ろうせん
という名前の武器が存在していたことを私が知ったのは、皇甫江先生の『中国刀剣』という本によってであった。
これは倭寇の被害が大きかった頃、倭寇退治で名を挙げた、戚継光将軍(1528年~1587年)が採用した武器だったのである。
戚継光については本ブログ、『中国の鋼鉄刀剣』シリーズ、明代のところで翻訳したので、それを参考にしていただくとして、この異形の、そしてそれなりに威力のありそうな武器が、どうして現代まで伝えられなかったなどをご紹介してみたいと思う。
1522年、倭寇によって中国の東南海沿岸部が襲われ、大変な被害が出た。これについての一端も、本ブログですでに紹介しているので、そちらを参照していただきたい。晩期の倭寇には日本人がいなかったなどなどが言われているが、戚継光将軍が倭寇の基地を攻め落とし、そこで手に入れたのは紛
れもなく日本の『陰流』の伝書であり(1561年)、それを参考にして、倭刀とともに明軍に導入した辛酉刀法は、北方遊牧民族を討伐する際には大変な効果をあげたのは事実である(これは倭刀と陰流の優越性を何よりも雄弁に物語っている)。
戚継光が倭寇討伐に当たったのは28歳ころからではないかと思われるが(ずいぶん早い出世だ)、そのとき彼は、鬼神のように恐れられ、無敵の強さを誇っていた倭寇を相手にするために軍議を開いた。そのときに一人の老兵が検索したのだそうである。
かつてこの老兵は、鉱夫たちが反乱を起こしたのを鎮圧したことがあった。そのとき鉱夫たちの中に、竹を使った武器を使う」ものがいて、手こずった経験を持っていた。それを武器として採用してはどうかと提案したのである。
戚継光はその案を採用した。ついでにその武器を研究し、改良を加えたのである。 左に載せたのは、『中国刀剣』に載せられていたものだが、原典は『練兵実紀』という明代の書に記録されたものだが、一目見たら、厄介な武器に見える。これをたくみに使われたら、いったいどう戦うの?これは現代でも、突然暴漢などに襲われたときでも、十分効果的だよ。ただ使いこなすには、かなりの技術が必要だと思えるけど。
戚継光が
加えた改良は、竹の先に金属製の槍の穂先をつけ、枝を10本程度残して、まっすぐにして先を尖らせたり、鉤形にしたりし、さらに桐油につけた後、毒を塗ったというのである。まったく始末の悪い武器にしたものだ。ちょうど実物の写真が手に入ったので、ついでのことに掲載しておこう。 ああ、怖ぁ~。
竹という植物の属性として、硬いけど大変しなやかである。これがえらい効果を表したのだ。なんと凶暴無比な倭刀が(なんと、明国の兵隊を一刀両断にするほどであったらしい)叩き切ろうとしても、しなって切断できなかったのだ。しかも弓矢の矢さえも斜めにはじいて、多少は盾の役もしたらしい。さらに小枝に挟まると、脱出もすぐにはできないで困ったという。
そこへ持ってきて「鴛鴦の陣」という新型の、11人による小型の陣を作って、一人二人の倭寇に対したのである。この作戦によって、戚継光は対倭寇戦に、ただの一度も敗戦していない。それ以後もこの武器は少しは進歩したらしい。
先端にはやりの穂先をつけ、枝を4,5本残しておいた「せんそう(せんの字は竹かんむりに先、そうの字は槍である)」というものに発展したらしいが、次第に時代の中で消えていく。
それはなぜかというと、一般的な「ろうせん」は、長さが4mくらいだった。それよりも長くすると、重くて操りにくかったらしいのである。さらにもともと不規則な形状の武器なので、操るのがとても面倒だったということだ。
実際に戚継光は32歳の時に、自らが徴募した戚家軍という部隊を作りあげ、厳しい訓練によって、大変な強い軍に育て上げていたらしいが、厳しい訓練をさせるには、将軍の側にもそれなりの力量が要求されるので、そういった武器を操れる兵を作れなかったのもあるかも知れない。
それでも面白い。中国の古代の武器で日本に伝わっていなかったり、伝わったとしてもごくわずかだったりといったものは少なくないが(私は今にいたるも、方天戟の使い方がわからない。いったいどうやって、あのスケート靴のエッジみたいな部分を使ったのだろうか? 道具があったということは、それを使い得る身体の使い方があったはずである。私は身体運用の面から、純粋に知りたい)、この「ろうせん」もその中の一つであった。
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たしかに「方天戟」の使い方はわからないですね(笑)小森さんがわからないのなら、僕らには絶対わかりません(笑)
この竹の枝の武器・・・これがあれば、誰でも護身できそうですね
投稿: みず | 2009年5月24日 (日) 21時46分
はい。ろうせんという発想は、誰にでもできそうですが、剣や太刀といった、シンプルな形のものをたくみに扱うといった発想に嵌ると、案外出てこないかも。
要するに、形式化されたものには弱点が発生するのですが、それを習っているものには、弱点が見えにくくなるんでしょうね。
でも、ろうせんなんか、家だったらどこに置きます? すぐに間に合うかというと、それが問題にありそうでは?
ちなみに戚継光は、この使いにくい武器を使いこなすために、ろうせん隊というのを作って、猛練習させたそうです。
どんな練習をさせたのか、興味はありますが。
投稿: ろうせん | 2009年5月25日 (月) 14時12分