家が自らは侵略戦争は絶対にしなかったけれど、守ることに関しては非常に強かったというのが納得いくみたいな存在である)。矩子は初代が墨翟その人であり、二代目が禽滑厘(本ブログの『戦国の竜虎』に登場する禽滑のモデル? 何せ一文字しか違わないし)、三代目が孟勝であったといわれているが、その三代目あたりから墨家集団に変化が生じたらしい。

 墨家も諸子百家の例に漏れず、自分の学派で天下を治めようという野望を持った集団である。そして他人を自分と同じように愛せ(兼愛)という根本的思想のもとに、他国を攻めないが、攻められたときには大変な戦上手で、見事に敵を防ぎきったことから、戦国の諸侯は墨家を国家防衛のために登用することになる。

 本来、墨家教団は「伝教……墨家思想を遊説して歩く」「講書……教材を整理する」「労働……食料の生産や城を守るための戦闘を行う」の三つの班に分かれており、始祖・墨翟は弟子を教えるときに、「神様はすべてをお見通しだ。良い行いする者には良い報いが、悪い行いをする者には、悪い報いが」と、まるで我々が子供の頃されたような指導で、厳しくしつけていたのだが、それが三代目の孟勝の代になって、「寧為玉砕、不為瓦全」という言葉が残されたように、防衛戦闘に重きがおかれるようになっていく(諸侯の望みもそこにあった?)。

 これはPhoto_2たとえ自分は死んでも、城を守れという教えだから、墨家にたいする需要は大きくなっていく。そのような状況の中で、最初は活動していた範囲も、魯(墨子の私塾があったと言われている)、斉、衛、宋、楚、越などといった中原も東南地区が中心(墨翟の頃)だったのが、戦国の後期に入ってくると、秦や中山でも活動を開始して、ほぼ中国全体に及んでいる。

 このような中で墨家教団が巨大化していき、巨大化すると派閥争いができ(それは儒家でも同じことだが)、南方派、相里勤派、相夫派の三派に分かれて勢力争いと、同時に矩子の地位を巡っての争いも発生する(この状態でもまだ儒家との勢力争いは続いている。よほど争うことがお好きなようだ。すでに兼愛の精神は消えているように思うが、「兼愛思想」を押し付けることに狂奔してしまうと、人の行動は兼愛的ではなくなる好例かと思う)。

 そういったごたごたを抱えていながらも、戦国末期までかなりの勢力で生き延びるのだが、BC221年に秦の始皇帝が天下を統一したことによって、状況はそれまでとはがらりと変わってしまう。統一国家秦にとって、墨家思想は大変に好ましからざる思想であったのだ。

 というのも墨家思想は、秦以前の封建社会を維持するためには大変都合のよものだったのだが、秦は始皇帝一人が統べる郡県制の国である。そのような国で、兼愛だの非攻だの天志・明鬼だのということを言うのは、はなはだ有害と判断されたのである。これによって「挟書之律……書物を私蔵するのを禁じる法」や「焚書坑儒」の対象とされ、非常に大きなダメージを蒙った。

 漢代になってこのような規制は緩むが、ここでは墨家の体質が再生の妨げとなってしまった。というのは墨家は「教団」を大切にし、個人で動くのではなく、必ず集団で活動していた学派だったので、一人や二人がいても、墨家思想を復活させることは難しく、まして天下を統一された後では、城を防衛することに長けた集団にたいするニーズがなくなっていた。そうして歴史の闇に消えていったのではないかという。

 読んでいて、「なかなか……(これは興味深いときの私の反応)」と思った。中でも墨翟の出自の紹介が非常に面白かった。だいたいこの人は、孔子よりも少し後(紀元前4世紀中葉。BC439~BC393頃)、戦国時代後期の人だそうだが、出自には諸説ある。楚、宋、魯などがかねて言われてきた出生地だが、20世紀になって「墨翟インド人説(8方面からの考察なんだそうである)」が発表されて騒ぎになったことがあるようだ。

 いずれにしても、古代中国でもひときわ異彩を放つ思想であって、興味深いことは間違いない。(※ 『墨攻』という言葉は映画のタイトルにもあるが、『墨守』という言葉は戦国時代の城Photoを「善守」する方法として残されている)

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2009年2月14日 (土)

人の情

 2009年のバレンタインデーである。であるにもかかわらず、今日の私は怒っている。いや、チョコレートがもらえないからではない。全盛期に比べれば少ないかもしれないが、すでに幾つかいただいたからである。(ありがとうございました!)

 怒り狂っている原因は、カルデロンのり子さんの件である。両親の不法滞在で、2週間以内に強制国外退去だというではないか。なんとご両親は16年間も日本で暮らしているというではないか。そしてのり子さんだけは日本で暮らしてもよい、などというわけのわからんことを入国管理局が言っているという。13歳の女の子にそんなことができるわけがないだろうが。これからがご両親の助けが一番に必要になるかもしれないというときに、それはないだろう。

 私は思う。16年間日本で問題を起こさず、地域にも溶け込んで暮らしていたこと自体、彼らの身元を保証する最大の事実ではないのか。生まれて13年間、日本で日本の子供と同じように育っていれば、それは日本人と呼んでもかまわないではないか。でも「子供さえいれば日本でくらせる」と考える外国人が増えると困るから、強制的に国外退去させるという理由もあるようだ。でもそこを機械的に決めるのではなく、その人たちの暮らしぶりや、周囲の人たちとの関係などを踏まえて判断を下すのが、「法律のプロ」の仕事ではないのか。法律で決まっているからと機械的に決めるのなら、別にプロでなくても素人でも、子供でもできることだからね。

 確かにあまり感心しないことをやっている外国人がいることも事実だ。そういった人たちに厳しく法を適用することは大切だと思う。でも日本人社会に溶け込んで暮らしている人を裁くために、子供にとっては行ったこともない「外国」て強制送還などというのは、どう考えても、血も涙もない所業としか思えないのだが、いかがなものだろうか。

 法は何のために出来たのか。まさか為政者の都合のためにできたなんて、今から2000年以上も前の法家思想にまで立ち返って考える必要があるのか? 法は人が人として幸福に生きるためのものだ。それが現代の法解釈でなければならない。法が人の上に立ち、法で決まっているのだからなどと、権力を振り回されたのでは、人はすでに法の奴隷に成り下がっていることになる。

 本来、法などはなかった。人がよりよく生きるために、人の脳みそから誕生したものでしかない。だったら人の情けまで否定するような適用のされかたをしてよいものだろうか。いいはずがない。逆に法で人を縛り、国家(為政者)のために法を使ったものは、有名どころはどんな最期を迎えたか、大臣や役人になるくらいの人間なら当然知っているだろう?

 変法という画期的な政策で、秦という国に確固たる地位につけた商鞅は、自分の立場が危うくなった時に、自分が作った法によって函谷関を越えることができず、魏の国にやっと逃げたと思ったらそこで捕まり(その前の戦で魏の公子を騙して勝っていたから恨みをかっていた)、秦に送還されたのち、車裂き(いわゆる八つ裂き)の刑に処せられているし、秦の始皇帝に法家思想を教えた韓非子は、外国人追放令がだされたときに、秦の牢獄で同門の李斯が差し入れた毒を飲んで自殺している。

 その李斯も始皇帝亡き後、趙高との権力闘争の中で趙高に謀られ、一族皆殺しという目に遭っている。これが法治国家のもととなった法家の始祖たちの最期である。だから法はどのように運用されなければならないかはわかるはずだ。法が人の主人になってはならない。人のために法が存在するということが最も重要な点だ。

 確かに「人の情け」と「法」という規則の両方を考えて、できるだけ矛盾なく運用するのは難しい面もあるだろう。でもそれが家族を引き裂いたり(家族が反目しあっている場合は別として)、人の情を踏みにじるようなことをするのは、見ていて許せない気がする。

 私なんかだったら、今、政治の世界で、元総理が現総理を非難して、大変な騒動になっているらしい。どちらが正しいかはさておいて、クレームをつけた元総理という男こそが、今の政局の大荒れを生み出した最大の犯人じゃないかと思っている。後の総理だって、この男の尻拭いができないくらい目茶をやったわけでしょ。

 だからここで初めて「喧嘩両成敗」を適用したいよね。元総理から現総理までの4人の総理大臣経験者全員の財産を国庫に没収して(当然、景気対策だよね。きっと少しは国民が助かると思うよ)、着の身着のままでカルデロンのり子さんの家族の代わりに、フィリピンに追放したらいい。そこで好きなだけ言い合いでも、どつきあいでも、好きなだけ喧嘩していればいい(フィリピンが迷惑か?)。どうせ年寄りだから、現実に着の身着のままでの喧嘩になったら(本来、男同士の喧嘩なんてそんなもん)、大して人は迷惑しないからね。政治の場で、大金を動かせる立場だから、国民に影響が出たりするんだから。

 とにかく! カルデロンのり子さんの一家が、希望している形に決着しない限り、なんとなく心が落ち着きそうにない。13歳といったら思春期の真っ只中だ。いろんなことに多感な年頃で、こんな辛い目を見させるのは、どうにもやりきれない。

 どんな人にも生命はある。そしてその生命は、人生経験を通じて、それぞれの人の心を形成していく。大好きな中島みゆきさんの『命の別名』という名曲にも

「命につく名前を心という 名もなき僕にも 名もなき君にも」 というフレーズがあるが、きっとこんな人の情を無視した決定ができる人には、自分にしか「心」はないと考えている冷たい人だろうと思う。でも心は誰にだってある。自分にしかない考える人(結構たくさんいるんじゃないかと思うけど)には、人の心が傷ついて血を流しているのが見えないんだろうね。(「私は自分を客観的に見ることができるんです! あなたとは違うんです!」と噴いた前総理もいたっけ。自分が客観的に見えるのはけっこうだけど、人の心や思いは見えたのかな?)

「触れようとされるだけで傷む人は火傷してるから 通り過ぎる街の中で そんな人を見かけないか? あのささやかな人生は もしかしたら僕に似ている あのささやかな人生は もしかしたら君だったのか」 (中島みゆきさん『瞬きもせず』) こんな名曲があることを、法律のプロや政治家の人たちは知っているのだろうか。

 今の日本には、少し周囲を見渡すだけで、こんな人たちはいくらでもいる。でも「もしかしたら僕に似ている」「もしかしたら君だったのか」と、人の不幸を自分の問題として考えられない人たちが物事の判断しはじめたら、世の中はどんどん冷たく、ざらざらしたいやな雰囲気しかしなくなる。

 ああ! なんとかしてやってよ! それが法の正しい運用、正しい判断ってのを、たまにはやって見せてよ! 本当に昨夜から、気分が悪い!

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2009年2月13日 (金)

春なのに……

 なんと昨年より2週間も早く春一番が吹いたのだそうである。やれやれ、今年は牡蠣の一番おいしい時期が短くなってしまったみたいな気配だ。というのも我が家では基本的に牡蠣は生で食べるからである。海水温が上がると、どうしても安全面で気にかかるので、生食はやらなくなる。生が一番美味しいと感じている私からみれば、これは許せないことだ。

 それがなんということであろうか、先日から猛烈な眠気が襲ってき始めた。この時期の猛烈な眠気というと、私の場合完全にあるモノの警鐘である。それは「か・ふ・ん!!」。どうやら私の身体は、全身で杉の花粉に対するアレルギー反応を行っているらしいのだ。だからこの時期はやたらと疲れやすく、やたらと眠気が襲ってくる。

 ということは昨年よりもさらに少し早いめに、杉の花粉が飛び始めているのである。おかげで最近毎晩、爆睡である。起きておこうと必死になっていても、知らない間にすやすやとお眠りになっている。幸い先日耳鼻科に顔を見せてきたので、一応、花粉迎撃の準備はしているのだが、危ないところであった。もう少し遅かったら、先に症状が出ていたかもしれない。ところがお医者さん曰く、「うん、これは花粉ではなくて、風邪でしょう。喉が赤い」。

 ええっ? 今年の風邪は馬鹿でもひくの? そういえばなんとなく最近声が出にくいなと思っていた。昔は大音量には自信があったのだが、ここのところ私の声量は至極穏やかである。それにあまり大声を出さなくなったら、自然に出なくなった。あれも習慣なんだろうね、きっと。

 生まれて初めて花粉症になったのは忘れもしない、競技生活の現役を引退した翌年のことであった。私は自分が花粉症などになるとは到底信じることができず、風邪の延長で、この風邪の洟はやたらとたくさん出て、長引くなあくらいにしか思っていなかった。そのうちティッシュの消費量が爆発的に増え、一晩で一箱使っていたりするうちに、その年の花粉の時期は終わってしまった。

 翌年のことである。寝ていて呼吸ができなくなり、「これは死ぬかも」と思って、姉がかかっていた耳鼻科に駆け込んだ。すると高齢の優秀なお医者さんが、丁寧にご説明くださり、「あなたはアレルギー性鼻炎ですよ」と宣告してくださった。当時の私は魚の鼻上げ状態だったので、「頼むから説明を後回しにして、なんとかしてくれえ」と心の中で喚いていたが、その先生も高齢で引退され、いまお世話になっている耳鼻科へと通いだしたのである。

 春といえば冒頭に書いた『春一番』であって、これは私の世代ならキャンディーズである。最近ではさすがに滅多に聞かなくなったが、それでも時々思い出したように聞きたくなったりする。でもそれ以上にこの季節(ほんとはもう少し後なんだろうけど)にお似合いなのは、『なごり雪』であったり、『春なのに』だったりする。

『春なのに』は柏原芳恵さんと、大好きな中島みゆきさんが歌っているのが有名だけど、確かに柏原さんのは大変歌がお上手なのだが、「みゆきすと」の私としては、中島みゆきさんの、何気ない歌い方の方が好きだったりする。だって好きな人と会えなくなる切なさを歌った歌だよ。私的には、技巧は抑え目にしていただきたい。

 流れる季節たちを 微笑みで 送りたいけれど

 はい。まったくその通りでございます。私も季節の移ろいを感じるのが大好きですからね。そして枯葉が次第に新芽に変わっていくような気配が、確かに春は感じられるからねえ。だから笑顔でいたいんだけれど…

 春なのにお別れですか? 春なのに涙がこぼれます

 うんうん。私も春は泣いたりすることがある。でも理由が花粉だったら、色気がないよねえ。目が痒くて痒くて…

 春なのに 春なのに ため息またひとつ

 ごほん、ごほん! いやむやみに深い呼吸をしたりすると咳き込んだりするので、これまた色気がちっともない。

 花粉よりもさらに怖いのが黄砂である。こいつが喉にからみ始めると、あきらかに炎症のひどいのが起こって、熱は出る、頭痛がする。もう何もする気になれなくなる。本当にこういった時には、エアロックのついた、外気がまったく入ってこない、宇宙船のような家に住みたくなる。

 北京とか韓国なんか、明らかにこの季節の死亡数が増加するそうだから、そうとう強烈な害が出ているんだね。私も当たり前だと思うよ。そこで練習するにしても室内が多くなるから、気分転換がやりにくい。

 まったく春は、生命の息吹が感じられる季節のはずなのに、花粉と黄砂の二つがあるばかりに、屋外へ出たくなくなってしまう。こまったものである。ああ… 春なのに、春なのに、ため息また一つ……

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2009年2月12日 (木)

いやあ、まいった、まいった!

 人間ですから、いろんなことがあるものです。というのも平野早矢香選手、昨日はちょと残念でした。でも私は、彼女が上のレベルを目指して、いつも自分を変えようとしているのを知っているから、結果的に残念だったとしか思わない。だって日本チャンピオンになっても、どんどん自分を変えていこうとしているんだよ。その過程で、ちょっとした失敗があったとしても、それが果たして失敗といえるのかどうか……

 普通はチャンピオンになれば「守り」に入ってしまって、自分を大きく変えようとしなくなる人が多い中で、いつも上の次元を見て頑張っている人は本当に凄いと思う。自分を変化させるというのはそんなに簡単なことではないから。どこか一箇所を変えると、全体としてのつりあいは崩れているからね。でもそれを恐れていたのでは、いつまでたっても自分を変えることはできない。でも早矢香ちゃんは、どんどん変えていっているからね。

 この6年間で5度の日本チャンピオンに輝いて、1度だけ落としているときだって、大きく変身している途中で、運悪く間に合わなかっただけだから(私が周囲の人に聞いたところでは)。でも最終目標とか、「ここは」と思っているところでの敗北以外は、負けじゃあないからね。特に私は「結果プラス思考」だから、自分が目指したところで結果を出すための失敗ならば、ぜんぜん失敗だなんて考えていないもんね。

 もちろん人間的に私よりはだいぶ大きい平野さんは、当然そんなことはわかっていらっしゃるので、今はただ「頑張って」というだけですね。目的地に至るまでの様々な現象は、決して勝ち負けではありませんよ。とにかく頑張ってね!

 ということで(何が「とPhoto_11いうこと」なのかわからないけど)、実は随分前から悩んでいたことがある。それは『戦国の竜虎』がらみである。一応司馬遷の『史記』をベースに書いていたのだが、司馬遷の記述に従うと、魏(『三国志』の魏ではなく、春秋戦国時代の魏でござります)の国都が安邑というところになってしまう。

『史記』によれば、馬陵道で 龐涓(ほう・けん)が孫臏(そん・びん)に敗れた翌年、今度は秦の商鞅率いる軍に大敗を喫して、結果恵王は安邑から大梁に遷都したということになっている。この説を信用すると、安邑から大梁に遷都したのは、BC340年ということになってしまう。

 ところPhotoが1972年だかに発掘された『孫臏兵法』によれば、孫臏は魏の国都は大梁ということになっている。また ストーリー展開を考えていくと、確かに安邑が都だと、ちょっと作戦行動が困難と思える場面がいくつか現れてきたのである。

 例えば第六章『囲魏救趙』だと、趙の国都・邯鄲を龐涓が取り囲むのはまあいいとして、それを打ち破るために孫臏が斉の大軍を率いて、遠路はるばる安邑まで攻め上るのは、少し難しい。なにしろほぼ中原の端から端まで横断しなければならなくなる。途中には魏だけでなく韓もある。これはなかなか打てない手だ。

 ついでのことに龐涓を迎撃した桂陵の戦だが、これはもし龐涓が大梁に帰還する途中だったとすると納得しやすい場所である。だいたい安邑からだと、邯鄲攻略すら簡単ではなさそうに思えてしまうし。

 さらにこれが第十四章以降数章にわたって、公孫閲や龐涓の策に落ちた孫臏は、斉にいられることができなくなり、韓の国で活動する(とても苦労する)ことになる。この時龐涓は孫臏を手に入れるために様々な作戦行動を起こしすのだが、これも魏の国都が安邑にあるより、大梁にあったほうがなんとなく納得できる。

 なによりも孫臏兵法に、魏の国都は大梁と記されているので、私が深く信用していた『史記』の記述を無視して、魏の国都は大梁ということで話を進めていきたいと思う。そういえば宮城谷昌光さんはBC361年遷都としていたようだし(畏友I先生のご指摘)、魏の方針が始祖の文公の西進から(これを補佐したのが呉起…兵書『呉子』で有名な兵家)、武公以降は東進に変わっていったようだし(『戦国の龍虎』登場の恵王は、三代目で武公の次である)、この作品で最初に龐涓が攻めていたのは楚であった。

 その次に攻めていたのは趙であり、趙王を脅して中山国を出せと言っていたりする。こんな飛び地をどうするのかと思ったりもするが、これは「遠交近攻」的な作戦を展開するための橋頭堡として考えていたのかも知れない。(すると龐涓がやっていたのは、最初は南北に領土を広げる作戦だったことになるが)

 それにしても韓という国はとても微妙な位置にある。周囲を三方を魏に囲まれ、あとは秦と楚だから大変だ。いずれも非常に広大な領土を盛っていたり、強い軍事力を持っていたりする国だったから、生き延びるにはずいぶん気を使ったに違いない。逆に魏から見れば、韓は獅子身中の虫的な位置にあるから、結構圧力をかけただろうね。

 それにしても魏が安邑から大梁に遷都したとしても、大作業だったろうなと思う。というのはやはり韓を大きく迂回しなければならないからだ。まあいろんな思惑や勢力争いがあったのだろうけどね。

 なお魯とか宋とか中山とか越とかは弱小国として、戦国の七雄には含まれていない。『戦国の竜虎』でも、きっと急いだらこの国を横断(または縦断)したに違いないと思うところもあるけど、実際には弱小国は大国に従属していたと思うので、大した問題は起こらなかったのだろうか(自分の都合で戦が起こせなかったりして)。

 ほんとうはもっともっと複雑な外交交渉が、いろいろと行われていたに違いないのだが、今となっては知る由もない。(調べればある程度まではわかるだろうけど、それも記録に残っている限り)

Photo_2

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2009年2月11日 (水)

ちょっと息抜き

 建国記念日なのだそうである。それも水曜日である。これはとても嬉しい(木曜日だったらもっと嬉しいけど)。というのも、一週間の疲れ方で、このあたりに中休みがあるのがどれほど大切かを体感しているからだ。

 昔、いろんなトレーニングの組み方を考えていた頃、様々な国のトレーニングサイクルを研究してみたことがある。中には1週間というサイクルにまったくとらわれることなく、トレーニングサイクルを組んでいた場合もあったが、残念なことに我々は勤め人なので、どうしても一週間の、月火水木金土日という曜日の呪縛からは逃れられない。

 いや逃れることはまったく不可能だということはないのだろうが、もし実行してしまったら、社会人として生活していく上で大変な困難が発生してしまうのではないかと思う。困難が発生すれば長続きはしにくいから、無理をしない範囲で、ということになる。

 トレーニング的に見れば週に2日の休みはありがたい。若い学生諸君の中には、月月火水木金金って旧帝国海軍みたいな生活でももつ人もいるかもしれないが、これは回復力が強い若いうちだからできる芸当だろう。若くて回復力が強かった年頃なら、私だってそのくらい練習はしていたしね。

 でも今は「毎日が快適に生きられる」ためのトレーニングと化しているので、あまり無理はやらない。無理したところで出る試合も競技会も予定していないからである。もしも試合なんかを意識していたら、きちんとトレーニング日誌をつけて、コンディション調整には気を使っているんだろうけど。

 トレーニング日誌は、狙った日に好調をぶつける上ではとても大切だった。私なんかは身体にも恵まれなかったので、年がら年中いつも試合に出られる状態でいることはできなかった。試合の前にはきちんと調整して、体調を最高かそれに近い状態で出ていたわけだが、調整をしていくには毎日の記録が大切になってくる。記憶や感覚ばかりに頼っていると、ずれてきたりしたときに修正が難しいし。

 現役時代はそれでも「やりすぎ」の傾向が強かった。でも引退して心の余裕ができ、ある程度計画して「腹八分目」を意識し始めると、案外たくさんの練習ができることに気づいた。だから私は引退してからの方が伸びたという自覚があるが、事実、トレーニングが上手になったからではないかと思っている。

 その頃アメリカのトレーニング雑誌を読んでいて、随分納得したものがある。それは日曜日は定休日にするとして、水曜日か木曜日の練習を、半ドンにするということだ。午前中はやるけれど、午後はやらない、なんてふうにするわけだ。すると驚くべきことに、身体は相当なぺースで回復するんだよね。

 ということは木曜日にハードな練習が可能になるってことですな。仮に休息日の翌日にハードトレーニングを入れるとしたら、月曜日と木曜日にハードなトレーニングが入ることになる。あとは疲労の度合いをみてトレーニングを決めたり、予定を作ったのなら、それにしたがってトレーニングすればよい。

 疲労が溜まると、感覚が鈍ってきたり、微妙なずれがでてきたりすることもある。これは猛練習をすればするほどずれてくることもあるから、練習量では解決できないこともなくはない。今の私は、フレッシュな状態で、感覚を最高に研ぎ澄ませた状態で行うトレーニングに重点を置いているので、疲労が溜まった状態での練習はあまり行わないようにしている(年齢によって変わると思う。若い、回復力が旺盛なときには、いわゆる根性練だって必要だ)。すると、フレッシュな状態でトレーニングを始められる日が、週に2日もあるのはとても嬉しい。

 今週は図らずもそういった休みが入ってくれた。これでシエスタでもあれば最高なんだけど、さすがにそこまでは無理かなあ? 江戸時代なんか、結構庶民はゆったりとした時間を楽しんだそうだから(朝仕事に出るのが遅く、仕事をしまうのが早い。休みには物見遊山などが盛んだったとか)、むしろ日本人はそうあるべきだと思うよ。

 きっと明治維新以降、先進西欧に追いつけ追い越せという雰囲気が盛り上がったときに、いわゆる勤勉(過ぎる?)日本人が出来上がったんじゃないかと思うが(違っていたらごめんなさい)、週休2日も、週の真ん中に1日入れるという発想があったら、もう少しいろんなことが変わったんじゃないかと思ったりする。

 働きすぎるのを当たり前のように捉えてしまうと、あとは自分の人生を悠々と生きている人が、ちょっと手抜きをしているように感じたりするかもしれないけれど(シエスタの習慣がある国の人を、そんな目で見ている人もいるんじゃないかな?)、上手に息抜きを入れたほうがかえって能率だあがるかも知れないしね(あくまで「能率」だよ。仕事の量は、息抜きも、一休みもしないで続けたほうが、『ウサギとカメ』のカメさんのように、多いかもしれない)。

 間に休憩を入れる習慣がつけば、そのうちシエスタだって入るかも知れないし。実際、身体と精神を僅か20分でも休めてやると、あとの脳みそや身体の動き方は、そうとう変わってくるよ。それが本当に「ゆとりのある生活」ってことじゃないかな。

 ともあれ今週は、偶然にも水曜日がお休みになった。これはかなりありがたいことである。ここでうまく休憩がとれていたら、週末はうまく切り抜けられるし、元気で暮らせるかも知れないからね。

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2009年2月10日 (火)

雑念のない動きはどれほど強いか?

 たそがれ時の仕事場付近の道路を、キジネコ(縞模様、こげ茶色)が突然ダッシュして横断しやがった! ネコには交通法規はわからないので、どうしようもないことだが、轢いたりしたのでは気の毒だし、縁起も悪い。時々スズメなんかも車に飛び込み自殺するやつがいるけど(先日のハドソン川不時着も、鳥がジェットに吸い込まれたのが原因なんでしょ? 鳥は空を飛ぶのだから、航空法規も勉強しておいてほしいよね)、人間が作った便利な道具は、彼らの眼中にはないらしい。おかげでちょくちょくトラブルが起こったりする。

 ネコや鳥に限らないが、我々も何かに熱中してしまうと、周囲が見えなくなったりする。一番乗ってしまうと、何にも考えなくなったりすることもある。いわゆる雑念がなくなった状態で、自分自身がその動きそのものになってしまったように思うことも(後から気がつくのだが)ある。

 我々ヒトは大脳が発達した動物なので、雑念を払うだけでも大変なことなのだが、小さなお子さんなんかだったら、案外こういう状態になったりするかもしれない。でも身の回りを見渡すと、案外こういった「○○三昧」的な状態にあるものを見かけることがある。

 例えば獲物を狙っている動物とか、交尾期に発情してしまって、雌の後を追いかけている雄だとか、捕食者に追いかけられて必死で逃げ回っている動物とか、子育ての真っ最中の動物とかである。

 彼らの勢いは大変なもので、こんなときの動物は大変に強いといわれている。けれども私はその強さには疑問を持っている。というのはいくら頑張っても「無敵」といえるほどではないからである。言ってしまえば「その動物として見た時には強い」くらいではないだろうか。

 昔々、私は見た。目の前にいる自分の獲物に集中しすぎて、自分を食べるものが近づいているのに気がつかず、自分が食べられてしまった動物を。発情してメスイヌを追いかけていたオスイヌが、国道二号線を横断していて車にぶつかり、カーンという音をたてて頭を車にぶっつけた。そのイヌはふらふらしながらも二号線を横断し、メスイヌを追ったそうだが、きっとすぐに死んでしまったろう。

 まだまだあるよ。ネコは自分勝手な生き物だけど(それだけ自分の欲求に忠実なんだと思うけど)、突然道路に飛び出してきて、車に轢かれてしまうことだって、よくあることだ。子育てをしている最中の小動物が天敵に襲われたとき、親は必死で子供を助けようとするが、親も子も食べられてしまったのを見たこともある。こんな動物達の行動を見ていると、彼らの意思はその動作にだけに注がれていると思う。でもそれだけで最強になれるわけではないんだよ。

 確かにその動物としては最大限度の努力をしているのだと思う。動きも最高なのかもしれない。でも相手が圧倒的に強かったら、通用しないんだよね。自分の最高の動きが、それをするだけで必ずしもいい結果につながるものではないのが、現実の世界だ。

 古代中国には「石に立つ矢」で有名な李広将軍の逸話があるけど、ただ単に精神を集中させたり、雑念を払っただけでは超えられない壁は、確かにある。もしそれを認めなければ、人は大脳の中での妄想の世界に生きなければならなくなる。

 どんなに精神を集中しても、豆腐と石がぶつかれば、いつだって豆腐が崩れる。これは豆腐は豆腐であり、石は石だからだ。自分は自分以外のものにはなれない。その代わり豆腐には豆腐の目的だあって、それは石ではできない。同じように石には石しかでかいないことがあって、それを豆腐で代わってすることはできない。でも時には豆腐が石にぶつからなければならないときもあったりするんだよね。

 本来豆腐と石は同じところに存在する必要がないのだけれど、人間の社会や、野生の世界では、実に多くの出会いがある。時には競い合ったり、争わなければならないときだってあるだろう。すると大変なんだよね。

 私はかつて『動き革命』(スキージャーナル社刊)で「ネズミがキツネに戦いを挑んでも勝ち目はほとんどない」と書いたことがあるが、普通、一対一で争わなければならないときには、ネズミの戦いは「いかに逃げるか」という点に絞られてくる。でもどうしても「力」で対抗しなければならないとしたら、これはもう一対一では無理だ。大集団で、一度に四方八方から襲いかかるしかない。

 これは「ネズミ」が「キツネ」に力勝負を挑むときの鉄則である。個々の戦闘力では比較にならないのだから、集団の力を合わせなければどうにもならない。これは食うか食われるかという世界の話だが、競技や試合であってもまったく同様だ。

 このように戦術は、彼我をよく知るところから決まってくる。『孫子の兵法』に「知彼知己、勝乃不殆」とあるのは、こういうことではないかと思う。逆に相手の力も自分の力も知らなければ、戦うたびに危うい。相手が弱いか、自分がよほど強くなければ、きっと勝てないだろう。

 よく「力」には「技」で対抗する、などと言われるが、この「技」というものはなんなのだろうか。考えられるのは二つ、一つは「本質的な身体運用レベルが高い」ということ、もう一つは「その競技(あるいはその状況)特有の専門的な技術」であろう。「本質的な身体運用レベル」が高ければ、二つ目の専門的な技術も向上する。

 だがこの二つが試合や実戦の場で結びつくのは難しい。「本質的な身体運用レベル」が向上したら、それを専門的な動きに結びつけなければ、使い物にならないような気がする。だいたい上達だって、それまでの自分のバランスを崩しているわけだから。

 再びバランスをとるには、それを自分の動きに変えていくだけの練習は、当然必要になる。ましてや試合や実戦で活用しようと思ったら、100回やって100回成功しなければならないから、専門的な動きだけではなく、状況や環境にも適応させなければならない。

 試合にしても戦いにしても、自分がすべての面で相手を凌駕していればよいのだろうが、なかなか現実にはそうはいかないから、相手の一番弱いところに、こちらの一番強いところをぶつけるのが一番得策だ。でもこれだって自分も相手もがわかっていないとできないことだよね。

 まあ私のような、「へそが茶をわかす」ようなレベルの人間の体験談なんてたいした意味もないだろうけれど、今までの私の経験ではそうやって何回となく練習していたことが無意識のうちに出ていい結果につながったことは何度もあるよ。これって結構具体的な練習をしたわけなんだけどなあ。

 練習したこともないことがどんどんできて、自分が思っていたよりも遥かに凄いことができたという経験は、なんど思い出そうとしてもないように思うんだけど。ま、「へそが茶を沸かせない」よねえ。へそには「茶を沸かす能力はない」から。どんなに無念無想になって雑念が消えようと、どんなに自分的に自然になったとしても、「ない能力」は発揮できないからねえ。能力を「ある」ようにするためには、練習しかないんだけどね。

 なんとここまで書いて、ひょいとニュースを見たら、未曾有の経済危機にあるアメリカを立て直すために、バブル崩壊時の日本を例に挙げて、頑張ろうなんて話をしたらしい。確かに日本の政治家達の動きは鈍かった。無能だったかもしれない。でもアメリカ人のあんたに言われたくないよね。いくら日本を例に挙げても、あんたにない能力はいきなり発生したりしないんだから。経験と勉強しかないんだよ。それから果敢な決断だろうね、オバマに必要なのは(なんて日本人の私に言われたら、きっと気を悪くするだろうけど。でも日本の失敗を例に挙げるのは、日本人としてはあまりいい気はしないかも知れないよ)。私は日本が大好きな男なんだからね!

Photo

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2009年2月 9日 (月)

何でも実験癖・18 ~リターンマッチは速やかに・ホウレンソウとセロリで作るお粥だよ!~

 なんでもそうだが、失敗とか敗戦とか、思い出したくないこととかを長い間引きずると、ろくなことはないというのが、私の経験上言えることである。理論上、完璧に出来るはずのことならば、リターンマッチを急ぐ必要はないこともあるが、苦手意識になってしまっては、後々が面倒だ(ますますぼろ負けになってしまいそうなときは、自信を壊さないような工夫が必要だろうが)。

 一昨日の夜と、昨日の朝はとても悲惨な失敗をしてしまったので(一昨日の夜は、テキストにできるだけ忠実であろうとしただけだったが、期待したほどのものが出来なかったので、見事な敗北であろう)、早速、昨夜にはリターンマッチをしてやった。もともとは『菠菜芹菜粥』という。菠菜はホウレンソウのこと、芹菜はチンサイというものだが、スーパーで見かけない。留学生のLさんに尋ねたら、「日本にはない」ということだったので、代役としてセロリを用いることPhotoにした(Lさんのアドバイスで)。

 まず例によってテキストの紹介である。 材料はホウレンソウが250g(おいおい、誰が食うんだ、こんなに)、チンサイ250g(おいおい、誰が食うんだ、こんなに)、お米100g(おいおい、これじゃ野菜の間にところどころご飯粒が浮かんだ状態になっちゃうよ!)という謎の配分である。調味料としてはお塩小匙半分(でもテキストにはいつ入れればいいのか書いていない。このいい加減さがまたなんともいえない)。

 作り方は簡単、①ホウレンソウとチンサイを4㎝くらいに切り、さっと湯通ししておく。米は洗っておきましょう。②米を鍋に入れ、水を800ml入れて強火で加熱し、噴いたら弱火にして30分間加熱する。③それにホウレンソウ、チンサイを入れて加熱し、蓋を開けて5分たてば出来上がり。なんだそうである。

 もちろんPhoto_2テキスト通り作ればそれで美味しい、というものではないのは前夜の経験からも明らかである。そこで当然、テキストは無視して勝手にやらせてもらう。まずは準備物である。 右上から反時計回りに、鶏粉(小匙半分)、お塩(小匙半分)、ホウレンソウ120g、セロリ80g、お米5勺、鶏ひき肉(約60g)である。

 勝手に変えてしまって悪いが、鶏ダシで塩味をつけることにさせてもらった。それから狭い我が家の厨房では、湯がいているうちにあたりが水浸しになってしまったり、熱が通り過ぎてしまうこともあるので、湯通しは省略させてもらうことにし、その代わり隠し味で生姜を1g程度(後で入っているのに気がつかない程度)、使わせていただくことにした。

 まず、さっさとお米をといで、加熱を始める。その間にホウレンソウは4㎝くらPhoto_3いの長さに切っておく。セロリは根元が幅がでかいので、結構薄い目に切っておく。セロリは若干硬いかなあと思ったので、とりあえず繊維に直角に短く切っておけば、あとはきっと食べやすいだろうという見通しである。

Photo_4 そうこうしているうちにご飯の方が噴いてきたので、これき鶏粉、お塩、鶏ひき肉を入れて少しだけ蓋をして加熱し、蓋の孔から湯気が噴き出してきたら、弱火にして蓋を少し開け、加熱を続ける。途中アクが出てくるので、これはお玉ですくって捨てる。まあお肉のアクは捨てるのが常識みたいだね。ついでにこの時点ではすっかり忘れてしまっていた生姜を思い出し、遅ればせながら千切りにして投入する。

 このときにはすでにビールをプシュっとやって飲みながら作っていたのだが、この状態のままで30分間加熱である。待ち遠しいことおびただしいので、二本目の缶ビールをプシュっとやっPhoto_5て飲む。相方の作ってくれた水菜などをつまみながらぐいぐいやっていると、時間は知らん間に過ぎていって、30分近く経過したので、大量の(テキスト通りの分量だったら、絶対に食えないものになっていると思う)ホウレンソウとセロリを「ドギャ」っと入れる。野菜は食物繊維が豊富なので、少しぐらい多すぎるくらいでも許される。ただしセロリのほうを若干早めに入れた。

 さすがPhoto_6に菜っ葉が多すぎて、蓋をして蒸らすだけでは加熱しかねると思ったので、蓋をして2分ほど加熱。そのあとは蒸らすだけにしておいた。 この、完成間近のまっているときは実に楽しい。今日はどんなんかな? という期待もある。大体鶏ミンチと鶏粉を使った瞬間に、失敗の可能性はほとんどなくなっている。それほど便利なものなのである。

 蓋をとっPhoto_7て、菜っ葉が適当な柔らかさになっているのを確認して、あとは食うべし! である。 まずは一番心配していたセロリを食べてみる。ところが何と、セロリが美味い! 心配した固さがなく、なんともいい食感である。野菜から出た水分のせいか、若干塩味が薄いような気もするが、これだって健康を考えたら、まんざら悪いことばかりではない。ホウレンソウもえぐみが出ておらず、なかなかの出来である。相方からは☆10個という評価をもらい、余は満足じゃ。

 お陰で苦手意識などできる暇もなかった。次はもう少し日本ではお馴染みでない食材を使って、若干の冒険的な粥に挑戦したいと思っているが、果たして周囲からの許可はおりるであろPhoto_8うか。今はそれだけが心配である。一晩で贅沢な悩みに変わった。

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2009年2月 8日 (日)

何でも実験癖・17 ~こんなこともあるさ。失敗は成功の母?~

 冬は暖かいものに限る。でも忙しいとその暖かいものを作る時間がなくなってしまう。すると健康状態が狂ってくる。体調が悪いのにいい仕事はできないから、体調を維持させない忙しさが呪わしい。なによりも体調維持が一番である。いい仕事をするにも、人生を楽しむにも、体調をよく保っておきたいものだ。

 ということで久しぶりにお粥である。ついでに今朝は先日紹介した、バナナのクレープ状のものに挑戦してみた。いろいろと気づくこともあったので、紹介してみよう。なにしろ身体によかれと思って作ったものでも、体調を崩すことはある。こんなときにはいろんなデータがものを言う。

 調子いいときに上手くできるのは、誰だって同じだろう。でもうまくいかなくなったときに、上手に修正できるのは、やはり経験がものを言う。それも失敗体験とともに成功体験もなければならない。失敗体験から何が学べるかというと、やはり失敗に真っ直ぐ向かったときに、得られるデータは増える。それを「失敗は成功の母」などと呼ぶ。

 ということPhotoで最初は『紫菜粥』であるが、テキストにはこうあった。材料、干紫菜150g、粳米60g。干紫菜とは何かと思ってLさんに尋ねてみたら、日本の海苔に似たものでアマノリだという。そこで私は某道の駅で海苔を買ってきたが、これは結構な量あるのに120gしかない。 でもテキストの写真では左のようであった。

「これはおかしい。海苔150gに米60gだと、これはもう水でほとびた海苔の中にところどころ米がある状態であるはずだが」といぶかった私によって、「やめた、やめた。ワカメに変更」ということになった。ワカメだって150gもいれたらおかしなことになるけど、とりあえずやってみようということになった。

 作り方はテキストでは、海苔を4㎝くらいに切り、塩小匙半分とともに、最初からお米と一緒に炊くとある。噴いてからは弱火で30分である。なんとなく一味足りないな~という感想はおいといて、作るだけ作ってみた。Photo_2

 まず材料である。お米5勺、お塩、ワカメ40g、味付け海苔を使ってみた。なんとなく一味足りないという予想は見事に当たり、もう少し手を入れればよかったのであるが、病人なんかには結構いいかも知れない。健康な人間には、少し食い足りないかなあ。Photo_3

 お米はといで、5合のみずで煮る。強火で沸騰させ、噴いたら弱火にするいつものパターンである。テキストにある、最初から海草を入れるのは遠慮しておいた。加熱しすぎるとあまりいいことにならないのは、経験上時っている。Photo_4

 最初に噴いた時、刻んでおいたワカメを入れた。ついでにお塩も小匙半分入れる。あとはこのまま待つだけである。ひたすら暇なので、いつものようにお酒を飲む。お酒を飲んだ後のお粥は、身体にとてもよいように感じている。Photo_5

 これで出来上がりでございます。普通のお粥にワカメが入っているだけで、味のほうもまさにその通りでしかなかった。まあ塩味が好評だったのがゆ唯一の収穫だったけど。それであまりへんがなかったので、これに味付け海苔を刻んで入れた。Photo_6

 だからといって、突然味が黄金の味わいに変わったりはしなかった。所詮海草は海草である。やはい動物性のものも少し入れたほうがいいように感じる。途中でよほど鶏精か鶏粉でも入れてやろうかと思ったが、入れとけばよかった。

 まあ病人向けのお粥ということで…… 

 昨夜は粥で失敗したので、今朝は『香蕉薄餅』にチャレンジしてみた。一緒に食べに行ったZさん(Mさんの奥さん)が、「作るのは意外と難しい」と仰っていたので、どんな風に難しいのかと思っていたが、やはり始めて作ることだけでもなかなか難しかった。

Photo_7  まずは準備物である。バナナ(大きすぎた)1本、小麦粉、鶏卵、それに刻み葱とお塩である(面倒なので味塩を使った)。葱も面倒だったので、スーパーで刻んだのを売っているのを使わせてもらった。

 最初は鶏卵を割る。白身と黄身を分けて、黄身だけを使う。残った白身ももったいPhoto_8ないので、後Photo_9で塩を振って混ぜ、料理後のフライパンで加熱していただく。こいつは案外美味しい(良質のタンパク質の塊である)。

 これをかき混ぜて小麦粉と混ぜ、さらに少量のお塩を加えておく。後は潰したバナナとお水を加えてかき混ぜればいいのだが、今朝の私は横着だった。フードプロセッサーを出すのを面倒がり、手作業でやってしまおうとしたのである。こういったことは面倒くさがってはいけないのだが… Photo_10

 手で潰す気になっていたので、バナナはあらかじめ小さく刻んでおく。今だから思うけど、やっぱりフードプロセッサーを使うべきであった。バナナって案外繊維が多く、しかもずるずるしているので、案外潰しにくいんだよ。素手でやると手がぐちゃぐちゃになってしまうし、道具を使ってもずるりと逃げていくし……

Photo_11 半分やけくそになって、こんな感じでぐちゃぐちゃに混ぜていく。とにかく濃さが均等になるように混ぜたいからなお更である。これに水をかなり多めに加えてとろとろ(どろどろではない)にすればいいのである。ああ、返す返すもフードプロセッサーを使うべきであった。 労力も時間もいらないし、第一均一になりやすいし。

Photo_12 でもとりあえずこんな感じで生地ができた。あとはこれに刻み葱を加えるだけである。なんとなく韓国のチヂミみたいな感じだが、チヂミはきっとバナナなんか使わないと思う(そんなことをしている人も、絶対にいないとは断言できないけど)。私もここで「ああ、チヂミを作っておくべきだった」と、早くも後悔し始めていた。俗に「後悔先に立たず」というが、今朝の私の後悔は、結Photo_14構早めに立った。

 ここで刻み葱を入れる。まっとうな小麦粉を練った生地だったなら、ここからいくらでも変化させていくことができるのに(しかも結構美味しいものができる)、バナナなんかを入れてしまっているため、いまさら他のものに変えるわけにもいかない。でも思い立ったが吉日とばかりに、やけくそでとりあえず『香蕉薄餅』への挑戦を続けることにした。失敗するにしても悪あPhoto_13がきをするよりな、真っ向から失敗した方が得られる情報は多いのだから。

 次にやることはフライパンを加熱し、少量の油をたらすことである。油がフライパンになじむように、ゆっくりと加熱しながらまわす。そして一旦加熱できたら弱火に切り替える。最初から焦げ付いたのでは、やる気がそがれてしまうからである。10

 ところがどっこい、最初は かなり生地を柔らかめにしたつもりだったのに、まだ濃すぎた。おかげで薄く円形に伸ばすどころか、固まったままで加熱する羽目になってしまった。第一回目は見事に左のような失敗になってしまい。私は証拠隠滅とばかりにほうばったが、なんとなんと分厚かったので11熱の通りがあまく、カラリと仕上がっていなかったので、重い甘さばかりであった。

 二度目は思い切って水を加えたのであるが、それでもまだ固まった。分厚く、これでは「薄餅」ではなく「厚餅」になってしまう。これも証拠隠滅のため、私のお腹へさっさと収まり、その存在は闇から闇へと葬られた(ブログに載せたら、闇に葬ったもクソもないか?)。12

 ところがひょいと隣を見ると、余裕で相方がそれらしく作っている。生地私が作ったものを使っているから、条件的には私と同じである。どうしてこんなにできばえが違うんだろうね。それは簡単。「経験」「知識」「技術」が違うからである。時々、経験や知識や技術は不必要だなどと乱暴なことを言う人がいたりするが、料理を見ても、他の様々なものを見ても、それら14がいい結果を出すためには不可欠なものであることは明らかである。

 自然にやればいい、などとは言っても、「自然にできる」ようになるまでは誰だって練習や、実戦を通じて、多くの経験をつみ、情報や知識を得なければならない。経験を積んでいて間違いがあるのは、間違った経験をたくさん積んだときぐらいのものであろう。その証拠に相方は、失敗しては証拠隠滅を繰り返す私の隣で、生地からしてうまくいっていないものを、それらしい形にまとめあげていた。

15  そしてこれが私の三度目の挑戦である。なかなかうまくいかず、証拠隠滅のため、たくさんを収めた私のお腹は、もうそんなに食べたくなかった。第一生地の原料がもうない。それでちょっと慎重になりすぎてしまったかな。ひっくり返すときに躊躇していたら、裏面が少しこげてしまっていた。

 でもなんとか無事にひっくり返し、17 表を暫く加熱する。本当は両面ともに黄色であるべきなのだが、裏返すのに躊躇してしまったため(躊躇しなかったら、裏返しで失敗していたと思う。万全の態勢を整えるのに時間がかかってしまったのだ)片面はこげ茶色になってしまったが、まあ形的には許せるところまでこぎつけた。

 様々な反省点はあるが、とりあえず目の前の「薄餅」を完成しないといけ18ない、ってんで出来たのが左である。食べたよ、もちろん。甘かった!!

 反省点としては、頑張って大きすぎるバナナを使ったのではないかということ。バナナの量はこの半分で十分だと思う。それと先ほどから何度も言うように、フードプロセッサーを使ったほうがいい。これだともっと生地を薄く延ばせるはずで、すると焦げ目もつかないで出来るんじゃないかと思う。

 全体的に私には甘過ぎた。次つくるときは、きっとチヂミになっていると思う。

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2009年2月 7日 (土)

一道と万能

 昨日は暖かかったのに、今日は寒い。「冬来たりなば春遠からじ」とは言うものの、春が来るまでは、何日も寒さがぶり返してきたりして、なかなか日に日に暖かくなるなんて順調な気温上昇などが期待できないのが一般的である。

 何をやっても、一気に上がることは少ない。もし一気にあがったとしたら、落ちるときも一気に落ちるかも知れない。一つずつよじ登っていくから、いろんなものや事を味わうことができるのではないかと思う。

 道草をたくさん食ってきた人は、人に何か語るとき、多くの言葉や情報を持っていることが多いが、もちろん「道草」である以上は、目的地はちゃんとなければならない。目的地がなければ「道草」は道草にならないし、「寄り道」も「寄り道」にならないからだ。ただふらふらしているだけ。

「一道に秀でる者は万能に通ず」という言葉があるようだ。私などはまだ「一道」に秀でてもいないが、世の中、あまり道草を食いすぎて、何が専門(目標)かわからなくなってしまう場合もなくはない。武芸十八般などというけれど、本当かしら? なんて思ったりもする。

 もちろん言わんとすることはわかるよ。戦場でどのような状況になっても、身近にあった武器で戦うことができなければ、「もののふ」としては心得が足りないといわれるだろうから、様々なものに通じていなければならなかったのだろうなあとは思っているけれど、もしも武芸十八般、すべてに精通しようと思ったら、とても寝ている間なんかなかったほど忙しかったんじゃないかな。

 もちろん、基本となる身体の運用法はあるだろう。私のところでは、この基本となる部分を研究していたりするわけだけど、基本は「使える形」にしてこそ、本物の基本なわけだよね。では「使える」って何? それは目標と手段が決まらないと、わからないよね。

 例えばスポーツなんかだとテニスと卓球。両方ともラケットでボールないしは球を打つ競技だろうけど、コートの広さも違えば、ルールも異なるよね。使う道具だってサイズも違えば、動きだって異なる。両方に秀でることは果たして可能なんだろうか、なんて考えてしまうよね。

 いわゆるスポーツ万能って人も、何人も見てきたけれど、「万能」って人は、多少人よりも体力的に優れているだけだったりとか、多少器用だっただけってことも少なくなかった。このレベルで「万能」と言ってもなあ…なんてため息をついたことも少なくない。「それってとりあえず、なんとかできてるだけじゃん!」では「能」といえるのかなあってね。

 自分の目的とした動きにぴったりフィットしなければ、動きの根本の部分ができても、表面上はあまり大きな変化は起こらないんじゃないかな。基本は所詮基本だという人もいるけれど、私はこのあたりに理由があるんじゃないかと考えている。

 それが何かに専門的な動きに特化したとき、はじめて凄い結果につながり、基本が活用されたことになるんだよね。だから専門的な動きに特化することができて、やっとその基本の値打ちがわかったりするんじゃないかな。基本を基本だけで評価するって、超難しいことのように思うね。

 それで何か具体的な行為を行ったとき、普通にやったのではできないことが出来たら、その動きの基本になった部分は凄かったということができるのではないだろうか。だからやっぱり専門的な動きは練習しないとね。少なくとも動きの基本が専門的な動きに反映される程度までは。

 日本の各種伝統的なものには型や、それに類したものがあるよね。型って、ある専門的な動きを行う場合が多いけれど、その型を行うことで動きの基本の部分が変わり、それがまた型で行う具体的な動きに反映されていくのを評価しやすかったんじゃないんだろうか。じゃあなかったら、型文化とでも呼びたくなるようなものは生まれなかったんじゃないかなあ。日本人にしても外国人にしても、時代を超えて長く生き延びるようなものを作った人は、とても賢かったと思うので、当然、何か物凄く利点があったから、型なんかを作ったと思うんだよ。

 だから「時代に合わせて型を変える」とか、「本来型は、個人個人によって変わるものだから」なんて理由をつけて、やり込みもしていない型を変形していくのは、昔から嫌われてきたんじゃないだろうかなあ。

 いろんな考え方はあっていいと思うし、誰か他の人が、ぜんぜん違うことをやっていたとしても、それはその人の完全なる自由だと思うけれど、私はなんとなく「優れたシステム」を作った人は凄かったんだろうなあと感心している。強いとか弱いとかという問題よりも、そんな考え方ができた人は凄かったんだろうね。

 もちろん型をやろうがやるまいが、自分の身体を使いこなせるようになった人たちは、型から離れていくのかも知れないけれど、人の身体を合理的に開発できるようなシステムとしての型を作った人は、凄いもの(道?)を残してくれたんだよね、きっと。先人の凄さをよく感じる、今日この頃である。

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2009年2月 6日 (金)

『中国の鋼鉄刀剣』・39 ~第七章 鋼鉄刀剣の最後の輝きと衰落・清代(18) 第二節 清剣5~

 どんなものにも栄枯盛衰はあるものだ。筆記用具だって、鉛筆なんかとても便利な道具だった。私が小学生の頃はたいていの子供が筆箱の中に、鉛筆削りようのナイフみたいなものや、手でくるくる回す小型の鉛筆削りを持っていた。ナイフで鉛筆を上手に削る子は、私はなんとなく尊敬していた。電気鉛筆削りなんか、もうほとんど憧れの対象だった。今は私も持っているが、悲しいかな、年に数回しか使われない。

 私は鉛筆を削るのが、特別に下手だったわけではないが、特に上手であったわけでもない。上手に削る子は口にこそ出さなかったけど、「こいつ上手いな」と、内心感心していた。いまではせいぜい使ってもシャープペンで、誰も鉛筆削りが上手か下手かなどまったく気にもしていない。今尊敬されるとしたら、シャープペン回しくらいのものであろう。

 鉛筆がシャープペンに取って代られることによって、鉛筆を削る技術は知らない間に消えていった。これはどんなものにでも起こる現象だろうが、武器でも似たようなことがあったに違いない。我々の祖先がまだ腰蓑で野山を走り回っていた頃、手にする武器といえば棍棒であったり、獣の骨であったり、石だったりしたと思う。それらを使うにも、きっと独特の技術があったのではないかと思うけれど、武器自体が改良されていくにつれて、それらの技術は変化したり、生まれたり、消えていったりしたのではないだろうか。

 中国は歴史の長い国である。わが国がまだ弥生時代だった頃、すでにいくつもの国が、何万という大兵力を展開して(それだけの兵力を展開できることが、すでに大きな生産力を持っていたことを証明している。兵は戦となれば、ものを生産しないからである)、様々な武器を使っていた。その中には大変優れた刀剣も含まれていたのである(私個人の考えでは、日本の刀との違いには、両国の国民性の違いも反映されているような気がしているが)。

 だがそれも火器が発達することによって次第に衰退していく。一度は最高峰といえる高みに到達したものが衰退していくのは、見ていてとても悲しい。でもそれが時代の流れというものかも知れない。時間の流れと、その中で一所懸命何かを作ろうとする人たちは、ものごとをどんどん変化させていく。その変化を好ましいと思う、思わないに関係なく、世の中は変化していく。

 今でもテレビドラマの変身戦隊ものでは、多くが刀剣様のものを用いる。これはきっと刀剣という武器がもっていたある種の美しさ(刀剣自体の美しさ、それを使う人の美しさなど様々な美しさがあるけれど)に対する郷愁があるのではないかと、私は勝手に考えている。スターウォーズのジェダイもライトセイバーなる剣状の武器をエレガントに使っているし(戦隊ものはこっちの影響を受けた? でも日本には時代劇という、刀を使うドラマが歴史的にあったしね。むしろスターウォーズの方が、日本の影響を受けているんじゃないかと思うけど。まあ詳しく調べたわけじゃないから、よくはわからない。ジョージ・ルーカスは日本文化が好きだと聞いたことはあるが)

 さあそこで、久しぶりに中国の刀剣である。一気に清代を終了させてしまうつもりだが、あまり分量が多くなりすぎたら、途中で遠慮なくギブするつもりだ。でも次第に衰退していくものを取り上げるのは、私としては物悲しい。

      *      *      *      *

『中国の鋼鉄刀剣』・39 ~第七章 鋼鉄刀剣の最後の輝きと衰落・清代(18) 第二節 清剣5~

☆ 福寿装剣Photo   

 清代の民間佩飾剣の中で最も多かったのは福寿装剣Photo_2である。これは龍泉装剣と比べて形式が一つしかなく、どの剣も大きな差異はない。装具は全部で8つあり、そのほとんどが銅製である。表面には民間で伝統的だった蝙蝠Photo_3合囲寿字紋飾があり、このデザインには「五福捧寿」の意味がある。

 この剣の様式は清中期に始まり、清晩期に流行して、民国初期に至った。福寿装剣は基本的に短剣であり、剣身は薄く軽く、中には七星を嵌めこんだものもあった。当時この剣は、平和安定の象徴として作られ、家の守りとか贈り物、護身用に用いられていたが、海外に輸出されたものもある。

☆ 龍紋装剣

 様々な龍形紋飾を主にした剣は、品種も豊富であり、形式も多様である。龍紋装剣は福寿装剣、Photo_4龍泉装剣についで数量の多い民間佩飾剣で、このことからも清の人たちがいかに龍を吉祥的神獣とみなしていたかがうかがい知れる。

 龍紋装具は龍泉装剣に似てはいるが、鞘箍上に『龍泉』の文字がなく、また螭龍もない。また形式上の違いも多く、龍紋装剣には長剣が多いのも大きな特徴で、短剣が多い龍泉装剣とは異なる。

 龍紋装剣の工芸としては、透かし彫り、レリーフ、陰刻、縁取りなどで、贅沢なものの中には錯銀鎏金のものもある。さらにはデザインも豊富で、形式的な龍以外にも、龍生九子和鳳凰があったり、補助的な紋飾として祥雲、海水、火珠、福寿、団花、巻草などがある。龍紋飾剣の剣身には装具にあわせた龍紋が施されているものもあり、様々な方式の7つの銅点がはめ込まれているものもある。

☆ 蝙蝠装剣Photo_5

 蝙蝠を剣の飾りの基本的なデザインとしたもので、いろんなバリエーションがある。蝙蝠の「蝠」と「福」の発音が「fu」で同じなので、蝙蝠のデザインは昔から民間で好まれてきた。福寿装剣との違いは、蝙蝠装剣には長剣が多く、多くは私的に注文製造させたものであるという点である。現在残っているものもさほど多くはないが、その鍛造は精良で、剣刃は非常に丈夫である。その中には稀に旋han(火へんに旱)花紋剣が含まれている。

☆ 纏枝蓮装剣

 纏枝Chan蓮装は清代の民間で最もよく見かけるデザインの一つである。そのバリエーションは多く、穏やかで美しい。その意味するところは滞ることなく優しく続くである。纏枝蓮装剣の作りは統一されていて、美しいつくりChan_2で、多くは南方で流行した。

★蓮花……こ  の刀は典型的な清代の纏枝蓮装剣で、専門的な研磨を受けてChan10いる。剣身は丁寧に鍛えられており、花紋は密で無数にあり波浪状を呈している。剣体は挟鋼三面構造で、挟鋼線ははっきりとしている。熱処理、焼入れの技術も高度で、刃口付近は透明にさえ見える。装具は精銅で鋳造しており、蓮花紋飾を陰刻しており、空白部分は魚の卵のような模様で埋めている。鞘と柄は破損しており、後から老鶏翅木で複製してある。この剣の砥ぎには15日以上を必要とした。

☆ 素装剣

 清中期になると、装具に紋飾や図案の入っていない、簡潔なつくりの剣が現れてきた。この剣も8つの装具からなり、黄銅の鋳物を合わせて押し付けて作られているが、鍔に獣の頭のような紋飾がある以外は、ほかに飾りはない。このような素装剣は乾隆期に以後、あまりに芸術的になりすぎた飾りが簡潔にされた結果できたものだが、同時に清晩期に刀剣が没落していく象徴でもあった。素装剣の現れ11始めたころのものは、飾りはないものの装具の作りも剣身も、品質は高く、素朴だが深い味わいがあった。それに対して清末期のものは作りも雑で、品質的な低下が著しかった。

★清中、晩期素銅装剣……この剣は作られたころの姿をよく保存していて、風格が古朴である。鞘、柄は酸枝木で作られていて、柄の彫刻は螺旋紋である。

☆ 土造剣

 俗に「全鉄剣」と呼ばれ、鍔、剣茎が多くは鉄製である。この剣では剣刃と剣首が一体で鍛えられているか溶接されていて、リベット留めになっている佩飾剣と異なっている。現存するものの中の一部は明末期のものであり、大部分は清中・晩期のものである。外見上つくりは粗く見えるが、鍛造は精良で、鋼の質は決して低くはない。

★明清土12造剣……これらの剣には規範はない。長さも50~70㎝とさまざまで、形は単純だが、とても実用的である。鍔は「一」の字か、月牙(三日月形)形あるいは胡蝶の形を主にしており、剣首も三耳形、瓢箪形、花弁形などをしている。剣茎は大きく頑丈で、剣身は短く、幅広く、厚みが厚くなっており、切っ先は円いものが多い。この作りから想像できるのは、猛烈に叩きつけるようにして使ったものと思われる。剣体の多くは挟鋼三面複合構造で、銅製の七星を持つものもある。 ③⑤⑧⑨は明代のものの可能性があり、それら以外は清剣と考えられる。

☆ 法剣

 清代の法剣は基本的に道教で使われたものを主としている。ただし上は皇室御用剣から、下は民間土造剣までが含まれた。一般的に剣身には神秘図案が刻まれていたり、宗教的な護符とか、破邪退魔の呪文が刻み込まれていた。以前取り上げた道光皇帝の御製「祛邪珍武虎」剣や、官制「勅魔」剣および龍泉「勅魔」剣などもこの類の剣である。

 清代には戦が頻発し、社会がよく乱れたので、法剣も一部の全体が木でできたもの以外にも、一般の佩剣と同じような鉄製のものもたくさん作られた。日常は身に帯びて護身用に使い、祭祀を執り行う際には法剣として用いたものが多かったのである。その名称は様々で、「宝剣」「神剣」「神feng(峰の山が金へん)」「恵剣」「霊剣」「七星剣」「青龍剣」「駆邪剣」「斬妖剣」「勅魔剣」などと呼ばれた。

★清中、晩13期木鞘蝙蝠装法剣……全長69㎝、刃わたり51㎝で、清代の典型的法剣の外装を持っている。柄、鞘はすべて木製で、剣首には蝙蝠図案があり、三耳形の剣首にが二つの輪が彫られている。鞘の両面にはそれぞれ、雲龍、書があり、剣紋飾には「神剣王」という銘文がある。剣刃は錬鉄挟鋼方式であり、鍛造は非常に精良である。

★清晩期全鉄14法剣……剣体は分厚く重い。形は単純で、民間土造剣と考えられる。ただし鍛造は非常に精良で、重心の位置も大変良い。剣身の正面には「無量祖師」および「十二師神」という銘があり、これから農村の求神駆邪の法剣だったのではないかと推測できる。

      *      *      *      *

 へえええ~~…… やっと清代(のほんの一部)を紹介いたしました。それぞれの時代の技術の粋を凝らしていた刀剣も、とうとう衰退に向かった転げ落ちてしまいましたなあ。実際に使われなくなると、品質はわりと短時間のうちに低下していくものだろうし、ましてそれを用いる技術なんかは、かなり短い間に低下していくんでしょうな、きっと。

 この次に出てくるのは、わが国との悲惨な記憶が残った例の戦争でございます。近代化に乗り遅れ、武器が不足していた中国では、鉄砲に刀剣で対抗しなければならなかったと、著者の皇甫江氏は述べておられます。まあ私の年代くらいまでは、近所のお年寄りからいろんな話を聞いていたりするので、青龍刀や槍を持って突撃してくる中国兵のことが、お年寄りの思い出話(時に手柄話)のかすかな記憶として残っておりまする。

 刀剣が武器である以上、使われるのは、生命の奪い合いの場であったのは当然のことであったと思います。でもお互いに一つしかない生命を、何のために散らしていかなければならなかったかを考えてみると、どうしてもあまりいい気持ちにはなれません。私にはアメリカにも中国にも(もっと他の外国にも)親しい友人がいます。かつては彼らの国と戦争をしていた頃があったなどと考えると、心が重くなってしまいますな。今後こういうことが二度とないことを祈るばかりです。

 ということで民国の刀剣については、紹介するにも、気が進まないのですが、まあ乗りかかった船ですから、ざっと触れるのではないかと思います。でも清代は長かったので疲れました。はああPhoto_6あ……

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2009年2月 5日 (木)

論語読みの論語知らず・2

 昨夜ブログを打ち終わって、帰宅してしばらくしていたら、畏友I先生(お医者さんである)から早速感想文をいただいていた。いくつか書き落としたこともあるので、今日は少し昨夜の補足をしておきたい。ついでに私の、独断と偏見に満ちた意見も付け加えておくことにしよう。何しろ本ブログは、私の「言いたい放題」なんだから。

 諸子百家なんていても数字には大らか(良く言えば。悪く言えば杜撰)な中国のこと、別に百あったわけではない。まず大きくわけて儒家、墨家、兵家、道家、法家、名家、縦横家、農家、雑家、小説家とあったらしい(前漢の劉向・劉歆父子の分類による)。彼らの分類では、この中でも兵家は一つに独立していたようで、本当は兵家を除く10家あったと言う。けれども小説家というのは民間に伝えられていた話などをまとめただけなので、思想性はなく、小説家を除いて兵家を入れて10としたのが諸子百家の「諸」であったという。

「子」は先生のことですな。百家というのは実は学派のの数をさしており、実は百もあったわけではないらしい。大げさなことが好きな国民性なので、とてもたくさんあったという程度に理解しておいた方が、ショックが少ない。

 昨日も書いたように、諸子百家の時代は孔子が魯に私塾を開いたのに始まるとされている。続いて出来たのは墨家であって、どうやら儒家と墨家の間では、激論が戦わされたらしい。墨家の始祖と言われている墨翟は技術屋であり、兼愛非攻の理念のもと(自分からは攻めないが、いざ戦となれば大変強かったといわれている。映画『墨攻』なんてのもありましたなあ)、孔子のといた礼楽の思想に真っ向から異議を唱えたといわれている。

 こんな数々の論戦を通して、お互いの思想はそれぞれに攻撃しあい補強しあって進歩して行った。それぞれの思想家は何を目指したかというと、自分の考えを受け入れ、それで政を行い、強国となる君主を求めたんですな。つまり「私の考えを実践してくれえたら、あんたの国は強くなりますぞ」と売り込んだわけ。

 こういった例の一つに、本ブログでも取り上げている魏の恵王のところを孟子が訪れたとき、恵王はこういって出迎えたんだそうな。「不遠千里而来、亦将有以利吾国乎?(まあまあ遠くからわざわざ。わしの国にまたいいことを教えにきてくれましたのかな?……ちなみにこのときにはすでにほうけんはいない)」 要するに自分の優れた考えを与えることで、自分の理想とした国を作りたかったんですな。

 だから国王や諸侯は、有名な学者が自分の国を訪れるのを大歓迎したし、思想家は思想化で、自分の説が受け入れられることで、報酬を得たり身分を得たり、当然名声を得たりしていたわけ。だから実利のある考えをどんどん出すと、それなりに豊かな生活ができたんですな。

 ところがどっこい、趙の平原君のところの食客で優遇されていた、公孫龍という名家は陰陽家のすうえんに論破されてしまった日から、平原君に追い出され、食うにも困ったらしいから、舌先三寸で勝負する人間の厳しさが偲ばれる(現代の日本の政治家にも、こういった姿勢がほしいところだ)。

 このような様々な思想家が活躍できたのは、実は大勢の諸侯が覇を競っていたからで、諸侯の競争にうまく乗って、諸子百家の活躍できた時代が展開していた。けれども天下が統一されると、あまりに多くの主義主張や価値観があったのでは、為政者としてはやりにくい。天下を統一した秦もその例外ではなく、始皇帝はとりあえず法家思想で、それまでの封建主義社会制度を軍県体制に変えていった。

 ここで起こるのがかの有名な「焚書坑儒」でありまする(相前後して「挟書之律」というのも出されている。これは民間に流布していた書籍を廃棄処分にするというもの。この他にも様々な思想を語ったものは、獄門さらし首にするという布令を出したので、私塾などはほとんど潰れてしまった)。特に墨家思想はこのとき、ほぼ根絶されるような目に遭ったというから、よほど嫌われたのだろう(私は、実戦で強かったから、よけい始皇帝には邪魔だったんじゃないかと推定しているけど)。もちろんその他の思想もこのときを境に、一気に勢力を失っていく。

 秦は僅か15年で滅びてしまうけど、その後天下を取った漢では、すでにいろんな思想が盛り返すこともできなくなり、基本的に漢王朝をよいしょする儒家が重んじられ、一時期道家の一派である黄老之家が幅をきかすも、武帝の時代から儒家一色になってしまう。これはきっと武帝があまりにも絶対的な君主であったからではなかったのかなあ。

 だいたい儒家というのは春秋戦国であっても、周王朝の真似をして、諸侯が自分の権威付けに利用したところがあるから、漢でも同じような意味を持っていたのではないかと思う。ものの値打ちを上げようと思ったら、うやうやしく扱うという儀式を執り行うだけで十分だ。こんな需要に対する供給源が、ちょうど儒家であったというだけの話だろう。

 他の思想はどうなっていたかというと、道家は広く深く民間に浸透することによって、確かな姿を消していき(消えてないかも)、陰陽家は学問となったり神秘的な方向へと走ったりして思想界の地位を失っていき、名家は論争するときのテクニックとして一部の人々の間に生き延びることになり(ディベートなんかに使えません?)、縦横家は多くの国がなくなることによって表面上消えてしまい(今でも外交には使われたりしているけど)、兵家は純粋な戦略・戦術や用兵といった学問になっていき、法家は今でも国を治める技術として使われることになってしまうのでした。

 いやほんと、儒家の思想の浸透具合の恐ろしさだが、こんなときにはこのような服装をしなさいとか、この儀式はこうやって執り行うだとか、ご祝儀にはこんなものを贈るとか、贈り方はこうしなければならないだとか… 見事に儒教の影響でございますな。もちろん式典などはそれを行うことによって厳かになったりするので、格調高くなったりするけれど、そんなものの権威を認めないためなのか、わざと騒いだりする人もいるよね。

 でもその人がいつも騒いでいるのではなく、式典だけで騒いだりしたら、本当はその権威を認めて反抗しているようにしか見えないから、やっぱり権威を認めていることになるんだけどね。私なんかは気に食わなかったら無視してしまいます。だって無視が一番怖いんだよ。相手が作った権威なんか、無意味だと言っているのと同じだからね。

 でもそんな私でも、厳かでなければならない式典などは、着たくもない服を着て、息を殺して参加していることがほとんどですわ(呼吸困難になってしまうので、あまり出たがらないけど)。でないとその式典の主賓に気の毒だもん。この気の毒って感情が実は大切で、人を思いやるところにつながるのかも知れないんだけどね。

 でも本当は孔子だって、自分の思想がどこかの為政者に採用されて、できたら自分が為政者の相談役になりたくて(それを位人臣を極めるというんだけど)、知りもしない礼制を知っていると言って法螺をふいて諸侯の間を回り、誰にも相手にされないと知ると、弟子を集めて自分の意見に賛同する人間を育てたんだよね。

 そうして時代は孔子がなくなって少したった頃、それぞれが「もっともらしい礼制」を持ちたいと願った諸侯によって、彼の弟子たちがどんどん政治の中枢にもぐりこんでいったんだろう。孔子はちょっと早すぎたんだろうね、きっと。仕官するには、もう百年くらい待てばよかったんだよ。気の毒に。

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2009年2月 4日 (水)

論語読みの論語知らず

 前回訪中したときに、『完全図解 諸子百家』という本を見つけた。図解というからには図が多い。そして文字が少なく、とても読みやすい。ちらちらと立ち読みした結果、買って帰ることにした。すると付き合ってくれていた莫ちゃんも、「これはよくまとまっていてわかりやすい」などと言って(もちろん中国語で)買っていた。莫ちゃんくらい勉強していたら、こんな簡単な本は読まないのかと思っていたけど、もしかしたら息子の浩浩用かも知れない。

 諸子百家というと、例の春秋戦国のころの百家争鳴を演出した人たちのことだが、実はその頃のことまで、最新の考古学的発見までベースにして書いてあるので、とても面白い(現在進行形で述べてあるということは、今まさに読書中だからである)。考古学的発見と哲学がどういう関係があるのかというと、いつの時代の墓からこんな古文書が出たという話があるたびに、いつごろその思想が興ったのかということに訂正が加えられかねない国だからだ。

 歴史が長いということはすさまじいことだなと感心するのは、こういうときである。まあ仕方がないけど。我々日本人(といっても自分がもとから日本列島に暮らしていたかどうか、定かではないから。私の顔は蒙古系である。もしかしたら祖先が大陸から渡ってきて、日本列島に定住しただけかも知れない)にとって二千数百年前といったら、文字はなかったと言われているし、歴史がほとんどわかっていない。最近箸墓古墳が卑弥呼の墓で、邪馬台国は奈良にあったなどと言われているけど、これだってせいぜい1800年足らず前のことでしかなく、中国では『三国志』の英雄達もほとんど死んでしまった頃のお話でしかないからだ(ちなみに卑弥呼の使わした使者を謁見したのが司馬仲達の可能性があるんだそうな)。

 話をもとに戻そう。その二千数百年前に、すでに様々な思想が現れて、様々に高度な議論や闘争がなされていたらしいのだが、日本でも孔子という名前は超有名だ。きっと儒教という名前は知らなくても、孔子は知っているんじゃあないだろうか。不思議だったのはある男Kが(すでに故人である。私には嫌味ばかりした男だから、私はこの男が嫌いだったし、今もそうである)、「孔子様」と、様づけで呼んでいたくらいだから、凄い聖人だったのであろうと勝手に想像していた。

 いやもちろん『論語』は読みました。一応私も趣味でこんな本を読んでいたりするので、儒教は好きではなかったけれど、わざわざ日本人が書いたのではなく、孔子75代の直系の子孫である孔祥林先生の『中日文対照・論語』(何と、定価で39人民元という高価な本である。これはこれを買った当時の物価の違いを考えると、日本円で4000円近い)というやつを読みました。途中で眠くなるので何ヶ月もかかりましたが。

 で今回の『完全図解・諸子百家』だが、諸子百家の時代は、孔子が魯に私塾を開いた時に始まり、百家争鳴の時期は、今は少し本ブログでお休みしている(再開の準備中です。乞うご期待!)『戦国の竜虎』の時代、ちょうど斉の威王とその次の宣王の時代だなどと書いてあり、いわゆる誰でもしっているこの時代の名著の記された年代の特定などに少しだけ触れ、どの思想がどのように興り、どのように廃れていくかの概略を紹介していたりする。

 中でも中国思想界で最高に勝ち残ったのは、なんといっても儒教なので、その始祖である孔子についてはわざわざかなりのスペースをとって紹介してあったが、結構批判的なんだよ。もちろん今の中国では、孔子はそんなに人気はないけどね。私が知らなかったことがあれこれと書かれていて、読んでいて面白かったので、ちょっと紹介してみよう。

 孔子ってのは不思議な人で、自分の信念に基づいてあちこちの支配者に自分の思想を説いて回るのだが、結局誰にも受け入れられず(14年間で70以上の為政者に説いて全滅したと言われている。いくら就職活動が56歳という年齢からだったとしても、絶望的な確率だ!)、魯に引っ込んで私塾で生徒を教え、紀元前479年に73歳で没したと言われている。

 でも不思議なのは、どの諸侯にも採用されなかった人間の私塾に、よくもまあ弟子が集まったもんだなという点である。直弟子だか孫弟子だか曾孫弟子までも含めたかは知らないが、最多時には門弟3000人を数え(中国では数が多くなるとすぐに3000人という数字を出す。不思議な数字の感覚である)、その中に賢人72人を数えたのだそうな。ほんとかしら?

 弟子が集まるにはそれなりの理由があってしかるべきだ。今だって宣伝がうまいか下手かは、業績に大きな影響を与えるからね。当然、孔子の私塾だって、何もしないのにそれだけの門弟が集まってきたとは考えにくい。必ずや「売り」があったはずである。それが「礼法」だったんだそうな。曰く「私(孔子)は夏朝の礼制、商朝の礼制、周朝の礼制に詳しい」と自称したわけですな。

 当時は春秋と呼ばれる時代で(命名は孔子)、周王朝の勢力は弱まり、諸侯があい争う時代になっていたので、孔子はそれを憂い、秩序だった世の中に戻すために「礼」を使いたかったらしい。でも孔子が目指した秩序というのは、実は封建制度そのものを指しているんだけどね。私が今も嫌っているある男Kは、当然こんなことは知らないで、滔滔と「孔子様がこうおっしゃいました」と人前で話をしていた(自分では話がうまいと自惚れていた男だったけど、私はこの男が典型的な「論語読みの論語知らず」だと当時から言っていた)。

 まあ世の中に「論語読みの論語知らず」(中国では書呆子とか死読書的人とか言われるらしい)を山盛り生んだ孔子先生であるが、ご自分が自称した「礼制に通暁している」という点で、この本『完全図解・諸子百家』は素晴らしい見解を述べてくれている。簡単結果からに言おう、孔子は本当は「礼」などは知らなかったと。

 その理由がいちいち頷けるものだから始末が悪い。まず時代である。孔子(孔丘)は紀元前551年生まれで紀元前479年没だから、自らが名づけた春秋時代(BC770~BC403)のやや後半に生きた人である。ところが彼が精通していると自称した夏王朝はだいたい紀元前2070年から紀元前1600年頃までの王朝であり、商王朝は紀元前1600年頃から紀元前1046年頃、周は紀元前1046年から形だけは孔子の頃も続いていたけれど、西周は紀元前770年に終わっている(そこから春秋時代となる)。孔子があこがれたという、周の文王、武王、さらには周公旦の時代だって、孔子の生きていた頃から500年も前のことである。

 考えてもわかると思うけど、500年前のことはわからないよ。今から500年前というと日本だって室町時代でございますよ。悪いけど私は応仁の乱(1467年~1477年)の頃の礼法どころか生活もしらないし、織田信長さん(1534年~1582年)の頃の礼法も生活も、社会の一般常識すら知りませぬぞ。日本という比較的狭い国の、比較的記録が残っている頃の情報だってぜんぜんわからないのに、孔子さまはどうしてそんな昔のことがわかったんでしょね。礼法なんて竹簡に挿絵入りで残せるようなものではないと思うんだけどね。

 さらに面白いのは、孔子は生まれが卑しく、とても周王朝で執り行われる祭祀を見れる立場ではなかったことが挙げられている。周の都は洛陽であり、洛陽から魯(孔子の生まれたPhoto国)にもいくらかの祭祀は伝えられたといわれているが(それに触れたのは、百家争鳴の初期に儒家と激論を戦わせたといわれる墨子だったと言われていたりする)、残念ながら孔子にはそういった機会はなかった。(儒家と墨家間には凄まじい勢力争いがあったといわれている。もしかしたら本物に触れることができた墨家に対する嫉妬?)

  ちなみに左の上をざっと訳すと、上の図は縦軸が身分の高さ、横軸が礼儀の理解程度で、天子が周朝の礼儀を制定した人間で、中央の最高位にある。卿は周王朝を補佐する高官で、当然周王朝の礼儀には参加する(だから詳しい)。大夫は周王朝の高官を補佐するので、周朝の礼儀に関係する資格を持っている。諸侯はというと、これも周王朝の礼儀に参加することができるが、地方ではそうとうの権力を有した人たちで、地方の諸侯に仕える大夫たちでは周王朝の礼儀には無縁だったと書いてあるんですな。孔子の出は地方の大夫でもないから、地位的にまったく礼儀とは縁がなかったということでございます。

 下の地図は、本物の礼学は周の都の洛陽にある。行使が活動した魯の曲阜では、あまりのも礼学の中心から離れていて、孔子が本物の礼学に触れることはできなかったんじゃないかと言っているわけでございます。他にもこの本は『論語』の内容から、孔子が本当はぜんぜん礼を知らなかった証拠をいくつか取り上げておりまする。

「或問di(示すへんに帝)之説。子曰、不知也…」(ある人がdiの祭りの意義を孔子に問うた。すると孔子は答えて言った。「知らぬ。diの礼がわかるものが天下を治めたら… 逆切れか? まさかね)「子入太廟、毎事問。或曰、孰謂鄹人之子知礼乎? 入太廟、毎問事。子聞之、曰く、是礼也」(孔子は宗廟に入って、事ごとに係の者に尋ねた。ある人が「誰が孔子は礼に明かるいと言ったのだ。宗廟に入ったら何でも人に尋ねてくるではないか」と言った。孔子はこれを聞いてこう入った。「これが礼儀なのだ」… やっぱり逆切れ? やけくそ? 開き直り?)

 じゃあ彼は何を伝えたのかというと、自分で得られる文献や資料をもとに、自分が頭の中で組み立てた礼法だったんだろうね。でそれを門人に教えたと。だから本当の周王朝の礼法を少しでも知っている諸侯は、孔子など最初から相手にしなかったかも知れないし、むしろ胡散臭いペテン師程度にしか扱わなかったんじゃないかな。

  ただ時代が時代だったので、諸侯は周王朝の勢力が傾いてくるのを見て、自らが周に取って代わる権威を持とうとする。そこに我流ではあっても「礼」(らしきもの)を教えている孔子門下のつけ込む需要があったのではないかというんだね。粗末なものでも、それを使う際に「礼儀作法」が伴えば、その価値を上げていく事はできるからね。春秋の諸侯もそういうことを狙ったんだろう。

 体裁を整える上では、儒家の唱えた「礼」はとても便利だったろうからね。今でも言われることがあるじゃない。ちゃんと服を着ろ。ネクタイが曲がっとる。はきはきと返事をしろ(あ、これは礼儀だけではない?)。なんだそのお辞儀は! もっと身奇麗にしておきなさい、などなど。見てくれを整えるのは、確かにある種の清潔感を与えるし、人と付き合う上でも必要なものだからね。

 問題は格式を求めすぎて面倒しくなった場合だろうね。三跪九叩頭の礼なんて、うざい以前の問題だと思うけど、どんどん丁寧すぎる礼を追い詰めていけば、用件を伝える前に人は疲労して倒れるか、気を使いすぎて胃潰瘍になってしまうよ。でも大真面目にやっていたんだろうね。ま、サルだって毛づくろいをしたりするけどね。

 凄いのは、自分の知っている範囲の話で、原型を作ってしまった孔子という人だ。凄いというより大胆さしか感じないね。後はお弟子さんたちが頑張ったんだろうけれど、時々同じような人を現代でも見かけるから、孔子様の聖人程度もだいぶ下がってしまうんだけれどね。いるじゃない。昔の書籍や何かをすぐに引き合いにだしたり、昔はすべてが進んでいたなんて早とちりをする人が。昔の武術書を発見して、その技を再現したなんていう人もいたりするよね。その中には本物もいるんだろうけど、本物からは程遠い場合もあるんじゃないかなあ。

 文章だって読み手の能力によって、様々な読まれ方をするんじゃないかなあ。すると真意を読み取り損ねたら大変だ。間違った解釈がまかり通ってしまうことになるからね。私が関係していることなんかだったら、「ナンバ」なんてその典型だったもの。まあ物事を考え直すきっかけにはなってくれたから、全部が全部悪いことばかりじゃなかったけどね。でも間違い過ぎた(!)「ナンバ」のお陰で、こういったものを信じなくなった人がいなくなったとしたら大問題だと思うけどね。

 この本の凄いところは最後に孔子にトドメを指していることだ。孔子の門人達は、天が孔子という聖人を遣わし、そして世を正しい方向に導く運命にあるとしたらしいけれど(徳治主義)、そこのところに大きな矛盾があるとしている。孔子はついに諸侯の誰にも受け入れられることなく、さびしく死んでいったからである。天が遣わしたのなら、必ずや運命で最終的には人の上に立ち、人々を徳で導き治めなければならなかったはずなのに、誰にも見向きもされなかったのだ。つまり徳があれば天下を治めることができるとした説が正しければ、孔子には徳がなかったことになってしまうという点だ。

 ここを読んだとき、私は思わず噴き出してしまった。なるほど、なるほど。では「孔子様」と様づけで孔子を呼んでいた「論語読みの論語知らず」の男同様、孔子も「徳」や「礼」について何も知らなかったのではないかという可能性もあるんだ。これだからいろんな本を読むのは止められないよ。いろんな人がいろんな方向から私の脳みそを刺激してくれる。お陰で本の上に、噴き出した唾が飛んだりすることがあるけれど、笑えるのは確かである。あっはっは…

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2009年2月 3日 (火)

走るほどにびしょ濡れ…

 雨である。まことに鬱陶しい。お陰で朝より午後のほうが寒いくらいだ。ああ、恵みの太陽はどこ? なんてことを喚きたくなる(真夏にはまったく異なったことを言っていたような気がするけど…)。出来たら、冬には太陽の暖かい恵みが多いことを望みたい。

 けれどもアメリカの諺だったかにあるように、「銀行は晴れの日には傘を貸してくれるが、雨の日には傘を返してくれと言う」みたいな感じで、まるで銀行屋のような太陽である。お陰で寒い。

 昔から雨が降り始めると、走って帰ったものだ。たまには「月様、雨が…」「春雨じゃ、濡れて参ろう」なんて風情がある言葉を吐きたいものだが、残念ながら若い頃の私には、月形半平太のような余裕はなく、いつだって雨の中は走ったものだ。

 でも走ると歩いた時よりはびしょ濡れになってしまうんだよね。これは車の運転をしているとよくわかる。というのはフロントガラスを観察すればいいんだよね。特に今日の岡山市のように、小雨が同じペースでしとしとと降っていてくれたらわかりやすいよ。

 信号待ちしている間(停車している間)は、フロントガラスにつく雨粒の数は多くないが、走り出したとたん数が増える。スピードを上げれば上げるほど、どんどん雨粒は増えていき、停まるとまた減る。

 不思議でもなんでもない現象なんだけど、やはり車の中でぼけーっと観察していたら、よくわかるよね。雨粒は空から降ってくるわけだけど、1秒間に降ってくる雨粒が、かりに1㎥あたり100個あったとすれば、車が1秒間に1m移動すれば、その100個が車にぶつかる計算になるよね。もし1秒間に2m移動したら200個、10m移動したら1000個という具合に、スピードが上がるにつれて、ぶつかる雨粒の数は増えちゃうんだよね。

 普通雨粒にぶつかれば濡れるという現象が起こる。たくさんの雨粒にぶつかればぶつかるほど、濡れ具合はひどくなる。だからスピードを上げれば上げるほど、びしょ濡れになるって理屈なんだよね。だから雨のときは、できるだけそろそろとゆっくり歩くにしくはないなんてことになるんだけど、あまりゆっくりしていたら身体も冷えちゃうし、肺炎なんかになって高熱を出しかねないから、適当には雨宿りをしたほうがいいんだけどね。

 気象現象としての雨との付き合い方は、こんなもんかな。でも人生の中での雨は大変だよね。じっとしていても濡れてしまうから、動かないわけにはいかない。でも動けば動くほど、濡れてしまうのは、空から降ってくる雨と似たようなところもある。

 だからたいていの人は「寄らば大樹の陰」なんてことになるんだよね。でも時々雨宿りしていてあるじゃない。突然大粒に雨がぽた(じゃなくてボタっ、くらい)と降ってきてびっくりすることがあるのも、大樹の陰の雨宿りにはあるんだよね。雷雨なんかだったら、大樹の陰の方が危ないこともあるらしいし。(木が避雷針の働きをして、雷を集め、落ちた雷はまず木の肌を通るらしいんだけど、実は木よりも人体の方が電気を通しやすいので、突然雨宿りしている人間の方に乗り換えて地面に通っていくこともあるそうだよ。私なんか普通の人より電気が流れやすいみたいだから…中学生時代測定したことがある。それから私は人の何倍も雷を警戒するようになった。人よりも雷が通りやすい体のはずだからだ)

 だから夏なんか外でトレーニングしていて雷雲でもあろうものなら、さっさと安全だと思えるところへ非難する。その際には夕立の雨に濡れようが濡れまいが関係なく、とにかく全力で走る。びしょ濡れになることもよくあるが、夏は風邪もひきにくいし、いつも着替えは持っているので遠慮しない。

 昔々、うちのクラブの事務長N氏が、試合でスターターをしていた時、「用意」で号砲を鳴らそうとしたときに、競技場近くのホテルの避雷針に雷が落ちたことがある。そのとき私はちょうと自分の車のドアを開けて(上に開くやつ)傘を捜していたので、まったくビリっともこなかった。

 多くの人たちが「ビリッ」ときたと言っていたのに、人より電気が流れやすいはずの私はまったく感じなかったのである。車は私よりもはるかに電流を流しやすいので、電気は私の身体になんか見向きもしないで車の中を流れて地球に入ってしまったのだ。

 だから自分よりもはるかに電気が流れやすいもので、頭より上から地面まで覆われていれば、雷の直撃を食らっても安全なはずだ。だから突然の雷雨なんかでも私はびしょ濡れになっても、そんな場所を求めて全力でダッシュする。時々それですっ転んだりすることもあるけどね。

 昔々ほんとうに昔、長い距離を走っていたころは、雨が好きだった(特に夏)。ぼうっとした頭や身体を雨が冷やしてくれるので、意識がはっきりしたからだ。でもその頃は歩いているほうが濡れないなんて考えたこともなかった。とにかく速く走ろうという意識しかなかったからね。

 でも今は少し違うなあ。雷さえ鳴らなければ、濡れるのを嫌がってゆっくり歩くときもあるよ。いつだって、そのときの自分が一番気持ちいいスピードを探すようにしている。そうでなくても人生の雨は、こちらが傘を持っている、持っていないに関係なく降ってくれるんだから。

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2009年2月 2日 (月)

野望

 先日、望みは何かと聞かれることがあった。子供の頃には、「将来の夢は?」などと聞かれることもちょくちょくあったように記憶しているが、最近ではそんなことを聞いてくれることも滅多になくなったので、とりあえず「世界征服」と答えておいた。

 思い出してみれば私がほんの小さな子供だった頃、マンガにはよく「世界征服」をたくらむ輩が登場して、それを「正義の味方」がやっつけるというストーリーが頻繁に展開されていたように思う。これは時々スケールが大きくなって、太陽系を征服、あるいは銀河系宇宙の征服などなどというふうになって行ったのだが、夢は大きくなり始めると短期間のうちに膨らんでいく。

 SFの分野では太陽系から外に出ていくのに、数年を要しても、話題が銀河系、あるいは銀河系外に発展するには、さほど長い年月を要しない。現実的にみれば地球を征服することも大変だし、地球を出て、太陽系を征服(?)するのなんか、果たして今の人類でできるのかなと思うくらいの難事業だと思う。ましてや銀河系ともなれば、そうは簡単に一筋縄(だいたい縄なんてものに頼っている技術レベルで、銀河系に出て行けるのだろうか?)ではいかないだろう。

 先日、思わず将来の夢を「世界征服」と答えてしまったとき、後になって、「じゃあ、世界を征服してどうする?」と考えた瞬間、私の脳みそは活動を停止してしまった。実は今の私には、かりに世界を征服できても、することが思いつかなかったのである。

 とりあえず世界中から珍味と呼ばれるものをすべて集めて食べてみようか。でも胃袋には限りがあり、むやみに食べることはできない。せいぜい消化器官に多大な負担をかけて身体を壊してしまうのがオチである。身体を壊したら健康でないから、活動力が弱くなる。自分の思ったことができなくなる。すると征服したはずの世界がとても重たく感じられると思う。

 では世界中から美女を集めてハレムを作るか? これも人間である以上体力に限界はあろう。特に最近の過労気味の私には、過ぎたお荷物である。歴史をひもといてみると、大奥や後宮にあまりに多くの女性を囲い込み、励みすぎて若くして死んだ殿様や皇帝はけっこういる。そんな人生は私はいやだ。

 では贅沢な宮殿を作ってそこで暮らす? でも贅沢な宮殿を作っても、私の活動力で使いきれる広さなんて、タカが知れている。以前、外国と文通している子供の手紙を翻訳してくれと言われたことがあって、相手(オーストラリアでした)が自分の家を簡単に紹介してあった。なんとその子の家の敷地内には、ダムが一つあって、水力発電所があるんだと!

 はっきり言います。私にはすでにその広さはちょっとした毒でございます。ちょいと庭を見回ってくるなんて気になれないよね。ということは豪華な屋敷を作ったとしても、そんなにはいらないんだよね。広い庭もほしいといっても、車を使わなきゃ端から端までいけないような広さだったら、これまた重過ぎるんだよね。

 では召使にかしずかれて、自分では何もしないでいても、毎日が楽に生きていけるような生活をする? でもなあ、この身体を召使に見せたいとも思わないし、トイレの後始末は自分でやらなければ恥ずかしいし、きれいな服を着て、きれいな顔に見えるように装うことだって、今の私にはうざいことだしねえ。

 世界中から様々な宝物の類を集めて、それを鑑賞してのんびりと過ごすなんてのは悪くはないけど、何を宝と思うかは、私はあまりに気まぐれなので、その日によって変わってしまうし。季節によって、天候によって、時刻によってどんどん変わっていく風景なんかが大好きな私にとっては、それは捕まえておき続けられるような宝ではないし。

 宇宙に出て行って、地球を見てみる? それもできたら面白いかもしれないけど、人類が一番のんびりして暮らせるのは、この地上だということはよく知っているからね。だいたい宇宙空間なんかに出ても、宇宙服なんか着ていたら、鼻の頭が痒くなったらどうするんだろうね。私は気兼ねなく鼻の頭が掻ける、地上がやっぱり一番いい。

 まあ世界征服をしても、今の私にはあまりにも荷物が大きすぎて、却って不幸になりそうだから、のんびり生きていけるほうを選んでしまいますな。でも昔には世界征服なんて志した人物がたくさんいたんでしょ? 凄い人たちだよね。いくら世界征服をしたところで、不老不死にはなれないし、なれたらなれたで退屈で困るだろうけど。いったい世界を征服してみたいと思った人は、征服した後、何をどうするつもりだったんだろうか。

 私にはそれがどうもわからない。とりあえず、今の望みは?と尋ねられて、思わず「世界征服」と答えてはみたけれど、じゃあ征服してどうするんだ? と考えた瞬間、あれあれ、征服したあとは大したものはないんだねと気づいてしまった。これは歳をとったから? 若かったらもっと魅力的な、征服後があるのかなあ。

 私の野望といえばせいぜい、今の生活が少し楽になって、何の心配もなく自分のライフワークを研究できたり、食べようと思うものが食べられたり、遊びに行くときにお金の心配をしなくてよくなったり、口実を作っては親しい友人達と酒でも飲んで楽しく語らう。前途有望だけど何らかの障害があって、自分の歩きたい人生を歩けない若い人たちを援助したりする(それもあまり大勢だと手にあまるけど)くらいのものである。

 野望っても、あまり大きすぎると、野望の重さに潰されちゃうからね。現実を考えたら、等身大の野Photo望で十分ということになるみたい。情けない?

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2009年2月 1日 (日)

コメディアンは笑うか?

 春節名物の中国番組を見た。お目当ては趙本山である。本ブログでは『落葉帰根』で紹介した、現代中国が誇る大コメディアンだ。もしも彼が『落葉帰根』をやらずに、もっとシリアスな俳優さんが、この友情ゆえに友人の屍骸を背負って、友人の故郷を目指す話を演じていたら、とても暗すぎ、悲惨すぎて見られたもんじゃなかったと思うが、趙本山は見事に演じ切って、私や私の友人達を泣き笑いさせた(今もM君は泣いているかも…?)。

 今年の小品は『不差銭』というタイトルであったが、なかなか会話のテンポについていけなかった(だいたい趙本山は東北訛りだし。それでも数回見ているうちに、だいぶわかるようになった)。それにしても馬鹿受けの連続で、18年連続でトリをとるだけの力量は見せ付けたようである。

『不差銭』とは、お金はなくても何とかなるよ、という意味で使っているらしい。それこそ『落葉帰根』で、僅かな金で老劉(の死体)を故郷に連れて帰ろうとする趙本山のイメージと、ばっちりである(今回は、孫を人気番組のプロデューサーに紹介するといった筋だったが。そこでもお金がかからない方法を考案していた。登場するときの姿からして笑えたけど。ニンニクを身体に巻きつけ、葱と鳥を持っての登場なのだから)。

 この人の芸だと、いつもあの、少し気の弱そうな笑い顔が基本になってくるが、自分は馬鹿笑いをしたりしない。そういえばミスター・ビーンのローワン・アトキンソンもほとんど笑わない。もっと言えばチャップリンだって、あの悲哀に満ちた表情のままだし、バスター・キートンだって笑わない。彼らは、自分たちが笑わないで、お客を笑わせる。

 客としてみれば、自分たちを笑わせてくれるはずの人間が、最初に馬鹿笑いしていたら、笑う意欲が失われたりすることだってあるだろう。真剣に何かをして、それがとんでもない的外れだったりするから、大笑いしたりするんだよね、きっと。そういえばローワン・アトキンソンに『コメディ』という作品があるが、笑いのための条件がいくつか述べてありましたな。全部が全部、ローワン理論に納得したわけではないけれど、うまい具合にまとめてあって、感心したことがある。

 でも最近の日本の、いわゆる「お笑い」系の人たちの番組などを見ていると、なぜかしら笑えないんだよね。まずこちらが笑う前に、登場人物たちが笑っている。もちろんテレビカメラを通したら、視聴者の反応が直接見えないから、やりにくい部分はたくさんあるだろう。でも番組ののっけから、自分たちのペースで、あまり芸ができていないのではないかと思う若い人たちや、芸には素人ではないかと思えるADさんなんかを引っ張り出して笑いの種にしているのは、私は見ていてちっとも面白くないと感じている。

 誰かが失敗するのを見ておかしいのは、その人が「できて当たり前」のことで失敗するからだ。よく野球などでも、凡フライを頭にあてて失策を犯したりするシーンが放映されるが、あれはプロ中のプロがするから面白いのであって、草野球なら別に面白くもなんともない。当たり前のように見かける風景だからである。

 芸ができていない人とか、素人さんは「できなくて当たり前」なんだから、見ていてさびしさとか悲しさ、恥ずかしさしか感じない。それを見て「ギャハハハ」なんて、プロであるはずの芸人が大口を開けて笑っているのをみたりすると、ほとんどいじめて喜んでいるようにしか見えない。少なくとも私には面白くもないし、楽しくもない。だから見ないようにしているけど、たまたま何かの拍子にテレビのスウィッチを入れた瞬間そんな芸人の顔が見えただけで、いやな感じがすることすらある。

 お笑い芸人なら、こちらを笑わせてよ。自分たちが大口あけて笑うだけではなくて。普通なら笑っている人を見て気分が悪くなることは少ないけど、他人の失敗や力量不足を笑っているのを見ていると、時として気分が悪くなったりするから(だからできるだけそういった番組は見ないようにしているんだけど)。それでも聞いたところでは、昔は面白い芸をしていた頃もあるんだってね。でもその頃の記憶もだいぶ薄れてしまっているんじゃないかな。

 これはなにもお笑い芸人さんだけに限ったことではないよ。政治家のみなさんにも言いたい。ご自分が幸せになるだけじゃなくて、市民や県民、国民を幸せにしておくれよ。そのために政治家って仕事があるんでしょ? 自分が幸せになって、それを子供や孫の代まで世襲して、そんなんじゃ何のために政治家になったのかわからないよ。

 なんのために今の自分がそこにいるのか、それ自体にも納得がいかないことがやたらと多い現代だけど、せめて自分の仕事は何だったのか、考えてほしいもんだね。まあ政治家になればお金持ちになれるのかも知れないし、様々な利点があったりするんだろう。お笑い芸人になったら、美人の女性タレントと結婚できたりするんだろうけどね。本当の目的は、もう少し別のところにあったような気がするんだけどなあ。

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