昨日はさすがに勇気挫けてしまった。ティッシュの山を築きながら、やっと「でけた!!」と保存した瞬間、画面が「あらおかしい?」。登録されたかどうだか見てみよう。「あれえ、乗ってへん!!」 この瞬間、私の忍耐力は吹っ飛んだ。それで仕事のほうをあわてて一きりつけて(その内容も、今から見ると感心できない。悪いときには悪いことが重なるもので…)、帰って酒飲んで、鼻のメンテを入念にやって(午前二時頃になってしまった)寝た。
今日もやっぱり鼻は死んでいる。ちょっと今年は何なのよ、と勇気をなくしかけたが、まあ昨日打っていたものでも載せますか。もちろんそこは私のこと。二度と同じ文章は打てません(その時のタイミングで微妙に変化したり、大きく変化したりする。疲れてくると省略するのは当たり前だよね)。その日、その日がすべてです。
さて兵家思想なんて聞くと、なんと野蛮なと思う人も少なくないだろう。確かに戦に勝つことに的を絞ったものもある。しかしながら私が20年ほど前に熱中していた『孫子の兵法(中国には平仮名がないので孫子兵法と言います)』は、用兵の術のレベルが高いけれど、人をいかに動かすかなどと言った点で素晴らしく、今でも日本ではビジネス書のところでよく見かける。
ちょうど20年ほど前、私がこれに熱中していた頃、実は私もビジネス書棚のところにへばりついていたものだ。当時は中国語学の「ち」の字もわからなかったけど、今や「病入膏肓(やまいこうこうにいる)」で、あちらから本を買ってきて、じかに読みまくっている。でよく読んでみると、少なくとも『孫子兵法』は、徹頭徹尾「できるだけ戦を避けましょうね」と主張していたりするので、ついでだから紹介しておきましょう。実は私も戦は大嫌いなのだ。(時代劇は好きだから、なんと矛盾した性格だこと!)
まあ今では誰でも知っていることだけど、実は長い間『孫子兵法』は、春秋時代後期の呉の将軍だった孫武(紀元前6世紀~紀元前5世紀初)が書いたのか、戦国時代中期の斉の軍師、孫びん(紀元前4世紀)が書いたのか謎とされていた。これは史記を書いた司馬遷(紀元前2世紀の人)ですらわからなかったらしいから、本当にわからなかったのだ。
文字という、記録に適した手段を発達させていた中国で、どうしてこんなことが起こったのかというと、実は二人ともが兵書を残していて、どちらも「孫子」と呼ばれたからである。区別するためにわざわざ孫武のことを「呉孫子」、孫びんのことを「斉孫子」と呼び分けたりするが、いずれにしてもややこしい。結果として「風林火山」などで有名な13篇の『孫子の兵法』を残していたのがどちらかわからなくなっていたのである。
ところが1972年になって、山東省臨沂県銀雀山の前漢の墳墓から出土した竹簡に『孫子兵法』と『孫びん兵法』があったことから、2000年以上も謎とされていたことが一発でわかってしまった。これも文字を持つお国柄の利点だろう。わが国の邪馬台国論争(そろそろ解決に近づいているようだが)みたいに、推理につぐ推理を必要としないから、白黒がはっきりする。その結果『孫子兵法』13篇の作者は、「呉孫子」すなわち孫武ということに決定した。
さて『孫子兵法』といえば私も長い付き合いになるが、なかなかこれをわかりやすくまとめてくれたものがない。そこでうまい具合に中国で簡潔にまとめていたものがあったので、さらにそれを簡潔にして紹介してみよう。出典は『完全図解 諸子百家』である。この本は本当によくまとめてある。スグレモノである。
まず孫武は『孫子兵法』の中で何を主張しているかということを箇条書きにしてみよう。
① 戦争は国の経済状況に悪影響を与える。戦争は政治手段の一つであるが、人的資源、物的資源の損失が多いものだと知らなければならない。
② 国家にとって戦争とは、敵国から利益を奪う行為である。可能な限り大きな利益を得るには、主力軍の正面衝突を避けなければならない。そのためには詐術を用い、敵国を欺かねばならない。
③ 戦争は経済的損失を招く。損失を少なく抑えたければ、短期決戦に持ち込まねばならない。
④ 短期決戦という大原則を守る上で、城攻は避けなければならない。攻城戦になりそうなときには敵を誘い出し、野戦に持ち込んで、短期で収束させなければならない。
⑤ 自国内での防衛戦は避け、敵国に遠征する。自国内での防衛戦では、兵士たちに里心がつきやすく、戦況によっては大量逃亡を招く。これに対して敵国への遠征では、逃亡しようにも逃げる土地がなく、結果的に団結が強くなり、闘志を高めることができる。なお侵略的な国家に対しては、主力を派遣し、侵略軍が自国内に侵入するのを阻止する。
⑥ 敵は策略を用いて分断し、戦闘中は常に自軍が相対的優勢を占めるようにし、各個に撃破していく。短期決戦を重視するあまり、主力同士を直接対決させれば損害が大きくなりすぎる上、勝算も成り立ちにくい。それには奇襲や撹乱戦法を用い、敵国の主力を惑わし、勝利を得るようにする。
⑦ 経済的に大きな負担をかけることなく敵を策略にかけるには、敵の情報を集め、事前に十分に検討しなければならない。と同時に、自国の内情は厳重に漏れないようにしなければならない。そのためには各種の情報員を敵国に潜入させ、情報戦に勝利しなければならない。
⑧ 軍力を用いる際してはくれぐれも慎重でなければならない。様々な利害得失を秤にかけた上で、勝算がたった場合だけ用いてもよい。ようするにいずれの国も軽々に戦争などを起こしてはならない。
なんてことなんですな。これ以外にも「感情にまかせて戦いを起こしてはならない」とかは強調されていて、それではどんなときに戦ってもいいの? というと、今風に言えば「国益」のためには戦ってよいということになっている。この時代風に言えば「君主の国民の利益」のためというところであろうか。
この思想は大変な先見性と洗練度を持っており、戦国時代の魯、魏、楚の国で大活躍した兵家・呉起(ご・き)や、斉の孫びん、尉りょう(うつ・りょう)ら多くの著名な兵家に絶賛され、『三国志』で有名な曹操は、自分以前の『孫子兵法』研究者の研究をまとめ、さらに自分でも整理して『魏武(魏の武帝、つまり曹操のこと)註』あるいは『略解』と呼ばれるものを残しているし、宋代に編纂された『武経七書』の第一部に収録され、科挙の際に行われる武科理論の試験に出されるほどであった。これは現代でも経営や企業の戦略を考える上でも使われていたりする。
さてさて、このように『孫子兵法』では軽々しく戦ってはならないとしているが、孫武の戦を慎むという考え方はどのようなものであろうか。
① 兵者、国之大事、死生之地、存亡之道、不可不察也(『計篇』)…… あまりにも有名な『孫子兵法』の冒頭の部分だが、孫武は「戦争は国家の存亡や、軍民の生死にかかわる大事だから、起こす前に十分な検討が不可欠だ」と述べている。
② 非利不動、非得不用、非危不戦。主不可以怒而興師。将不可以愠而致戦。合于利而動、不合于利而止。怒可以復喜、愠可以悦、亡国不可以復存、死者不可以復生。故明君慎之、良将警之、此暗国全軍之道也(『火攻篇』)……孫武は春秋時代の後半、戦乱が次々に発生したのは、戦争自身によって巨大な損失が生じたことが原因であると考え、君主と将帥たちに、戦を慎むように訴えた。
③ 凡興師十万、出征千里、百生之費、公家之奉、日費千金(『用間篇』)……孫武は戦争が国家と民衆に大きな経済的負担をかけることを熟知していた。
④ 進不も求名、退不避罪、唯人是保、而利合于主(『地形篇』)……孫武は将帥が勝利の功名をむさぼるのを戒め、同時に君命に背くのを恐れる必要もないと主張した。戦う戦わないを決めるのはただ一つ、軍民と国家の利益になるかならないかだけによって決めるべきである。
これからみてもわかるように、孫武の戦を慎めという思想のもとにあるのは、国を安んじ、民を利し、軍を全うすることであった。彼は軍事指導者であったが、戦を避けることを最大の願いとしていたのである。そして「伐謀」「伐交」などの策略を用いて、「不戦而屈人之兵」「兵不頓而利可全」という目標を達成しようとしていたのである。
ただし彼は「義」のない戦には反対したが、すべての戦いを否定したわけではない。彼の「非危不戦(危うきにあらざれば戦わず)」の思想は、裏を返せば、危うきにあれば戦うということであって、もしも国家に危難が及び、民衆の安全が脅かされたりして避けがたい状況になれば、敢えて戦えとしたのである。
これはなんと、2500年前の人の思想とは思えないくらい素晴らしいものではまりませんか。だからこそ、今でも読み継がれているわけなんだけど。その次に、じゃあどうしても戦わなければならなくなったらどうする? という問題があって、またしても有名な言葉が出てくる。
孫武は「兵者gui道也」と言い放った。所詮戦いなんて騙しあいだというように受け取られているが「gui」という文字には「賢い、ずるがしこい」などと言った意味があり、ただなんでも騙せばよいよいう風に解釈するのは、少し誤解の危険がある(もちろん孫武も欺くという意味でよく使っているのだが)。特に我々日本人は「gui」と「奇」の文字にあまり良いイメージを持っていないことすらある。
では何のために敵を欺くのかというと、こちらの情勢を読ませないためであって、これまた最小限度の損失で戦に勝利するためである。これについては孫武は、「戦争は規則性のない騙しあいであって、そこには倫理や美徳を考慮する余地すらない。guiには規定に違反すること、相手の信義に背くこと、相手を騙しうちにすることなども含まれ、「正」と対極にあるものとして定義した。用兵には「正道」と「gui道」があり、正道とは平常のもの、gui道は変化したものとした。別の言い方をすれば、正道とは直接的な方法であり、gui道は間接的なものと考えてもよい。
○ gui道……● 自軍の意図を隠す ● 離間と奇襲 ● 敵の隙に乗じる
○ 正道……● 自軍の意図を明らかにする ● 正面衝突 ● 正々堂々と戦う
☆ 示形・出奇・用変……『三十六計』の兵法は基本的にgui道的な内容になっている。「変法」と「常法」は相対的なもので、常法を知ることで変法を用いることができるようになる。『孫子兵法』でも「能因敵変化而制勝者謂之神」とあるが、ここでいう「神」は一種の次元の高さを表現したものであり、「熟能生巧、巧能生妙、妙能生絶、絶能生神」の「神」と同じように考えればよい。智謀ある戦略家は情理を越えて、非常に独創的なアイデアを考え付くものである。
○ 示形……真意を隠すこと。軍事上は偽装といい、戦略偽装、戦術偽装を含んでいる。示形の原則は敵に「彼知(情報を流し、知らせる)」ことで「彼信(それを信じさせる)」させ、相手の決定に影響を与える(もちろん間違った決定をさせるわけである)。
○ 出奇……「奇」と「正」は相対的なものである。奇法は「無法」ぬ属するもので、限りなく変化することができる。「出奇」と「示形」には密接な関係があり、出奇的な行動は示形的外形から出されることが多い。出奇の目的は攻撃の突然性であって、相手の不意を衝いたり、想定外の場所を叩いたりする。
○ 用変……用変はgui道の本質と核心であり、法を臨機応変に用いることは、戦場で主導権を握ることにつながる。これが軍事技術の巧妙さを必要とするところである。
『孫子兵法』のgui道論理で強調されているのは、戦争活動中での「不確定性」である。この「不確定性」を把握する上で最も重要になるのは、自らの積極的な意志であり、我が方の変化によって敵の変化を誘い、行動の自由権を制するものである。
さて戦いで負けないためには、事前によく準備する必要がある。その第一歩は彼我の戦力分析である。これを『孫子兵法』では「廟算」と読んでいるが、現実には春秋時代にはすでに祖廟で検討したわけではなく、朝廷で行っていたらしい。勝敗を決めるものは「道」「天」「地」「将」「法」であると孫武は言っている。これについては手近な『孫子の兵法』でも読んでいただけばよい。
次に
短期決戦の重要性についてである。これは先に述べたように、戦争そのものが膨大な出費を必要とするものだから、やるにしてもできるだけ短くするということである。ここに面白い図が載せてあったので、紹介しておこう。 孫武が「長期戦を避けよ」と主張した理由を図示すると、左のようになるらしい。
持久戦(長期戦)の弊害としては次のようなものが考えられる。① 将兵の士気と戦闘力の低下 ② 戦費が増加し、国家経済が悪化する さらに孫武は二国が相争っている間に、両国の国力の衰退を狙って侵攻し、漁夫の利を得る危険性があると説いている。戦が長引くことによって国家が得る利益は何もないということである。
ふいいいい~ こ
れでもまだまだつづきます。でも今日もこれから仕事をしなくちゃならないので、とりあえずはこのあたりで。
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